作:エリック=カール 訳:もりひさし 出版:偕成社
ある日、あおむしが卵から生まれました。
腹ペコのあおむしは、どんどん食べ物を食べ、やがてチョウチョに。
リズムのよいあおむしの食べっぷりに、何度も読みたくなる絵本です。
あらすじ
ある夜、お月さまが葉っぱの上にある小さな卵を見つけました。
朝になり、お日さまが登ると卵は孵り、小さなあおむしが生まれました。
お腹がペコペコのあおむしは、食べるものを探しに出かけます。
月曜日に、あおむしはリンゴを1つ。
火曜日に、ナシを2つ。
水曜日に、スモモを3つ。
木曜日に、イチゴを4つ。
金曜日に、オレンジを5つ見つけ食べました。
それでもまだ、あおむしのお腹はぺこぺこです。
そこで、あおむしは土曜日に、さらにたくさんのものを食べました。
チョコレートケーキ、アイスクリーム、ピクルス、チーズ、サラミ・・・
けれど、食べすぎたあおむしは、お腹が痛くなってしまったのでした。
日曜日の朝になり、あおむしは緑の葉っぱを食べました。
とてもおいしい葉っぱで、お腹の具合もすっかりよくなったあおむし。
もう小さなあおむしではなく、すっかり大きくなっています。
それからまもなく、あおむしはサナギになって眠りました。
そして、サナギの皮を脱いで出てくると・・・
大きくてきれいなチョウチョになったのです。

おしまい!
『はらぺこあおむし』の素敵なところ
- 小さな体でどんどん食べていくあおむしの姿
- 本当に食べているような穴の仕掛け
- 思わず体が動いてしまうあおむしの変身
小さな体でどんどん食べていくあおむしの姿
この絵本の子どもたちを夢中にさせてくれるところは、あおむしがリズムよくどんどん食べ進んでいくところでしょう。
曜日が進むごとに、食べるものが変わり、量も多くなっていくおもしろさ。
小さな体と、大量の食べ物というギャップ。
土曜日に、魅力的でてんこ盛りな食べ物が並ぶワクワクする光景。
そのどれもに、子どもたちを惹きつけ、つい手を伸ばしたり、しゃべりたくなってしまう魅力が詰まっています。
- 自分の好きな果物を心待ちにし、出てきた途端「私の好きなイチゴだ!」と喜ぶ子。
- 絵に手を伸ばして、自分の口に運ぶ子。
- 食べ物を指さしながら、読み手の顔を見て名前を言ってほしそうな子。
- 土曜日の食べ物を、読み手に合わせて一緒に言おうとする子。
などなど、読んでいるだけで、子どもたちが自然とアクションを起こしてしまうのです。
繰り返しの文章によるテンポのよさや、大きく色鮮やかに描かれた絵も、子どもたちのアクションを促しているのでしょう。
読んでいるうちに、対話と一体感が生まれる絵本となっています。
特に、繰り返し読んでいると、前まで指さしだった部分を言葉で伝えるようになったりと、アクションの変化とともに、成長も感じられたりするからおもしろい。
この、小さなあおむしが次々と食べ物を食べていくというシンプルなおもしろさを、色鮮やかな絵とリズミカルな文章で自然と体も動いてしまうほど楽しめるのが、この絵本のとても素敵なところです。
本当に食べているような穴の仕掛け
そんなあおむしの食べる姿が楽しいこの絵本。
その「食べる」を、より体で感じられる仕掛けがされているのも、この絵本のおもしろいところとなっています。
その仕掛けとは、食べたものにあおむしの体の大きさと同じ穴が空いているというもの。
この穴が、まさに今、食べていったかのような臨場感を味あわせてくれるのです。
仕掛けの中で特におもしろいのがあおむしの居場所。
果物のページをめくると、穴からあおむしが半分ほど体を出して、次の食べ物へ向かっています。
これが、ページとあおむしの動きが連動していておもしろい。
ページをめくると、目の前であおむしが果物を食べ、穴を開けて出てきたように感じさせてくれます。
また、この穴は臨場感を出す以外にも、子どもたちを夢中にさせてくれるポイントがあります。
それは、目の前に穴があるというシンプルかつ強力な魅力。
目の前に穴があれば、指をつっこまないわけにはいかないのが子どもというもの。
自然と指がのびるのです。
穴の大きさもまた絶妙で、小さい子の指が少し入るくらいの大きさ。
入り過ぎず入らな過ぎず、ちょうどよい刺激具合になっています。
物語としてわかる子には舞台装置としておもしろく、
まだ、わからない赤ちゃんには触っているだけでおもしろい。
そんな、子どもによって様々な楽しみ方が見つかる穴の仕掛けも、この絵本のとてもおもしろいところとです。
思わず体が動いてしまうあおむしの変身
さて、こうしてたくさんの食べ物を食べたあおむしは、体も大きくなり、サナギへと変化します。
そして、最後のページでチョウチョへと変身して物語は終わります。
この、チョウチョへの変化が子どもたちを釘付けにしてしまうほど魅力的なところも、この絵本の素敵なところとなっています。
茶色いサナギとなりゆっくり眠ったところからの、ページをめくると見開きいっぱいに美しい羽を広げるチョウチョ。
この変化だけで、目が釘付けになること間違いなし。
子どもたちも、
「チョウチョになった!」
「きれい~」
「パタパタ~」
と、その姿に大喜び。
でも、このチョウチョの魅力はそれだけではありません。
絵本を閉じたり開いたりすると、チョウチョが羽ばたいているように見えるのです。
その動きを見ると、自然に子どもたちの体も動いてしまいます。
チョウチョになったとたん、一緒に羽ばたき始める子どもたち。
その姿からは、自分をあおむしと一体化させていることが感じられます。
だからこそ、あおむしがチョウチョになったことが、心からうれしいのでしょう。
この、目だけではなく、心も体も奪われてしまうほど美しい、あおむしからチョウチョへの変身も、この絵本のとても大きな魅力です。
ぜひ、座って見るだけじゃなく、全身を使ってこの絵本の魅力を感じ取ってみてください。
小さい子から大きい子まで、それぞれの楽しみ方が見つかると思いますよ。
二言まとめ
あおむしがたくさんの食べ物を食べ、大きく成長してチョウチョになるという、シンプルなおもしろさを全身で思いきり味わうことができる。
見終わると、いつの間にか自分もチョウチョになり、どこかへ羽ばたいていってしまう絵本です。
0~2歳は、破けにくいこちらがオススメです↓
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