文:石井睦美 絵:布川愛子 出版:ブロンズ新社
春のワンピースと聞いてどんなものを思い浮かべるでしょう?
春色?春らしいデザイン?
この仕立て屋さんはそれだけではありません。
五感を全て使って春を表現したワンピースを作ってくれます。
あらすじ
ウサギのサキちゃんは目を覚ますと、ミコさんの仕立て屋さんに向かいました。
ミコさんに春のワンピースをお願いすると、「作るためにサキちゃんの気分を知らないと」と言いました。
ミコさんは「春の花ってどんな花?」
「春の色ってどんな色?」
「春の音ってどんな音?」
「春になったらなにがしたい?」
「ポケットには何を入れたい?」
など、色々なことを聞きました。
ボタンを選び、飾りを選び、サイズを測るとその日は家に帰りました。
その夜、ミコさんはミシンに向かいながら、サキちゃんの言葉を思い出していきます。
一体どんなワンピースが出来上がるのでしょう。
『はるのワンピースをつくりに』の素敵なところ
- 春を感じるあたたかで爽やかな言い回し
- 気分だけでなく、機能性も考えるプロの技
- 色鮮やかであたたかな絵
この絵本の文章は言葉の端々に春を感じる言い回しが散りばめられています。
「風が運んできたすみれの香りで」目を覚ましたり、
「そよそよ風に誘われて」仕立て屋さんに向かったり、
聞いているだけで気持ちも春めいてきます。
そんな絵本の中の仕立て屋さんは、デザイン性だけでなく、相手に合わせた機能性も追求するプロの職人さん。
気分を聞きながらデザインを考える中で、「春の生き物と追いかけっこをする」と聞くと、「すそは動きやすくしましょうね」と走りやすさを考えます。
「ポケットに草花や小石を入れる」という話を聞くと、「丈夫なポケットが必要ね」と使う相手のことを考えます。
こんな風に、ただかわいいだけでなく、それを着て遊ぶことまで考えられているのです。
そんな春の雰囲気や、素敵なワンピースの魅力は色鮮やかであたたかな絵によって、見事なまでに表現されています。
特に出来上がったワンピースを着たところでは、
「かわいい!」「私も作って欲しい!」「リボンもついてる!」など感嘆の声が。
飾りやボタンを選ぶところでも、絵を見て「あれがいい」など、見ている子どもたちも自分のワンピースを頭の中で作っているようでした。
そんな春を感じて、自分だけの春服が欲しくなる絵本です。
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