【絵本】きをつけておおかみだ!(1歳~)

絵本

文:セドリック・ラマディエ 絵:ヴァンサン・ブルジョ 訳:谷川俊太郎 出版:ポプラ社 

オオカミが森へ向かって、思いきりふーっ!

すると、あんなものからこんなのもまで吹っ飛びます。

その吹っ飛びっぷりと、意外過ぎる結末に、驚きっぱなしの絵本です。

あらすじ

オオカミが、森を思いきり「ふーっ!」と吹きました。

すると、葉っぱが吹っ飛び、木の幹だけに。

またオオカミが「ふーっ!」とすると・・・

木の幹もふっとびました。

さらに「ふーっ!」とすると・・・

森の中に建っていた家の屋根がふっとびました。

さらにさらに「ふーっ!」とすると・・・

家の壁もふっとびました。

もう一度「ふーっ!」とすると、

家の中にあったテントがふっとびました。

またまた「ふーっ!」っとすると・・・

3匹の子ブタがかぶっていた布団もふっとびました。

隠れるものが何もなくなった子ブタ。

でも、その手にはあるものを持っています。

そこでオオカミが「ふーっ!」と吹くと・・・

『きをつけておおかみだ!』の素敵なところ

  • 次々と豪快に吹き飛ばしていくオオカミ
  • 吹き飛ばされるものだけが変わっていくおもしろい作り
  • みんなだまされる巧みなミスリード

次々と豪快に吹き飛ばしていくオオカミ

この絵本のこの絵本のなによりおもしろいところは、オオカミが「ふーっ!」と吹くたび、色々なものが吹き飛ばされていくところでしょう。

そして、そのスケールがすごい。

森中の葉っぱが吹き飛び、木が丸裸になり・・・

残った木の幹も、根こそぎ吹き飛ばされ・・・

屋根も壁も台風でも来たのかというくらいの勢いでふっとんでいくのです。

これを見て、オオカミの息の力に驚かないわけがありません。

子どもたちとしては、3匹の子ブタの感覚で見ているので、木やわらが吹き飛ぶ程度の感覚なのに、森ごと吹き飛ばしてしまうのですから。

家だって、どうみてもレンガレベルというか、現代レベルの家なのに、紙でできているのかと思うくらいのふっとびっぷり。

「やば!?」

「ふっとびすぎー!」

「ブタさんが食べられちゃうー!」

と、オオカミが「ふーっ!」とやるたび、驚きと心配の声が上がります。

この、知っているオオカミよりも圧倒的に肺活量の違う、吹き飛ばしっぷりが、この絵本のとてもおもしろく盛り上がるところです。

吹き飛ばされるものだけが変わっていくおもしろい作り

そんな、オオカミが次々と吹き飛ばしていくこの絵本ですが、実はとても変わった作りになっているのもおもしろいところとなっています。

この絵本、表紙をめくると、左にオオカミが「ふーっ!」と吹く絵。

右のページに吹き飛ばされるもの。

となっているのですが、オオカミのページはずっと開きっぱなしで、ふっとぶ方だけ、ページがめくられていきます。

要するに、この絵本は普通の見開き(吹き飛ばされるもの)+表紙の裏(オオカミ)という、3ページ同時に開いた状態で、1場面となっているのです。

そのため、オオカミにスペースを取られず、豪快に森や家を吹き飛ばせるのです。

さらにさらに、オオカミが吹く姿を、ページめくりから分離することによって、「ふーっ!」と吹いた後に、吹き飛ばされる方のページめくりができるようになっているのも、この作りの素敵なところ。

自由に溜めが作れ、ワクワクドキドキ感をおおいに盛り上げることができるのです。

「次はなにがふっとぶのかな?」

「ブタさん大丈夫かな?」

と、この溜めの間中、次のページの展開が気になります。

そして、ページをめくった瞬間、自動的にオオカミの「ふーっ!」と吹き飛ばされるものが、躍動感たっぷりにつながり盛り上がる。

この、特殊な作りだからこそ味わえる、オオカミが次々吹き飛ばしていく臨場感と躍動感、そして読んでいる時の気持ちよさも、この絵本のとても素敵で特別なところです。

みんなだまされる巧みなミスリード

さて、そんなオオカミが次々と吹き飛ばしてく、この絵本には予想外すぎる結末が待っていました。

実は、この絵本、オオカミが「ふーっ!」とする経緯や目的が描かれないまま始まっているのです。

表紙をめくるといきなり「おおかみがふうーっ」という一文から始まります。

ここに「3匹の子ブタ」という登場人物。

「きをつけておおかみだ」というタイトル。

「おおかみがふうーっ」という動作。

この3つが重なり、3匹の子ブタを食べようとしているという先入観が生まれるのです。

この子どもたちの常識を活かしたミスリードが実に見事。

3歳以上の子であれば、ほぼほぼ乗せられてしまいます。

そして、次々吹き飛ばし、段々と子ブタが丸裸になっていく姿にハラハラドキドキしてしまうことでしょう。

そんな思い込みがあるからこそ、度肝を抜かれる最後の場面。

みんな勘違いしていたことに気付きます。

しかも、とってもハートフル。

この巧みすぎるミスリードによって、オオカミを怖いと思えば思うほど、その反動で驚かされる意外過ぎるオオカミの目的も、この絵本のとても素敵なところです。

きっと、自分たちや子どもたちがオオカミに対して、どれだけ先入観を持っているかわかることでしょう。

二言まとめ

オオカミが豪快に色々なものを吹っ飛ばしていくのが、爽快でおもしろい。

でも、吹っ飛ばした後の予想外すぎる結末に驚くこと間違いなしな、本の作りも物語の作りも巧みすぎるオオカミ絵本です。

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