文:内田麟太郎 絵:西村繁男 出版:くもん出版
昔々、ひらた・おでんという武士がいた。
その武士が使う秘剣はなんとおでんの剣。
そんな秘剣で、今回はどんな事件を解決するのでしょうか。
あらすじ
ひらた・おでんという武士と、そのおとものカブトムシのかぶへいは花見をしていました。
そこに聞こえてきた女の悲鳴。
ひらた・おでんとかぶへいは、悲鳴の元に向かいます。
そこには奥様のおともをしていたお女中が、ガラの悪いさむらいに絡まれていました。
そこでひらた・おでんが仲裁に入ると、さむらいから殺気が。
とっさに飛び下がりました。
さむらいが飛び上がり、それを追うかぶへい。
しかし、さむらいの両手からのびるクモの糸にかぶへいは絡めとられてしまいました。
さむらいは妖怪毒蜘蛛だったのです。
かぶへいの血を吸おうとする毒蜘蛛に、ひらた・おでんが刀を抜きました。
ひらた・おでんは毒蜘蛛を退治できるのでしょうか。
かぶへいの命運やいかに。
『おでんさむらい』の素敵なところ
- テンポのいい時代劇調の語り口
- わかりやすい勧善懲悪の物語
- 少し複雑な色恋模様
全編通して、ナレーションやセリフ回しがテンポの良い時代劇調な語り口で進みます。
これが物語の雰囲気とぴったりで、見ている人の気持ちを盛り上げてくれます。
特に毒蜘蛛が現れてからの怒涛の展開は、この語り口と相まってノンストップで進んでいき、否が応でも盛り上がります。
時代劇調なので、聞きなれない言葉や言い回しがあったりテンポも速いのですが、そこを補ってくれるのが勧善懲悪のわかりやすい物語です。
主人公が出てきた悪者を倒して一件落着という、王道の耳慣れたストーリー。
ベースがわかりやすいので、時代劇調の語り口でも迷子にならずに物語を楽しめます。
毒蜘蛛が姿を現した時などは「絶対やだ!」「怖い!」と悲鳴が上がり、毒蜘蛛を退治するところでは「すごい!」「やっつけった!」と歓声が上がります。
こんなわかりやすい物語にアクセントとして添えられているのが、時代劇には欠かせない色恋事情。
ひらた・おでんが恋心を抱く団子屋のおみっちゃん。
でも、助けたお女中に気に入られてしまいベタベタされているのを、おみっちゃんに見られてしまいます。
顔を背けるおみっちゃん。
と、少し大人の色恋事情が展開されます。
そして、それを見た子どもは女子を中心に意外とわかっていて、的確におみっちゃんの心情を言い当てていたりするからすごい。
時代劇の基本、武士に秘剣に悪者に色恋と全てしっかりわかりやすくおさえた、時代劇入門にぴったりの盛り上がる一冊です。
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