作:みやざきひろかず 出版:教育画劇
ヘビにしっぽの先を掻いてほしいと言われ、安請け合いしたネズミ。
ですが、それが世界一長い蛇だったから、さあ大変。
歩いても歩いても、しっぽの先が見えません・・・。
あらすじ
ある日、冒険好きのネズミが、大きなヘビに出会いました。
ヘビがネズミを食べようとするので、ネズミは役に立つから食べないように説得します。
すると、ヘビはしっぽの先がかゆいから、掻いてくれたら食べないと約束してくれました。
ネズミは、ほっと一安心。
簡単なことでよかったと思い、ヘビの体の上を走り、しっぽの先へ出発しました。
ところが、走っても走っても、しっぽの先は見えません。
あたりはすっかり暗くなり、ネズミは木のほとりで一晩休むことにしました。
翌朝、しっぽの先に向け出発します。
けれど、体の一部がワニのいる池に浸かっていたり、山の間をくねっていたりと、道のりは大変です。
ネズミは走りに走り、そしてついに・・・。
『せかいいちながいへび』の素敵なところ
- どんどん伸びる1枚の板でできた本
- 全然しっぽの先が見えないなが~い旅
- めくってもめくっても出てこないしっぽの先
どんどん伸びる1枚の板でできた本
この絵本のなによりおもしろいところは、その絵本の構造にあります。
なんとこの絵本、1枚の長い板を折りたたんで作られているのです。
なので、ページをめくるごとに、本がなが~く伸びていく形になっています。
これが、この絵本の題材である世界一長いヘビと相性抜群。
普通の本なら、最後に見開き1ページで縮尺を用いて長いことを伝えるところ、この絵本では、同じ大きさのまま、ものすごい長いヘビを見ることができます。
この迫力は、なにものにも代えがたく、インパクト抜群。
持つのが大変なほど長い絵本と、そこに描かれたこれまた長いヘビに大盛り上がり。
「めっちゃ長い!」
「こんなに長かったんだ!」
「本当にヘビみたい!」
と、目の前で本当のヘビを見ているようでした。
この、ページをめくるごとに、絵本ごと長くなっていく作りと演出が、この絵本の特徴的で盛り上がらないわけがないところです。
全然しっぽの先が見えないなが~い旅
そんな、おもしろい作りで描かれるのは、ヘビの体を歩いているとは思えないほどの過酷な旅でした。
ネズミも最初は簡単だと思っていたしっぽ掻きの仕事。
ですが、このヘビが世界一長いヘビだったから大変です。
ただ距離が長いだけじゃなく、
サボテンの間を抜け、
滝を下り、
ワニの池を越え、
山までも越える・・・
という、ヘビの体とは思えないスケール感の冒険が待っていたのです。
これにはさすがに冒険好きののネズミといえど、一苦労。
その慌てたり、疲れ果てた姿から、ヘビの大きさや長さが痛いほどに伝わってくることでしょう。
この、ヘビのしっぽを掻くだけとは思えないほどの、過酷でなが~い旅も、この絵本のとてもおもしろいところです。
めくってもめくっても出てこないしっぽの先
こうして、おもしろい絵本の作りと、物語が融合したこの絵本。
しっぽの先にたどり着く過程にも、この作りのおもしろさが思いきり活きています。
しっぽの先を目指すネズミ。
ですが、ページをめくってもしっぽの先は見えません。
先は見えないのに、どんどん長くなっていくヘビの体。
この反比例がとてもおもしろいのです。
しっぽの先が見えず、
「まだつかないの!?」
「全然見えない!」
と、驚く子どもたち。
それと同時に、
「ヘビさん長い!」
「こんなに走ってきたのに、まだ見えないよ!」
と、それまでの道のりも可視化されているので、「こんなに進んだのに、まだ見えない」という実感がともないます。
これはまさにネズミが思っていることと一緒。
この、ネズミとともに長い道のりを歩んでいる感覚を味わえる臨場感もまた、この絵本の作りだからこそ感じられるものでしょう。
特別な絵本の作りによって、ヘビの長さだけじゃなく、なかなかしっぽの先が見えない、長い道のりも
リアルに感じられるところも、この絵本ならではなおもしろさとなっています。
二言まとめ
ページをめくるたび、ヘビの体と一緒に絵本も伸びていくという、世界一長いヘビにぴったりな絵本の作りがおもしろい。
そのヘビと絵本のあまりの長さに、驚き盛り上がること確実な、とてもなが~い絵本です。
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