作:石井聖岳 出版:講談社
とらのこ3兄弟が、こいのぼりを見て替え歌を始めました。
どの替え歌も、へんてこなこいのぼりばかり出てきます。
でも、この替え歌、終わる気配がありません・・・。
あらすじ
あるところに、トラ一家の住む家がありました。
ある日、お父さんがこいのぼりを垣根にくっつけていると、とらのこ3兄弟がこいのぼりに気づきました。
3兄弟は大喜び。
嬉しすぎて、
「くもよ~り~ た~か~い こいの~ぼ~り~♪」
と、屋根を越えて空を飛ぶ、こいのぼりの替え歌を歌い始めました。
それを聞いたお父さんが、かっこいい歌だと褒めてくれたので、さらに嬉しくなった3兄弟。
替え歌の2番に、
「いえよ~り~ で~か~い こいの~ぼ~り~♪」
と、新しい歌をお父さんに聞かせました。
少し困りつつも、やっぱり褒めてくれるお父さん。
すると、替え歌の3番に、
「へびよ~り~ な~が~い こいの~ぼ~り~♪」
と、歌い始めます。
こうなるともう、3兄弟の歌は止まりません。
岩より硬いこいのぼり、
なんでも食べるこいのぼり、
触ると痛いこいのぼり・・・
などなど、どんどん新しい替え歌を作っていきます。
・・・そして、やっと歌い疲れクタクタになった3兄弟。
お父さんに抱きかかえられ、家へと帰っていったのでした。

おしまい!
『【とらのこさんきょうだい】かえうたかえうたこいのぼり』の素敵なところ
- いろんなヘンテコこいのぼりが出てくる替え歌に大笑い
- 自分でも作りたくなる替え歌とヘンテコこいのぼり
- 大暴れした3兄弟のかわいい結末
いろんなヘンテコこいのぼりが出てくる替え歌に大笑い
この絵本のなによりおもしろいところは、ヘンテコなこいのぼりがたくさん登場する替え歌です。
みんな知ってる「こいのぼりの歌」を、この絵本ではバリエーション豊富に替え歌して披露します。
屋根を越え、雲より高く飛ぶこいのぼり
家よりでかく、小さい家を潰してしまうこいのぼり
ヘビより長く、ろくろ首と踊りを踊るこいのぼり
などなど、どれも驚き笑ってしまうようなものばかり。
スケールが大きく、「こんなこいのぼりほしい!」と羨ましく思えるこいのぼりから、
こいのぼりの常識を越えたヘンテコなものまで種類もさまざま。
予想もつかないような替え歌に、

でかすぎるんだけど!!



長すぎ長すぎ~!



カチンコチンでイワークみたいw
と、大笑いしながら聞いていました。
さらに、このおもしろさを盛り上げてくれるのが、替え歌とセットの絵。
替え歌で登場したこいのぼりは、すべてページの中に描き出されます。
替え歌だけでもヘンテコなのに、それを絵として見せられたらおもしろいに決まっています。
悠々と雲の上を泳ぐこいのぼりや、
たくさんの家を押しつぶしている巨大こいのぼり、
など、絵で見るとやはり迫力が違います。
特に、最後の替え歌が止まらなくなった場面は、まさにカオス。
ページの中に、いろいろなこいのぼりがひしめき合い、ギャグ漫画のようなおもしろさに満ちています。
どんなこいのぼりがいるか探しているだけでおもしろい。
この、よく知っている「こいのぼりの歌」の替え歌を通して、こいのぼりやその歌の新たな楽しみ方に気づかせてくれるところが、この絵本のとてもおもしろいところです。
自分でも作りたくなる替え歌とヘンテコこいのぼり
そんなおもしろい替え歌を聞いたり、ヘンテコなこいのぼりを見ていたら、自分も考えてみたくなってしまいます。
とらのこ3兄弟の自由なこいのぼりを見たおかげで、みんな発想が柔軟に。



なんで~も~ と~か~す こいの~ぼ~り~♪



とうふ~で~ できて~る~ こいの~ぼ~り~♪



ドラゴ~ン みたい~な こいの~ぼ~り~♪
など、オリジナルの替え歌とこいのぼりを考え、歌っていました。
この時、友だち同士でコミュニケーションが生まれるからおもしろい。
「これはこれは!?」
「これおもしろいでしょ!?」
と、自分の発想を伝えたり、おもしろさを競い合ったりし始めます。
中には、考えたこいのぼりを絵に描いてみる子も。
絵本の中のおもしろい替え歌に発想が刺激され、自然と自分でも表現がしたくなるというのも、この絵本のとても素敵なところとなっています。
こいのぼり作りの前に読んだら、より自由なは発想のこいのぼりが誕生するかもしれませんよ。
大暴れした3兄弟のかわいい結末
さて、お父さんを置いてけぼりに、歌を歌い続けた3兄弟。
最後には歌い疲れて、クタクタになってしまいます。
この、3兄弟の大暴れに大笑いさせてもらったあと、3兄弟のかわいい姿に癒やされて終わるのも、この絵本の素敵なところなのです。
すべての力を使い切った3兄弟は、もうヘロヘロ。
お父さんの背中に、
「ぐて~ん」「だら~ん」「びた~ん」
とくっつき、一言。
「お父さん、部屋までつれてって~」
その脱力感たるや、トラの子という見た目もあいまって、ものすごくかわいい。
さらにここで、お父さんの渾身の替え歌が炸裂します。
この替え歌が、なんとも哀愁漂い、お父さんの苦労を感じさせ、脱力感がされにアップ。
3兄弟の替え歌で、高まりに高まった熱気を、いい具合にクールダウンさせてくれるのです。
この、3兄弟の大暴れから、心地よい脱力感に癒やされ終わるところも、この絵本のメリハリあるとても素敵なところです。
ネコ科の動物はズルい。
二言まとめ
「こいのぼりの歌」の替え歌が、壮大で、ヘンテコで、自由すぎておもしろい。
見れば、自分も新しいこいのぼりと替え歌を考えて、歌い出したくなるこいのぼり絵本です。
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