作:中垣ゆたか 出版:あかね書房
保育園に忍者がいる!?
でも、みんなまったく気付いていません。
ぼくの気のせいなのかなぁ・・・。
あらすじ
男の子ミチルくんは、通っているあおぞら園への登園中に、忍者を見かけた。
その忍者は、あおぞら園のほうへ走っていく。
でも、走るのが速すぎて、ほかの人は誰も忍者に気付いていない様子だった。
あおぞら園での最初の時間は工作。
テーブルの下で、普通に折り紙をしているけどだれも気付いていない。
次は歌の時間。
音楽家の肖像画に混ざって、誰よりも大きな声で歌っているけど、みんな気付かず歌ってる。
次はプール。
やっぱり忍者も着替えている。
そこでミチルくんは友だちに聞いてみることにした。
でも、友だちはきょとんとして、忍者には気付いていないみたいだった。
プールの中にも忍者がいたが、ミチルくんも見失ってしまった。
けれど、お昼ご飯の時間には、天井で寝ている忍者を見つけた。
どうやらプールで疲れたみたい。
休み時間になり、忍者がどこに行くのかついていってみることに。
運動場まできたのだが、そこからは見失ってしまった。
でも、よく見ると運動場に隠れている。
お昼寝の時間になり、みんなが寝静まると、忍者は部屋で修業を始めた。
さらには、お皿を手裏剣代わりにテーブルへ投げおやつの準備まで。
おやつの時間になり、1人でおやつをたくさん食べる忍者。
やっぱり誰も気付いていない。
結局誰も気付かないまま、帰る時間になってしまった。
そこで、ミチルくんが意を決して、忍者に直接聞いてみると・・・。
『にんじゃくんがいる!』の素敵なところ
- 細かく描きこまれた絵の中でする忍者探し
- 自分たちしか気づいてないおもしろさ
- 忍者があおぞら園に来たわけは・・・
細かく描きこまれた絵の中でする忍者探し
この絵本のもっともおもしろいところは、たくさんの人がいる中でのにんじゃくん探しでしょう。
場所があおぞら園ということもあり、そこでいろんな人がいろんなことをしているのも、見ていて楽しいポイントです。
ページごとに、活動が変わっていくあおぞら園。
工作をしていたり、歌を歌っていたり、プールの着替えをしていたり・・・。
その変化が、子どもたちをまったく飽きさせません。
さらに、それぞれのページが本当に賑やか。
折り紙を山のように持っている子。
明らかに人間じゃない謎の肖像画。
すっぽんぽんで水着を着せようとする先生から逃げる子。
などなど、そこで起こっていることを見ているだけで、『ウォーリーを探せ』を見ている時のような楽しさが味わえます。
そんな見ているだけで楽しいページの中に、にんじゃくん探しまで入っているのだからおもしろくないはずありません。
子どもたちも、にんじゃくんを探しながら、
「あ!あの子はだかんぼうだ!」
「水の中にオバケがいるよ!」
「あのぬいぐるみ、片づけ忘れてる!」
と、ほかの発見に目が行きます。
この、描きこまれた楽しいあおぞら園の中で、にんじゃくんを探すという、にんじゃくんだけじゃなく色々なものも発見できるところが、この絵本のとても楽しいところです。
ミチルくんもにんじゃくんを見失ったあたりから、本気で見つけるのが難しくなるので、にんじゃくんの本気の隠れっぷりもぜひお楽しみください。
自分たちしか気づいてないおもしろさ
そんな、あおぞら園のいたるところにいるにんじゃくん。
ですが、それに気づいているのはなんと、ミチルくんと見ている人だけです。
このシチュエーションも、この絵本のおもしろいところとなっています。
みんな気付かないことに不安そうなミチルくんは、「ねーねー、忍者いるよね?」と、見ている子にたびたび問いかけてきます。
すると、子どもたちも、
「いるいる!」
「ほらあそこにいるじゃん!」
と、その期待に応えます。
でも、絵本の中では誰も気付いていず、友だちに聞いてみてもきょとんとされてしまいます。
こうなると、
「なんで気付かないの!?」
「いるよね!」
と、さらにミチルくんへ感情移入。
ミチルくんが「にんじゃいるよね?」と聞き、子どもたちが「いるよ!あそこあそこ!」と返す、まるで同志のような結束力が生まれるからおもしろい。
お互いに、にんじゃくんがいることを確認しながら物語が進んでいくのです。
この、ミチルくんと絵本を見ている子だけが、忍者の存在に気付いているという、なんだかそわそわするシチュエーションも、この絵本に一体感を生み出している、とてもおもしろいところです。
忍者があおぞら園に来たわけは・・・
さて、そんなにんじゃくんですが、結局帰る時間まで、ミチルくん以外には存在を知られず終わりました。
すべてが謎に包まれたにんじゃくん。
意を決して話しかけましたが、やはりその正体はわからずじまい。
けれど、安心してください。
一番最後のページで、その秘密がわかります。
幻ではなく本当に忍者はいたのか?
なぜ、あおぞら園に来ていたのか?
どうして朝同じ道を通ったのか?
そんな疑問が、この最後のページですべて解き明かされるのです。
ここまで「本当に忍者がいるのか?」という、そわそわした状態のまま進んできたこの絵本。
最後は、とてもすっきりした気持ちで終われます。
この、しっかりと最後にオチをつけて終わってくれるのも、この絵本のとても後味のよいところです。
二言まとめ
細かく描きこまれ、色々なことが起こっているページの中、にんじゃくんを探し出すのがおもしろい。
自分たちだけが、にんじゃくんに気付いているという、不思議な一体感が生まれる、忍者探し絵本です。
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