【絵本】ゆかいなさんぽ(3歳~)

絵本

作・絵:土方久功 出版:福音館書店

ブタが散歩していると、次々動物が加わります。

でも、その鳴き声がちょっと愉快でおもしろい。

仲間と一緒に増えていく鳴き声がなんとも楽しい絵本です。

あらすじ

ある日、子ブタが散歩に出かけました。

その子ブタは「ぶたぶた ぶたぶた」と鳴きながら歩いていきました。

すると、1羽のアヒルに出会いました。

アヒルが子ブタに、どこへ行くのか聞くと、山の方へ行くとのこと。

そこでアヒルは子ブタについていくことにしました。

アヒルの鳴き声は「がおがお」。

子ブタとアヒルは「ぶたぶた がおがお」と歩いていきました。

2匹が歩いていると、トラに会いました。

トラも子ブタたちにどこへ行くのか聞いてみると、山へ行くというので一緒についていくことに。

トラは「うぉお」と鳴きます。

3匹は「ぶたぶた がおがお うぉお」と歩いていきました。

すると今度はウサギがやってきました。

ウサギもついていくことになりましたが、ウサギは鳴きません。

代わりにぴょんと跳ねるのです。

なので4匹は「ぶたぶた がおがお うぉお ぴょん」と、山の方へ歩いていきました。

一方そのころ山の中では、シジュウカラが「つぴつぴ ちぺちぺ」と歌っていました。

そこへスズメがやってきて。村の方へ降りてみようということになりました。

スズメは「ちゅんちゅん」鳴くので、「つぴつぴ ちゅんちゅん ちぺちぺ ちゅんちゅん」と歩いていきます。

しばらく行くと、オナガに会いました。

そして、オナガも一緒に行くことに。

オナガは「じぇえ」と鳴くので、4匹は「つぴつぴ ちゅんちゅん じぇえ ちぺちぺ ちゅんちゅん じぇえ」と鳴きながら歩いていきました。

こうして山を降りて行った3匹は、向こうからくるさっきの子ブタたちに会いました。

でも、鳥たちが自分たちの方が歌がうまいと言い始めたから大変です。

それを聞いて対抗する子ブタたち。

いったいどうなってしまうのでしょうか?

『ゆかいなさんぽ』の素敵なところ

  • ちょっぴり奇妙な動物たちがおもしろい
  • 1匹ずつ増えていく仲間と鳴き声
  • ぐちゃぐちゃのがちゃがちゃでおもしろい最後の場面

ちょっぴり奇妙な動物たちがおもしろい

この絵本を見て、まず感じるのが動物たちの絶妙な奇妙さでしょう。

見た目はいたって普通(トラ以外)なのに、鳴き声が微妙に違います。

みんなブタは「ブーブー」だと思っていたら、なんと「ぶたぶた」。

「えー!?」

「そんな鳴き方しないよ!」

「変な鳴き方~」

と子どもたちも大笑いです。

そもそも、その紹介の仕方からしてブラックなユーモアが込められており、

「その子ブタはね、丸々太っていて、そして、少し滑稽だったので、ぶたぶた ぶたぶたって、歩いていきました」

と、若干とげのあるものに。

この冒頭だけで、「この絵本の動物はなんか違うぞ」と思わされることでしょう。

案の定、次に出てくるアヒルも「がお がお」。

「ガーガー」や「くわっくわっ」ではないのです。

さらに変わっているのがトラ。

鳴き声よりも、見た目の違和感がすごい。

その顔は、トラというよりおじさんで、たらこ唇に、けつあごといったいで立ち。

でも、ちゃんとシマシマです。

これには子どもたちも、

「このトラなんか変・・・」

「変な顔w」

「でも、優しいね~」

と、なんとも言えない反応を示していました。

さらにさらに、ここまで出てきた動物とはうって変わって、ウサギは妙に現実的。

ウサギは鳴かないので、ぴょんと跳ねるだけなのです。

この、本物と離れすぎないけれど、絶妙に奇妙さを感じさせる愉快な動物たちが、この絵本のとてもユニークでおもしろいところです。

きっと、一度読んだら癖になってしまうことでしょう。

1匹ずつ増えていく仲間と鳴き声

こうして、歩いていくたび、仲間が増えていくのですが、それと一緒に鳴き声も変化していきます。

最初は「ぶたぶた」だけだったのが、

「ぶたぶた がおがお うぉお ぴょんぴょん」と、どんどん長くなっていくのです。

これがまた、『ブレーメンのおんがくたい』みたいでおもしろい。

動物が増えていく繰り返しの流れと、鳴き声が増えていく変化が楽しいリズム感を生み出してくれます。

この繰り返しのわかりやすさと、増えていく鳴き声のおもしろさも、この絵本のとても素敵なところです。

子どもたちも、一緒に言いたくなること間違いなしなので、ぜひ動物たちとの愉快な散歩を楽しんでみてください。

ぐちゃぐちゃのがちゃがちゃでおもしろい最後の場面

さて、こうして規則正しく増えていった仲間と鳴き声。

ですが、最後の場面で状況が大きく変わります。

ケンカをしたことで、動物たちと鳥たち、両方の歌声が混ざり合ってしまうのです。

その様子はまさにカオス。

そのカオスを120%表現されているのも、この絵本のとてもおもしろいところとなっています。

少しずつ混ざり合う2つのグループの歌声。

それに合わせ、美しかい景観を描いていた背景が、がちゃがちゃとした雰囲気に変わっていきます。

そして、最終的にはサイケデリックを思わせる、騒々しくもものすごい不安感のあるものに。

混ざって濁った歌声と合わさって、ものすごいカオスが目の前に広がるのです。

子どもたちもこの騒々しさには、

「うるさーい!」

「ぐちゃぐちゃになっちゃった!」

「変なの~www」

と、そのカオスさや鳴き声の混ざり具合に大笑いしていました。

この、目と耳の両方で、最後の場面のカオスっぷりが120%伝わってくるのも、この絵本のとてもおもしろいところです。

これまでの規則正しい繰り返しとの対比で、ものすごくごちゃごちゃがちゃがちゃして見えることでしょう。

でも、このがちゃがちゃ感があるからこそ、結末の解放感とおもしろさを強く感じられるのだと思います。

ぜひ、このカオスから生み出されるドリフのコントのような結末を、確かめてみてください。

二言まとめ

絶妙に奇妙な動物たちが増えていくごとに、鳴き声も増えていく繰り返しがおもしろい。

そこからの鳴き声が全部混ざり合うカオス過ぎる展開に、大笑い間違いなしの愉快な絵本です。

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