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げんきにおよげこいのぼり(4歳~,絵本,行事)

作:今関信子 絵:福田岩緒 出版:教育画劇

ある日、男の子は先生からこいのぼりの昔話を聞きました。

それはまだ侍がいた頃の、遠い昔の話です。

のぼり旗から始まった、こいのぼりの誕生秘話が明かされます。

目次

あらすじ

ある日、男の子あきらは、お兄ちゃんがこいのぼりの歌を替え歌しているのを聞きました。

その歌詞は、「屋根より低いこいのぼり」というもの。

あきらはお兄ちゃんに、歌詞が間違っていると言いました。

すると、お兄ちゃんは窓の外のこいのぼりを指さして、屋根より低いことを伝えました。

確かに、向かいのマンションにあるこいのぼりは、どれも小さいものばかりです。

次の日、あきらはお兄ちゃんとの出来事を、幼稚園の先生に伝えました。

話を聞いた先生は、あきらくんにどうしてこいのぼりを立てるのか教えてくれました。

それは大昔の日本でのことです。

江戸の町を歩いていたさむらいが、「旗のぼりを立ててくれ」と泣く子どもの声を聞きました。

けれど、旗のぼりはさむらいの家だけが立てるもの。

庶民の家では立てることができないものでした。

旗のぼりは、さむらいが戦をする時に、気持ちを奮い立たせるものだったからです。

しかし、泣き声を聞いたさむらいは、なんとか願いを叶えてやれないものかと考えました。

そこで思いついたのがコイ。

コイは若葉の季節に川を上り始め、岩があれば飛び越して、滝があれば登ります。

しかも、滝を登りきると、龍になるとまで言われている魚です。

さむらいはさっそく2枚の布に大きなコイの絵を描くと、染物屋に持っていきました。

コイの絵が染め上がると、染物屋に手伝ってもらい、2枚の布を縫い合わせ、口に竹の輪を縫い込みます。

そして、コイをくくりつけた竹を立てると、コイは空を泳ぎ始めたのでした。

元気に泳ぐこいのぼりを見て、町の子どもたちがよってきました。

その中には、さむらいが聞いた泣き声の主もいます。

さむらいは、こいのぼりが子どもたちののぼりだと伝え、

「邪魔者にひるまず、コイに負けないよう大きくなれよ」

と、願いを込めたのでした。

先生の話を聞いたあきらや、幼稚園の子どもたちは、こいのぼりが作りたくなりました。

子どもたちは、笑っている楽しそうなこいのぼりを作ることに。

こいのぼりが出来上がると、先生がミシンを持ってきて、縫い合わせてくれました。

ところがここで問題が起こりました。

作ったこいのぼりが大きすぎて、飾る場所がないのです。

先生はしばらく考えたあと、いいことを思いつきました。

数日後、先生と子どもたち、そしてこいのぼりは幼稚園バスに乗り込みました。

バスはどんどん走り、町から離れ、大きな川へ。

その川の上には何本ものロープにたくさんのこいのぼりが飾られ、元気に空を泳いでいます。

そこは色々なところからこいのぼりが集まってくる場所なのだそう。

村の人たちが手伝ってくれ、あきらたちのこいのぼりも空を泳ぎ始めました。

一仕事終え、すっかりお腹の空いた子どもたち。

村の人から、たけのこご飯や柏餅をごちそうになり、作ったこいのぼりのように、いっぱい遊んで帰ったのでした。

おしまい!

『げんきにおよげこいのぼり』の素敵なところ

  • わかりやすく丁寧に語られるこいのぼり誕生秘話
  • 子どもたちの作りたい気持ちがひしひしと伝わるこいのぼり作り
  • 大きすぎるこいのぼりを飾る特別な場所

わかりやすく丁寧に語られるこいのぼり誕生秘話

この絵本では、先生が昔話をしてくれるという形で、こいのぼりの誕生秘話が語られます。

その誕生秘話の内容が、物語の一部とは思えないほど丁寧でわかりやすいのが、この絵本のすごいところ。

誕生秘話だけで、1冊の絵本ができてしまうくらい、しっかりと描かれているのです。

  • こいのぼりの原点が旗のぼりであったこと。
  • 旗のぼりがどういうものか?
  • なんでコイにしたのか?
  • こいのぼりをどうやって作ったのか?
  • こいのぼりにはどんな願いがこめられているか?

