作・絵:たかいよしかず 出版:国土社
妖怪村でこどもの日恒例の「げんきこいのぼり大会」が始まります。
自分で作ったこいのぼりを、風神様の風に乗せ飛ばす大会です。
さあ、風神様の元へ1番乗りするのは、どのこいのぼりでしょう!?
あらすじ
たくさんの妖怪たちが暮らす妖怪村。
あと少しでこどもの日という頃、いったんもめんのいったんと、3匹の子鬼たちがこどもの日について話していました。
こどもの日がなんの日か知らない子鬼たちにいったんが、
「子どもたちがみんなすくすく大きく元気に育つことを祝う日」
だと教えてくれます。
子鬼たちは、こいのぼりをどうして飾るのかも聞いてみます。
これにもいったんは、
「コイが元気にどんどん滝を登る姿をこいのぼりにした」
のだと答えてくれました。
さらにいったんは、妖怪村ではこどもの日に「げんきこいのぼり大会」があることも教えてくれました。
「げんきこいのぼり大会」というのは、みんなが作ったこいのぼりで、今年の福こいのぼりを決める大会です。
それを聞いた子鬼たちは、参加することに決めました。
するとそこへ、クマに乗った金太郎がやってきました。
けれど、よく見るとそれは金太郎の格好をした座敷わらしのわらしちゃんと、クマの格好をした九尾のキツネのコンコン。
話を聞くとわらしちゃんは、龍神川にこいのぼりを作りに行くのだそう。
いったんと子鬼たちも一緒に、こいのぼり作りにいくことにしました。
龍神川の川原では、すでにたくさんの妖怪がこいのぼりを作っています。
イカやサンマ、サメのこいのぼりなど、とっても自由。
子鬼たちもこいのぼりを作り、縄に吊るしてもらいました。
いよいよこどもの日がやってきました。
げんきこいのぼり大会の始まりです
いったんは、龍神山の上に住む、風神様のところへ向かいます。
山の上では、風神様が折り紙でなにかを折っていました。
風神様の準備も終わり、いよいよ大会のスタートです。
いったんのかけ声と大太鼓の音に合わせ、風神様が山おろしの大風を吹かせます。
すると、川の上に吊るされていたこいのぼりが宙を舞い、風神様の元へ飛び立ちました。
最初に風神様の元へたどりついたこいのぼりが、今年の福こいのぼりです。
優勝者には風神様から、ピカピカの竜神こいのぼりと、折り紙で作ったとびきり大きな兜が贈られました。
他の子どもたちにも、折り紙の兜と柏餅が振る舞われましたよ。

おしまい!
『ようかいむらのすいすいこいのぼり』の素敵なところ
- とっても自由な妖怪たちのこいのぼり作り
- こいのぼりが本当に空を飛ぶワクワクの「げんきこいのぼり大会」
- とても簡単でわかりやすい行事の説明と、こどもの日にちなんだアイテムたち
とっても自由な妖怪たちのこいのぼり作り
この絵本のとてもおもしろいところは、妖怪たちの作る特徴的なこいのぼり。
みんな自分好みに仕上げます。
その形はとっても自由。
こいのぼりだけど「鯉」にまったく縛られません。
こいのぼりをカッパバージョンにした、原型はとどめているものから、
サメ、サンマなど形は同じだけどすでに鯉ではないものや、
チョウチンアンコウやイカなど、そもそも形すら違うもの・・・
まで、本当に様々。
これには子どもたちも、

鯉じゃないじゃん!?
と、きれいなツッコミを入れていました。
でも、それも最初だけ、



リュウグウノツカイだ!



タコもあるよ!
と、色々なこいのぼりを見つけて大興奮。
特に、みんなのこいのぼりが吊るされて、川の上いっぱいに広がる場面では、発見が止まらず、なかなかページをめくれませんでした。
この、見ているだけでおもしろい、「鯉」の枠を飛び越えた自由過ぎるこいのぼりたちが、この絵本のとてもユニークでおもしろいところです。
こいのぼりが本当に空を飛ぶワクワクの「げんきこいのぼり大会」
そんな見ているだけで楽しいこいのぼりですが、それだけでは終わらないのも、この絵本のとてもおもしろいところ。
なんと空を飛び競争するのです。
吊るされているだけで楽しさが止まらないこの絵本。
それが本当に空を飛んだら、ワクワクが止まらないに決まっています。
げんきこいのぼり大会で、大風を吹かせる風神様。
その風に乗って、高い山を登っていくこいのぼり。
「まさに、鯉の滝登り!」
といったスケール感を味わえます。
しかも、どのこいのぼりが優勝したか自分で迷路を解いて調べないといけないのもおもしろい仕掛けです。
勝負の行方は、けっこうしっかり辿らないとわからない迷路になっていて、どのこいのぼりが風神様の下へたどり着いたか人目ではわからないようになっています。
優勝者の発表ページでも、その妖怪がどのこいのぼりを作ったのかわからないので、やっぱり調べないといけないのです。
この仕掛けも、子どもたちの好奇心をくすぐりワクワクさせてくれるところ。
こいのぼりと一緒に風神様に向かって飛んでいる気分を味わえることでしょう。
この、作ったこいのぼりが「げんきこいのぼり大会」で本当に空を飛び競争するという展開も、この絵本の「本当にそうなったら楽しそうだな~」とワクワクさせてくれるところです。
とても簡単でわかりやすい行事の説明と、こどもの日にちなんだアイテムたち
さて、そんなこどもの日とこいのぼりをテーマにしたこの絵本。
子どもの日という行事を、子どもたちに伝える時に、とても助かる絵本となっています。
まず、絵本冒頭でしてくれる、こどもの日とこいのぼりの説明が、とても簡潔でわかりやすい。
こどもの日は、
「子どもたちがみんなすくすく大きく元気に育つことを祝う日」
こいのぼりを飾る理由は、
「コイが元気にどんどん滝を登る姿をこいのぼりにした」
と、一文でスパッと言い表してくれるのです。
しかも、いったんもめんのいったんという、魅力的なキャラクターの口から出てくるセリフなので、子どもたちも集中して聞いています。
この説明だけでも嬉しいのですが、もう1つありがたいことがあります。
それは、折り紙の兜や柏餅など、こどもの日に欠かせないアイテムも登場すること。
説明まではされませんが、妖怪たちが兜をかぶっていたり、おいしそうに柏餅を食べているだけで十分です。
そこから兜や柏餅の説明へ繋げることもできます。
なにより、物語を楽しむ中で、子どもがこどもの日ならではなものに、自然と興味を持ってくれるのが本当にありがたい。
この絵本を読んだあとに、折り紙の兜作りに誘ったら、



作りたい!
と、乗ってくること間違いなしでしょう。
この、妖怪村の楽しい物語を見ているだけで、こどもの日やこいのぼりの由来を知り、こどもの日ならではのアイテムにも自然と興味がひかれるところも、この絵本のとても素敵でありがたいところです。
二言まとめ
妖怪たちの作る「鯉」という常識にとらわれない、自由過ぎるこいのぼりを見ているだけでおもしろい。
そんな魅力あふれるこいのぼりたちが、本当に空を飛び競争する姿にワクワクが止まらないこいのぼり絵本です。
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