作:内田麟太郎 絵:山本孝 出版:岩崎書店
池に住んでいるカッパや水辺の生き物たち。
そんなカッパたちには年に一度「いい日」が訪れます。
今年もその「いい日」のために、準備が始まったみたいです。
あらすじ
伊予国、松山のある池の中にカッパ町がありました。
カッパ町に住むカッパたちは、なんだかウキウキしています。
なぜなら明日は、年に一度だけ5月にやってくる「いい日」だからです。
カッパたちは、銭湯で体をきれいにして明日に備えます。
あるカッパの一家は、風呂上がりにカワウソ一家を迎えに行きました。
明日のために、カワウソ一家がカッパ一家の家へ泊まりに来るのです。
カッパ一家とカワウソ一家は、そのままお祭りへ向かいました。
途中、サンショウウオにエビやナマズも合流し、みんなでお祭りへ。
お祭りでは前祝いに、金魚が歌い、カニが踊りを披露します。
夜も更けた頃、カッパ一家とカワウソ一家はカッパの家へ帰ります。
頭の上の水面からは満天の星空が見え、明日はいい天気になりそうです。
翌日、空は青空広がるいい天気。
カッパや池の生き物たちは、広場のゴザの上に寝転びます。
そして、空を見上げると・・・
そこには空一面に何十匹ものこいのぼりが泳いでいるではありませんか。
こいのぼりをあげた人間に称賛を贈りながら、カッパたちは手を叩いて大喜び。
そう、今日はこどもの日。
「病気をするな。すくすく育て」と、みんなで子どもの成長を祝う日です。

おしまい!
『かっぱのこいのぼり』の素敵なところ
- カッパたちの楽しそうな暮らしぶりとお祭り
- 水の下から見上げる、水面を覆い隠すほどのこいのぼりが圧巻
- わかりやすくシンプルなこどもの日の説明
カッパたちの楽しそうな暮らしぶりとお祭り
この絵本のおもしろいところは、カッパの町での暮らしぶりがよくわかるところでしょう。
池の中の町というだけでも魅力的ですが、住んでいるのは妖怪のカッパ。
そりゃ、興味が出ないはずがありません。
まず驚くのが、松山名物ぼっちゃん電車がカッパの町も走っていること。
さらに、じょうちゃん電車という新しい電車まで走っています。
ぼっちゃん電車を知っていれば、

カッパの町まで走ってるんだ!?
と驚き、知らなくても、



町の中を電車が走ってるよ!
と驚きます。
他にも、温泉で皿を洗うカッパを見られたり、女の子はおめかしする時は髪型をおかっぱにするなど、知られざるカッパの暮らしぶりを知ることができるのです。
さらに、祭りではよりカッパのことを知ることができます。
チョコバナナの代わりに、チョコキュウリが売られていたり、
ベビーカステラが、尻子玉カステラになっていたり、
と、カッパを知っているほどにおもしろい小ネタも満載。
カッパの「おかっぱ」。
金魚の「ぎょぎょぎょのぎょっ」や、
カニの「うれしゅうて ニカニカ カニカニ」という歌
などの言葉遊びもあいまって、たくさんの発見があるとてもおもしろいものになっているのです。
この、ネタ満載なカッパの暮らしぶりを見ながら、たくさんの発見を楽しめるところが、この絵本のとても素敵でおもしろいところです。
カッパ好きなら、さらに1.5倍くらい楽しめることでしょう。
水の下から見上げる、水面を覆い隠すほどのこいのぼりが圧巻
そんなカッパの暮らしを見ているだけでおもしろいこの絵本ですが、1番の見どころはなんといっても、こいのぼりのお披露目でしょう。
これが人間の見るものと一風変わっていて、とてもおもしろいものになっています。
というのも、カッパ町があるのは池の中。
カッパから見るこいのぼりは、水面を透かせて見るこいのぼりとなっています。
すると、水面の波と合わさって、こいのぼりがまるで水の中を泳いでいるように見えるではありませんか。
でも、その背景は空。
水中と空の両方を泳いでいるような、不思議で神秘的なこいのぼりが目の前に現れるのです。
さらに、登場するこいのぼりの量もすごい。
何列にも渡って、何十匹もの色とりどりのこいのぼりが、空を覆いつくします。
これには子どもたちも、



わー!こいのぼりだ!



あの公園みたいに、いっぱいだね!



ほんとに水の中を泳いでるみたいに見える!
と、大興奮。
ページを開いた途端、目の前を覆い尽くすほどのこいのぼりが登場するのは、圧巻の一言。
見事に子どもたちの反応と、カッパたちの歓声が重なり合っていました。
この、空を覆い尽くすほどたくさんのこいのぼりを、池の中といういつもとは違う目線で見ることができる不思議さとおもしろさも、この絵本ならではのとても素敵なところです。
わかりやすくシンプルなこどもの日の説明
さて、物語としてとてもおもしろいこの絵本。
もう1つ、行事絵本としての役割も持っています。
この絵本では、最後の場面でこどもの日という行事に触れられています。
その説明は、
今日はこどもの日です。みんなで子どもの成長を祝います。「病気をするな。すくすく育て」と。
という1文だけ。
とてもシンプルかつ、端的にこどもの日を言い表したものになっていて、小さい子にもわかりやすい。
カッパたちとこいのぼりやこどもの日を楽しみながら、こどもの日がどんな日なのかとても簡単にわかるものとなっています。
ただ、最後の場面で人間が菖蒲湯に入っているなど、こどもの日にどんなことをするかという話に繋げやすいようになっているのは嬉しいところ。
この絵本が、菖蒲湯やこいのぼりの由来を話すきっかけにもなってくれることでしょう。
この、余分なことが一切ない、シンプルで小さい子にもわかりやすいこどもの日の説明も、この絵本のとても素敵なところです。
3歳くらいの子に、こどもの日がどんな日か伝えるにはぴったりな絵本だと思いますよ。
二言まとめ
カッパと一緒に、水の中からこいのぼりを見上げるという、楽しくて不思議で神秘的なこどもの日を体験できる。
こどもの日がどんな日かを、とてもシンプルにわかりやすく伝えてくれるこいのぼり絵本です。
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