作:ケヴィン・ルイス 絵:デヴィッド・エルコリーニ 訳:長友恵子 出版:フレーベル館
生き物が大好きな男の子は、次々に生き物を拾ってきます。
でも、ママは「おうちにいれちゃだめ!」。
断られるたび、ネズミ、ブタ、ゾウと、違う生き物で試してみますが・・・。
あらすじ
あるところに、リヴィングストンという、ちょっと変わった男の子がいました。
リヴィングストンは、おもちゃやゲームに興味がなく、家の外で探検するのが大好きでした。
ある日、リヴィングストンは、葉についた虫を集め、家に持って帰りました。
すると、ママにきっぱりと「おうちに虫を入れちゃだめ!」と言われてしまったのでした。
そこで、リヴィングストンは、頭をひねって考えます。
そして、小さなネズミを捕まえると、家へ持って帰りました。
けれど、やっぱり「おうちにネズミを入れちゃだめ!」と言われてしまいました。
リヴィングストンが次に目をつけたのはブタ。
農場からブタをもらい家へ連れて帰ります。
もちろんママは「おうちにブタを入れちゃだめ!」。
でも、リヴィングストンは諦めません。
次は、森からシカを拾ってきました。
やっぱりママは「おうちにシカを入れちゃだめ!」。
それでも懲りないリヴィングストン。
なんと、動物園からゾウをもらって家につれて帰ってきたのです。
ゾウならママも「おうちに入れていいわよ!」と言ってくれるでしょうか?

おしまい!
『おうちにいれちゃだめ!』の素敵なところ
- ユーモアたっぷりに描かれる、親子あるあるな「おうちで飼っていい」対決
- どんどん大きくなっていく生き物たちとママのリアクション
- 戦略的かつ心温まる和解
ユーモアたっぷりに描かれる、親子あるあるな「おうちで飼っていい」対決
この絵本の、とてもおもしろいところは、親子あるあるとも言える「ねえ、これおうちで飼いたい」から始まるやり取りを、ユーモアたっぷりに描き出しているところでしょう。
おそらく、見ているどの子も言ったことがあるであろうこの言葉。
普通は、虫やトカゲなどの小さな生き物、大きくても捨て猫までくらいでしょう。
ですが、この絵本は違います。
ネズミから、ブタ、果てはゾウまで・・・。
家で飼うのが無理そうどころか、どうやったら連れて帰ってこられるのかわからないレベルの生き物を家に連れてくるのです。
これには子どもたちも、
「ブタもだめなんじゃない?」
「ゾウは絶対だめでしょ!」
「ゾウもらえるんだ・・・」
と、驚きとツッコミの嵐。
普通は、小さく簡単なもので譲歩していくところを、さらに大きく難しそうなものにしていくリヴィングストンの大胆さに、驚きつつも、大笑いな子どもたちなのでした。
この、現実ではありえないスケール感で描き出していく、きっと誰もが言ったことのある「おうちで飼っていい?」のやり取りを、ユーモアたっぷりに描き出しているところが、この絵本のとてもおもしろいところです。
どんどん大きくなっていく生き物たちとママのリアクション
そんな、リヴィングストンが連れくる生き物たちは、どんどん大きくなっていきます。
これも、この絵本のとてもおもしろくワクワクさせられるところでしょう。
最初は虫、ネズミと現実的に拾ってこれそうな生き物ですが、ブタを農場からもらってきたあたりから、子どもたちも「ん?」と思い始めます。
そこからのシカで、この絵本の流れを確信。
どんどん大きくなっていくことがわかります。
こうなってしまえば、こちらのもの。
リヴィングストンが次の生き物を探しに行くたび、
「次はなにを連れてくるのかな?」
「カバじゃない?」
「キリンかもよ!」
と、ワクワクが止まりません。
そして、だいたい予想を超えてくるので、
「ゾウ連れてきちゃった!?」
「おうちに入れるのかな?」
「絶対怒られるよ!」
と、より絵本に夢中になってしまうのです。
さらに、この大きくなっていくおもしろさをより増幅してくれるのが、これまた大きくなっていくママのリアクション。
最初はママらしく「おうちに虫を入れちゃだめ!お願いだから、そんなことしないで。わかった?」と、冷静に注意します。
ですが、シカくらいになると「リヴィングストン、だめーっ!おうちにシカなんて入れちゃだめ!」と、さすがに冷静ではいられなくなります。
そして、最後の場面になる頃にはついに「ああ、どうしたらいいの、全然わからないわ!」と、完全にお手上げ状態。
合わせて、家もとんでもないことになっていくから、おもしろくてたまらない。
生き物の現実離れしたスケール感に対して、家の荒れ具合やママのリアクションが、「本当に家にこの生き物が来たらこんな感じだろうな」という妙な納得感があるので、不思議なリアルさが漂っているのです。
この、連れてくるたび、どんどん大きくなっていく生き物と、それに比例してママのリアクションと家の荒れ具合も大きくなっていくワクワク感とドタバタしたおもしろさも、この絵本のとても楽しいところです。
戦略的かつ心温まる和解
こうして、どんどん生き物が大きくなり、家はめちゃくちゃになっていきますが、最後の場面で変化が訪れます。
この、大きく膨らんでいった物語のとてもきれいな着地点も、この絵本のとても素敵で心温まるものとなっています。
ここで変化するのもが、リヴィングストンが連れてくる生き物と、リヴィングストンとママの心です。
最初は頭ごなしに「おうちに入れちゃだめ!」と言っていたママ。
そして、ママの言うことがいまいちわからず、真剣に考えた末、連れてくる生き物が大きくなっていったリヴィングストン。
でも、これまでの繰り返しを経て、2人の心に変化が起こります。
そして、その変化が行動に繋がり、和解へと導いてくれるのです。
それはまさに歩みよりという言葉にぴったり。
この、徹底的にぶつかりあったからこそ、互いに納得できる和解へときれいに着地して終わる、おもしろく笑えるけれど、どこかほっとして心温まる物語も、この絵本のとてもとても素敵なところです。
ぜひ、絵本で一番大きい生き物の衝撃的なスケール感と、そこからどんな着地を迎えるのかを確かめてみてください。
子どもも大人も、度肝を抜かれて大笑いしつつ、とてもあたたかな気持ちになると思いますよ。
二言まとめ
「おうちで飼っていい?」で連れてくる生き物が、どんどん大きくなっていくスケール感とドタバタ感に、ワクワクと笑いが止まらない。
お互いに、やり過ぎはよくないなと、2人の姿から実感させられるユーモアたっぷりな絵本です。
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