【絵本】きぃちゃん(4歳~)

絵本

作:ながやまただし 出版:BL出版

生まれたばかりの木の赤ちゃん。

周囲に与えられ、与えながらすくすく大きくなっていきます。

でも、きぃちゃんのしていることは、たった一つだけ。

それは・・・。

あらすじ

小さな原っぱに、木の赤ちゃんが生まれました。

名前はきぃちゃん。

きいちゃんは、太陽の光を浴び、風に包まれながらすくすく大きくなっていきました。

でも、そんなある日、きぃちゃんは葉っぱを毛虫に食べられてしまいました。

きぃちゃんは、毛虫がお腹いっぱいになりどこかへ行くのを、じっと待ちます。

今度は、雨の降らない日が続きました。

どんどんしおれていくきぃちゃん。

けれど、「もうだめだ」と思ったその時、ついに雨が降りました。

きぃちゃんは元気になりました。

そこへ、元気になった葉を食べに来たのがカタツムリ。

きぃちゃんはやっぱり、カタツムリが去っていくのをじっと待ちます。

そんなことが何回も続くうち、きぃちゃんは少しだけ大人の木になり蕾をつけ、花が咲くようになりました。

花が咲くと、ミツバチやチョウチョが花の蜜を吸いにやってきます。

やがて、花がすべて散ると、地面に落ちた花をきぃちゃんは長い間見つめていました。

それからしばらくして、きぃちゃんに赤い実が実りました。

すると、鳥たちがやってきて、木の実をついばんでいきます。

きぃちゃんは、木の実がなくなっていくのを、じっと見ていました。

花も実もすっかりなくなる頃には、冬がすぐそこまで来ています。

毎日北風にさらされて、きぃちゃんは葉っぱまでも失ってしまいました。

それでも、きぃちゃんはじっと立っています。

そして、また風が暖かくなってくると・・・。

『きぃちゃん』の素敵なところ

  • 自然の中でいろいろなものを与え、与えられ成長していくきぃちゃんの姿
  • 感情豊かに描かれるきぃちゃんの心
  • 木がしているたった一つのこと

自然の中でいろいろなものを与え、与えられ成長していくきぃちゃんの姿

この絵本のとても素敵なところは、きぃちゃんの姿を通して、自然の中で成長していく木の様子を見ることができるところでしょう。

きぃちゃんは、お日さまの光を浴び、温かな風に包まれすくすくと大きくなっていきます。

まさに自然の恵みを全身で浴びながら成長していくのです。

けれど、自然の中で生きるとき、どんなに小さな木でも、与えてもらうだけではありません。

自分も葉っぱを食べられながら、与える役割も担うのです。

子どもたちもはじめは、

「葉っぱ食べられちゃった・・・」

「きぃちゃんかわいそう・・・」

と、きぃちゃんだけの目線で、悲しそうな顔をしていました。

でも、この絵本では何度もそんなことがあり、花を咲かせ、実をつける中、たびたび他の生き物に与えながら大きくなる姿を丁寧に描くことで、他の生き物たちの生命をつなぎ、成長させていることを自然と実感させてくれるのです。

すると、子どもたちの感情にも変化が見られ、

「みんなのご飯をあげてるんだね」

「きぃちゃんえらいね!」

「でも、悲しくないのかな?」

など、きぃちゃんの気持ちに寄り添いつつも、木の担う自然の中での役割へ目が向いていきます。

この、きぃちゃんというかわいらしい木の成長を通して、与えられるだけじゃなく、たくさんのものを与えながら大きくなっていく一本の木のすごさや、その役割の大切さを感じさせてくれるのが、この絵本のとても素敵なところです。

感情豊かに描かれるきぃちゃんの心

そんな、木本来のすごさを実感させてくれるきぃちゃんですが、それとは裏腹に、その内面はとても感情豊かに描かれます。

太陽の光を浴びすくすく大きくなるときは「しあわせいっぱい」。

雨がふらず枯れそうなときは「もうだめだ~」。

雨が降ると「やった~」。

こんな風に、その気持がストレートに伝わってくるのです。

だからこそ、みんなきぃちゃんに感情移入し、その成長を真剣に見守るのでしょう。

体が大きくなれば、

「きぃちゃん大きくなったね!」

花が咲いたり、実りがあれば、

「きれい!」

「たくさんできた!」

と、大喜び。

反対に、葉っぱが食べられれば、

「食べられちゃう・・・」

「穴が空いちゃうよ・・・」

と、悲しそう。

きぃちゃんが感情豊かに描かれ、木が感じる嬉しいことや悲しいことがよくわかるからこそ、きぃちゃんに感情移入できるのでしょう。

この、本当の子どものように描き出される、きぃちゃんの生き生きとした心情も、この絵本のとても素敵なところです。

見れば、周囲の木の見え方が変わってくるかもしれません。

それも、この絵本の魅力の一つですね。

木がしているたった一つのこと

さて、そんな感情豊かに描かれるきぃちゃんですが、実はやっていることはたった一つ。

ただただそこにじっと立っているだけです。

葉が食べられても、追い払うことなどできず、毛虫が去るのをただ待つだけ。

干からびそうなときも、ただただ雨が降るのを願い待ちます。

花が散っても、実が食べられても、葉が落ちても、きぃちゃんのすることは変わりません。

まさに、木のそのものといったような、とてもリアルな描かれ方をしているのです。

この、感情の豊かさと、ただじっと立っているだけというギャップもまた、この絵本の素敵なところ。

そのギャップがあるからこそ、きぃちゃんをキャラクターではなく、本当の木として見ることができるのでしょう。

きっと、感情豊かに描かれ、なおかつ動きまで加われば、それは自然の中に生きるリアルな木ではなく、絵本の中の創作上のキャラクターになってしまいます。

けれど、この絵本では、じっとそこに立っているだけ。

これが、きぃちゃんを現実の木へと繋がてくれているのだと思います。

だからこそ、きぃちゃんの気持ちを身近にある木にも投影できるし、身近にある木に花が咲いたり実が実ったときにきぃちゃんの成長と地続きに見ることができるのです。

この、じっと立っているだけという、一貫してリアルな木であることを感じさせてくれる、きぃちゃんの振る舞いも、絵本の世界を現実の世界と繋げてくれる、この絵本のとても素敵なところです。

二言まとめ

感情豊かだけれどとっても木らしいきぃちゃんの、成長していく姿から目が離せない。

与え、与えられて大きくなっていく、木のすごさや不思議さが心から実感できる絵本です。

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