文:おおなり修司 絵:丸山誠司 出版:絵本館
太ってしまったゴリラが、ダイエットを始めます。
でも、立て続けにハプニングが・・・。
「ふんが」という言葉のみで進んでいく、ユニークな絵本です。
あらすじ
太ってお腹がたるんでしまったゴリラのお父さん。
運動して、体を引き締めることに決めました。
準備運動をして、ランニングに出かけます。
すると、後方にチーターの影が!
ゴリラは必死に逃げます。
チーターは追いかけてきます。
必死に逃げるゴリラですが、目の前の崖に気づかず、海の中へまっさかさま。
安心してはいられません。
海の中にはたくさんのサメが待っていたのですから。
サメに食べられないよう必死に泳いだゴリラは、なんとか小さなピンクの島にたどり着きました。
やっと一息つくことができたゴリラ。
しかし、その時ピンクの島が動き出したからびっくり仰天。
なんと、その島は大きなタコの頭だったのです。
タコの足に捕まったゴリラは必死に抵抗します。
ゴリラの抵抗に、たまらずタコが墨を吐き、ゴリラは飛ばされ空の彼方へ・・・。
幸いにも、飛ばされた先は、家族のいる森でした。
お父さんゴリラに再開した、お母さんゴリラと子どものゴリラ。
お父さんゴリラを見てあることに気づきます。
お父さんゴリラの驚きの変化とは!?

おしまい!
『ふんがふんが』の素敵なところ
- ダイエット中の休む間もないハプニング
- 「ふんが」という言葉だけで進んでいく物語
- 結果にコミットした物語の結末
ダイエット中の休む間もないハプニング
この絵本の笑いが止まらないところは、ハプニングだらけのドタバタとしたダイエット道中でしょう。
ランニングを始めたと思ったら、すぐチーターに追いかけられ、
崖から落ち、
サメに追いかけられ、
タコに捕まる。
一難去ってまた一難。
このダイエット、常に誰かに追いかけられているのです。
そして、子どもは追いかけっこを見るのが大好き。
さらに、必死に逃げるゴリラという構図が加わったら・・・
当然、大笑いです。

チーターきてるよ!



おっこちちゃった!



今度はサメー!?
と、次々起こるハプニングに大盛りあがりの子どもたち。
連続するコントのような展開に、最後まで息つくひまがありません。
読んでいる方も、見ている方も、その勢いに、
「いろいろあったけど・・・とりあえず楽しい!!!」
そんな気持ちを味あわせてくれます。
この、ダイエットが始まった瞬間始まる怒涛の展開に、最初から最後まで驚きと笑いが止まらないのが、この絵本のとてもおもしろいところです。
きっと、駆け抜けていく速さと勢いに、ジェットコースターのような楽しい疾走感を味わえることでしょう。
「ふんが」という言葉だけで進んでいく物語
この絵本のおもしろいところとして、語らなければいけないことがもう1つ。
それは、「ふんが」という言葉だけで、物語が進んでいくというところです。
ナレーションは出てきません。
文章も出てきません。
効果音も出てきません。
「ふんが」意外に出てくる唯一の言葉は「ふが ふが」という言葉のみ。
ゴリラ純度100%です。
でも、めっちゃ伝わるからおもしろい。
準備体操の掛け声の「ふんがふんが ふんが」
なにかに気づいたときの「ふんが?」
驚いたときの「ふんがー」
「ふんが」という1つの言葉で、すべての感情がわかりやすく表現されているのです。
読んでいる方は、余分なことは考えずゴリラになりきれておもしろい。
見ている方も、言葉の響きだけで純粋におもしろい。
「ふんが」という言葉のチョイスが秀逸過ぎます。
そりゃ子どもも、真似をして



ふんがー!
と言ってしまいますよね。
読んでいると、どんどんゴリラが増えていくおもしろさは、この絵本ならではです。
この、余分な言葉はいっさい使わず、「ふんが」というゴリラな言葉だけで突き進んでいく、実にゴリラらしい物語の描き方も、この絵本のとてもユニークでおもしろいところです。
結果にコミットした物語の結末
さて、そんな怒涛のダイエットを「ふんが」で乗り越えてきたゴリラ。
その結末は、結果にコミットしたものになっていました。
ゴリラの姿のビフォアアフターは、まさに某有名筋トレジムのCMのよう。
これが、忘れた頃にくるのがたまらなくおもしろいのです。
みんな5ページ目くらいまでは、ダイエットしていることを覚えています。
けれど、チーターに追いかけられたあたりから、どんどん頭から「ダイエット」という文字は消えていき、
サメのあたりでは、誰もダイエット中だということは覚えていません。
だって、それどころじゃないですから。
こうしてダイエットの絵本だということをすっかり忘れた子どもたち。
最後の最後に、結果にコミットした結末を見て、ダイエットという最初の目的を思い出すのです。
この意表をついたオチが抜群におもしろく、子どもたちもゴリラの変化に気づきびっくり。
数々のハプニングが、知らず知らずのうち結果にコミットし、ゴリラの目的を達成しているなんて・・・。
この、怒涛の展開が巡り巡って、ゴリラの最初の目的を達成してしまうという、意外過ぎる結末も、この絵本のとてもおもしろいところとなっています。
ぜひ、ゴリラのコミットされた姿を、見てみてください。
最初のページと最後のページの落差に驚くこと間違いなしですよ!
二言まとめ
ゴリラが次々ハプニングに巻き込まれ必死に逃げ続ける怒涛の展開が、ジェットコースターのようにおもしろい。
「ふんが」という言葉だけ進んでいく、読み手も聞き手も、自然とゴリラになってしまう絵本です。
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