【絵本】さるのせんせいとへびのかんごふさん(3歳~)

絵本

文:穂高順也 絵:荒井良二 出版:ビリケン出版

長い体を活かし、仕事をするヘビの看護婦さん。

薬の調合から、メジャーの代わり、さらには胃カメラの仕事まで・・・。

その体を張りすぎた仕事ぶりは必見です。

あらすじ

動物村に新しい病院ができました。

そこで働くのは、サルの先生と、ヘビの看護婦さんです。

病院の朝の仕事は、薬の調合。

サルの先生は、ヘビの看護婦さんへ草や根っこをたくさん食べさせ、水を飲ませて、よく振ります。

そして、ヘビの看護婦さんの口から、容器へ移せば薬の完成です。

食べさせる、草や根っこの種類に応じて、色々な薬が出来上がりました。

準備ができたら、いよいよ診察の時間です。

最初にやってきたのはキツネ。

寒気がして震えています。

診断されたのは風邪。

サルの先生は、風邪薬を出してくれました。

ところが、その薬をヘビの看護婦さんの口の中へ。

そして、突然、ヘビの看護婦さんがキツネの腕に嚙みついたではありませんか。

なんと、それは注射。

ヘビの看護婦さんは口に含んだ薬を、噛みつくことで注射していたのです。

キツネはすっかり元気になって帰っていきました。

次の患者はクマの双子の坊やたち。

健康診断にやってきたのでした。

サルの先生が聴診器を当てると、元気なことがわかります。

次に身体測定をすることになり、ここからはヘビの看護婦さんの出番。

看護婦さんの服にはメモリがついており、身長を測れるのです。

さらに、それだけではなく、柔軟な体を活かし、頭囲や胸囲も測れます。

おまけに電車ごっこまで。

次にやってきたのは、ブタでした。

夕べからお腹がチクチク痛むのだそうです。

サルの先生は、診察台に寝かせると、口を開けるよう言い、ヘビの看護婦さんを構えます。

そして、口からヘビの看護婦さんを飲み込ませ、お腹の中の状況を調べ始めました。

すると、ヘビの看護婦さんがおなかに刺さっている釘を発見。

そのまま口で引き抜いて、帰ってきたのでもう安心。

お腹の痛みはよくなりました。

最後にやってきたのはゾウでした。

鼻づまりで苦しくて、眠れないというのです。

それを聞いたサルの先生は、鼻を掃除することに。

ヘビの看護婦さんは、背筋を伸ばし準備をします。

そして・・・

一体どんな治療をするのでしょうか・・・?

『さるのせんせいとへびのかんごふさん』の素敵なところ

  • 全力で体を張るヘビの看護婦さん
  • ニコニコしながらとんでもないことを言うサルの先生
  • ドキドキ感を最大限盛り上げてくれるページめくり

全力で体を張るヘビの看護婦さん

この絵本のなによりおもしろいところは、ヘビの看護婦さんの仕事ぶりでしょう。

そのヘビの体を活かし、どんな仕事もこなすヘビの看護婦さん。

体内で薬の調合もするし、

噛みついて注射もするし、

メジャーにもなるし、

胃カメラにまでなってしまいます。

ただ、そのどれもに共通するのが、ものすごい体を張っていること。

なんなら、道具1つ使わずに、すべて自分の体で解決していくからすごい。

しかも、それを当たり前のように涼し顔でこなす姿は、まさにプロフェッショナル。

患者さんの口に飛び込むのも、色々な草や根っこを飲み込むのにも躊躇なし。

子どもたちは、もちろん驚きますが、ヘビの看護婦さんは表情一つ変えません。

このなんでもできるし、なんでもやってしまう、ヘビの看護婦さんの体の張りっぷりが、この絵本のとてもおもしろく驚かされるところです。

ニコニコしながらとんでもないことを言うサルの先生

そんなヘビの看護婦さんに、指示を与えるのがサルの先生。

この先生、とても柔和で、いつもニコニコしています。

でも、よく聞くと、割ととんでもない指示を出しているからちょっと怖い。

ヘビを飲み込ませるときは「体の力を抜いて、ゆっくりゆっくり飲み込んでくださいね」と笑顔で言いながら、ヘビを構えて近づいてきます。

ヘビの看護婦さんが噛みついて注射をしたとき、なにが起こったかわからず痛さのあまり「わあわあ」騒いでいるキツネに、「注射の後はしばらくもんでおいてね」と普通の注射をしたかの如く、さらりと言ってのけたりもします。

この、患者さんのドキドキ感と、サルの先生の温度差がすごい。

もちろん、びっくりしながら見ている子どもとの温度差も・・・。

この、とんでもないことをさらりと笑顔でやってのける、サルの先生の治療風景も、この絵本ならではなとてもおもしろいところとなっています。

ぜひ、阿吽の呼吸で驚きの治療をする、サルの先生とヘビの看護婦さんのコンビネーションを見てみてください。

ドキドキ感を最大限盛り上げてくれるページめくり

さて、そんな、患者さんも見ている子どもも、ドキドキさせられる治療法。

そのドキドキ感を、ページめくりでさらに盛り上げてくれるのも、この絵本のとても楽しいところとなっています。

これまでお伝えしたように、この絵本の治療法はどれも「そんなまさか・・・」と思うものばかり。

そのドキドキ感を、ページめくりで見事に最高潮へ持ってきてくれるのです。

例えば、ヘビの看護婦さんが風邪薬を飲みだす場面。

みんな「え!?看護婦さんが飲むの!?」と唖然となります。

そこでページめくると、キツネの腕にガブリ!

「えー!?噛みついた!?」と、展開の驚きがページめくりの溜めで、大きく爆発します。

ブタにヘビを飲み込ませる場面は、さらにドキドキ感がある展開。

口を大きく開けさせ、ヘビを持って「飲み込んでくださいね」と迫るサルの先生。

これには子どもたちも、「え!?まさかヘビを飲み込むの・・・?」と、予想はしつつ信じられないといった様子。

そして、ページをめくると、本当にヘビを飲み込んでいるからさあ大変。

「ほんとに飲み込んじゃった!?」と、大騒ぎです。

こんな風に、この絵本ではどの場面でも、一番盛り上がるポイントで、しっかりページめくりを挟み盛りあげてくれるのです。

これが、見ているほうも読んでいるほうも抜群に楽しい。

子どもたちの反応をうかがいながら、ページをめくった時の子どもたちの「えー!?」という素敵な反応。

まさに、場が一体となった感覚を味わえます。

この、とても読みやすく溜めを作りやすいページめくりで、盛り上げどころを最大限盛り上げてくれる、絵本の作りもこの絵本のとても素敵な、見ていても読んでいても楽しいところです。

二言まとめ

サルの先生とヘビの看護婦さんによる、体を張った治療の数々に驚きと笑いが止まらない。

当たり前のようにとんでもない治療をする病院と、それを受ける患者さんと見ている子どもの温度差がたまらなくおもしろい絵本です。

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