これらすべてが、さむらいの物語として語られるからおもしろい。

まるで、桃太郎などの昔話を見ているような感覚で、こいのぼりの誕生秘話を詳しく知ることができるのです。

この、1冊の絵本になっていてもおかしくない、ボリューム感とおもしろさで、こいのぼりの誕生秘話を知ることができるのが、この絵本のとてもすごいところです。

最後の場面で、さらっと柏餅の説明をしてくれるのも、地味にありがたいところですね。

子どもたちの作りたい気持ちがひしひしと伝わるこいのぼり作り

こうして、誕生秘話を聞いただけで、大満足なこの絵本。

ですが、誕生秘話は第1部に過ぎません。

誕生秘話を見てからが、この絵本の本番になっているから驚きです。

お兄ちゃんの替え歌に落ち込んでいたあきらくんでしたが、先生の話を聞いていたらそんな悩みは吹き飛びました。

あきらくんも幼稚園のみんなも、こいのぼりが作りたくてウズウズ。

幼稚園でのこいのぼり作りが始まるのです。

このこいのぼり作りもまた、絵本1冊分くらいのボリューム感で描かれるからすごい。

子どもたちの表情と、アイディアを出し合うやり取りから、こいのぼりに夢中な様子がひしひしと伝わってくるこいのぼり作り。

さらに、作ったこいのぼりが大きすぎて飾れないという、驚きの展開まで待っています。

子どもたちも、出来上がったこいのぼりを見て、

すっごい大きいこいのぼり!

でも、飾れるかな・・・?

外なら大丈夫じゃない?

と、物語と見事にシンクロ。

幼稚園のこいのぼり作りに、すっかり入り込んでいるようでした。

このこいのぼり作りの熱気は、前半の誕生秘話があったからこそ盛り上がり、伝わってくるものなのだと思います。

長い絵本ならではの丁寧な心情の変化の描き方が、このこいのぼり作りへの熱気を生み出し、感じさせてくれるのでしょう。

この、こいのぼり誕生秘話から自然につながる、こいのぼり作りの熱気がひしひしと見ている人に伝わってくる、丁寧な物語構成と描き方も、この絵本のとてもおもしろく見ごたえのあるところです。

大きすぎるこいのぼりを飾る特別な場所

さて、こいのぼりが完成し終わるかと思われたこの絵本。

しかし、物語は続きます。

子どもたちが心配した通り、こいのぼりが大きすぎて幼稚園に飾ることができなかったのです。

そこで、幼稚園バスで遠くまでこいのぼりを飾りにいくことに。

ここでの、遠足のようなワクワク感もこの絵本のたまらなくおもしろいところ

この絵本は本当に、次から次へとワクワクする展開が続きます。

子どもたちも、

どこいくんだろう?

あ!こいのぼりだ!

すごいいっぱいあるよ!

と、一緒にワクワク。

川の上にこいのぼりを見つけた時の反応も、絵本の中の子どもたちと一緒だったのがおもしろいところです。

着いたところは、こいのぼりがたくさん飾られているまさに特別な場所。

そこに、自分たちが作ったこいのぼりを飾るというのだから、本当に特別な体験です。

しかも、どれが自分たちのこいのぼりか人目でわかる特徴があるのも特別。

あ!あれが作ったこいのぼりだ!

笑ってるからすぐわかるね!

と、子どもたちも特製こいのぼりを見つけて喜んでいました。

さらに、飾ったあとは、村の人たちがたけのこご飯や柏餅を振る舞ってくれるという、これまた特別な体験が。

遠足よりももっとワクワクするこいのぼり飾りの旅となりました。

この、バスに乗り特別な場所にいくという、遠足のようなこいのぼりを飾り付けるための旅も、この絵本のワクワクが止まらない、特別な楽しさを感じられるところです。

きっと、最後の場面を見たら、自分たちをこいのぼりと重ね合わせ、よりこいのぼりに愛着が湧くことでしょう。

二言まとめ

旗のぼりからこいのぼりになるという誕生秘話を、見ていて楽しい昔話で伝えてくれる。

昔のこいのぼり作りから、幼稚園のこいのぼり作りへと繋がる、長い絵本だからこその壮大なおもしろさを感じられるこいのぼり絵本です。

登る保育士ホイクライマー
保育士
絵本大好きなクライミングが趣味の保育士/保育士歴12年/クライミング歴10年
年間200冊以上読み聞かせをしてきた経験を元に、絵本の紹介をしています。
専門書や学術書を読むのも好き!
その中から、日々の保育や子育てに役立ちそうな知識も、深め・濃いめ・具体例多めで、紹介しています。
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