再話:水沢謙一 画:梶山俊夫 出版:福音館書店
怖いお話を読みたい時はありませんか?
でも、怖すぎると泣いてしまったり、夜夢に見たり・・・。
子どもの怖い絵本選びって意外と難しいです。
そんな中で鉄板なのがこの絵本『さんまいのおふだ』です。
怖い中にもユーモアがあり、怖いけどお気に入りな絵本になると思います。
この絵本もいろんな種類が出ているので、おススメも紹介していきますね。
怖いけど面白いさんまいのおふだ
- 想像力の膨らむ絵
- 子どもが真似したくなるフレーズ
- 長すぎず、短すぎない文量
『さんまいのおふだ』のおススメはこどものとも絵本のものです。
まずはその絵。
大人にはなんにも怖くないへんてこな絵ですが、子どもには自分の脳内で保管した恐ろしいおにばさに見えます。
普通のおばあさんに化けている時とおにばさになった時、ほとんど絵が変わらないのに子どもたちは縮こまったり、息をのんで怖がるのですから不思議なものです。
また、視覚的に怖くないので絵を見てその怖さが脳裏に焼き付くことがないのもいいところです。
次に怖い中でもユーモラスな文章で場を和ませてくれます。
怖がっていた子も、思わずみんなと口ずさんでしまう。
そしていつの間にか日常生活でも真似して使う子が出てきたりして、子どもの表現力やイメージの世界を広げてくれているのだなと感じます。
それを飽きさせず、駆け足過ぎないちょうどよい文良で描いてくれています。
あらすじと子どもの反応
物語はある寺から始まります。
和尚様と小僧が住んでいて、小僧が花切りに山へ出かけていきます。
花を切っているといつの間にか山奥に。帰り方もわかりません・・・
すると明かりのある家を見つけました。
そこには一人のおばあさんが住んでいます。
泊めてほしいと言うと、快く了承してくれます。
・・・しかし、夜寝ていると、横にはおにばさになったおばあさんが小僧の顔をなめたり、おしりをさわって「小僧はうまそうだな」なんて言っています。
そこで小僧は逃げ出さなければと思い、便所に行きたいと伝えます。
便所で悩んでいるとおにばさが、
「まだか小僧!?」と急かしてきます。
すると「まーだまだぴーぴーのさかり」と答えます。
このやり取りを何度かするのですが、読み手が「まだか小僧!?」と言うと、それまで怖くて縮こまっていた子が「まーだまだぴーぴーのさかり」と笑顔で答えます。
ここでおにばさの登場からの緊張感がうまく解かれて、子どもはますますお話の世界へ。
そして、困っている小僧にトイレの神様が三枚のお札を授け、逃げるように言います。
一方おにばさが「まだかまだか小僧!?」と聞くと、トイレの神様が代わりに「まーだまだぴーぴーのさかり」と答えます。
ついに怒ったおにばさが小僧につけた紐を引っ張ると、身代わりに結んだ柱が飛んできて小僧が逃げたことに気が付き追いかけます。
その足の速いこと。
すぐに追いつかれそうになり、小僧は白いお札を使います。
するとおにばさの目の前に大きな山が。
しかし山を乗り越えまた追いついてきます。
今度は青い札を投げると大きな川が。
やっぱり川を越えてすぐにおにばさは追いついてきます。
最後の赤いお札を投げると大火事が。
それでも追いかけてきますが、小僧はなんとか無事にお寺に着くことが出来ました。
そして、和尚様に「はや戸を開けてくんなせ」と助けを求めますが和尚さんは「おうい、今起きて」とのんびり答えてきます。
それどころじゃない小僧は「はやはや!」とせかします。
でも、ふんどししめて、おびしめて、ぞうり履いてとゆっくり準備するたび小僧は「はやはや!」。
すると子どもたちも「はやはや!」とみんなで小僧の真似をし出します。
おにばさに追いかけられていた緊張感も和みます。
やっと戸を開けて小僧を隠してくれた和尚様。
そこへおにばさがたどり着きます。
小僧を出せというおにばさに和尚様は術比べをしようと持ち掛けます。
それにのったおにばさは大入道になってみせます。
すると和尚様「こんだ、小さな豆になってみれ」と言います。
それに乗ったおにばさが小さな豆になると、なんとそれを口に入れ食べてしまいました。
これを見た子どもたちは「食べちゃった!」とびっくり。
怖かった気持ちもどこへやら。笑いあっているのでした。
おススメの読み方
- 明るい場面と怖い場面の明暗をしっかりつける
- おにばさは思い切り怖く
- 小僧の必死感と和尚様ののんびり感をしっかり表現する
物語は小僧の楽しいお出かけから始まります。
なので楽しく明るく読んでいきます。
暗くなって帰り道がわからなくなり不安になりますが、家の明かりが見え、泊めてくれるというので一安心。「小僧はおばばのそばで寝たって」
ここで一呼吸置き、ページをめくったところからは静かに怖いトーンで読んでいきます。
おばばがおにばさだったと気づきますが、ばれずに逃げなければなりません。
それにより子どもも息をひそめ自然と小声に。
便所へ行き「まだか小僧」のやり取りになりますが、ここでおにばさを怒った様子で演じてはいけません。ここは怒って追いかけてくる次の場面への溜めになります。
お札をもらった小僧が逃げ、「いつまで便所にいる!?」というところから本気の怒ったおにばさに一気にシフトチェンジします。
それと同時に小僧を追いかける様子を一気に読み抜きます。
子どももまるで本当に追いかけられているかの如く、真剣な表情で一言もしゃべりません。
そして寺に着いたら、小僧は追いかけられているときと同じ読み方で、和尚様は対照的にゆっくりと読んでいきましょう。
その後は和尚様のペースで落ち着いた調子で最後まで読んでいきます。
この怖さと面白さのバランスが絶妙な一冊をぜひ自分なりの読み方を編み出し、お気に入りの一冊にしてください。
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