作:西本鶏介 絵:長浜宏 出版:佼成出版社
おじいちゃんのもとに、いつも話を聞きに来る子ダヌキたち。
話の中で、こどもの日に孫の幼稚園へ連れて行ってもらうことになりました。
しかし、こどもの日の前日、おじいちゃんが入院することになってしまい・・・。
あらすじ
男の子だいすけくんの家は、海の見える山の上にありました。
おとうさん、おかあさん、おじいちゃんとの4人ぐらし。
幼稚園バスが山の下まで来るので、いつもおじいちゃんが山道を送り迎えしてくれました。
幼稚園からの帰り道。
おじいちゃんがクッキーを出してくれ、草の上に座りながら一緒に食べます。
おじいちゃんは、だいすけくんがその日にあったことを話すと、嬉しそうに笑っていました。
夜になると、3匹の山の子ダヌキたちが遊びにきます。
子ダヌキたちは、おじいちゃんとだいすけくんの前に座ると、お話を聞きたがりました。
おじいちゃんがお話を始めます。
おじいちゃんが話すのは、いつもだいすけくんのこと。
だいすけくんの優しさや強さなど、だいすけくんの成長を子ダヌキに聞かせます。
子ダヌキたちが褒めてくれるので、だいすけくんは恥ずかしくなり下を向いてしまいました。
おじいちゃんの話を聞いて、子ダヌキたちも幼稚園に行きたくなりました。
それを聞いたおじいちゃんは、こどもの日に幼稚園まで連れて行ってあげることを約束。
子ダヌキたちは大喜びで、人間の子どもに化ける練習に励んだのでした。
こどもの日の前日。
だいすけくんは幼稚園で、紙のこいのぼりを作りました。
作ったこいのぼりを持って、帰りのバスを降りると、迎えに来たのはおじいちゃんではなくお父さん。
お父さんは怖い顔で「おじいちゃんが入院した」と言いました。
だいすけくんが幼稚園へ出かけたあと、急に具合が悪くなり、海辺の病院へ運ばれたのだそう。
お母さんが病院へついていき、夜になるとお父さんも病院へ行ってしまいました。
1人家に残りしょんぼりするだいすけくん。
そこに、子ダヌキたちが遊びにきました。
おじいちゃんの話を聞くと、子ダヌキたちはだいすけくんを励ましてくれました。
子ダヌキたちは、だいすけくんの作ったこいのぼりを見つけると、明日のこどもの日に空に上げようと言ってくれました。
べそをかいていただいすけくんも頷きました。
次の日はとてもいい天気。
朝早く、子ダヌキたちとだいすけくんは、庭の柿の木に登りこいのぼりを結びます。
すると、だいすけくんのこいのぼりが元気に泳ぎ始めました。
その時、子ダヌキたちもなにかを始めました。
両手でしっかり枝につかまり呪文を唱えると・・・
なんと、タヌキたちがこいのぼりに化けたではありませんか。
だいすけくんが大声でおじいちゃんを呼ぶと、少し元気になったおじいちゃんが、病院の窓から顔を出しました。
こいのぼりに気づいたおじいちゃんでしたが、こいのぼりから出ているタヌキのしっぽには気づいていないみたいですよ。

おしまい!
『こだぬきのこいのぼり』の素敵なところ
- 楽しく優しい大好きなおじいちゃん
- おじいちゃんのために頑張るだいすけくんと子ダヌキたち
- ほっと嬉しい最後のページ
楽しく優しい大好きなおじいちゃん
この絵本の素敵なところは、楽しくて優しいおじいちゃんにほっとできるところでしょう。
幼稚園の帰りには、おやつを片手に、その日の話を嬉しそうに聞いてくれるおじいちゃん。
子ダヌキたちにも、いつもだいすけくんの話をしていて、
「だいすけは優しくなったぞ。風呂に入る時は、わしの背中を流してくれる」
「それにとっても強くなったぞ。かけっこだって相撲だって誰にも負けやせん。幼稚園で一番だ」
と、孫のことを大好きな気持ちがそこかしこから伝わってきます。
また、おじいちゃんの表情が、いつも笑顔でとても楽しそうなのも、ほっとできるポイントでしょう。
そりゃ、タヌキたちも寄ってきます。
いつも一緒にいてくれて、なんでも話を聞いてくれ、常に自分の味方でいてくれるおじいちゃん。
そんな理想のおじいちゃんとの、愛情をたっぷり感じるやりとりに浸り、ほっとできるのがこの絵本のとても素敵で暖かいところです。
見ていると、おじいちゃんの声が聞きたくなってしまいますね。
おじいちゃんのために頑張るだいすけくんと子ダヌキたち
そんな、いつもだいすけくんと子ダヌキたちに愛情を注いでくれるおじいちゃん。
そのおじいちゃんに、入院するという急展開が訪れます。
心配で泣き出すだいすけくん。
心配だけど、励ましてくれる子ダヌキたち。
見ている子どもたちも、

おじいちゃん大丈夫かな・・・



帰ってきてほしいね・・・
と、だいすけくんや子ダヌキたちと同じ気持ちです。
けれど、不安で心配な気持ちでいっぱいの中、だいすけくんと子ダヌキたちは自分にできることを始めます。
おじいちゃんのために、こいのぼりを飾るのです。
この、いつも自分たちのためになんでもしてくれるおじいちゃんのため、今回は自分たちが頑張るという展開がこの絵本の本当に素敵なところ。
だいすけくんや子ダヌキたちの大きな成長を感じるところとなっています。
しかも、子ダヌキがこいのぼりに化けるという素敵なサプライズつき。
ただ励まし手伝うだけじゃなく、こどもの日に幼稚園へ行くため練習していた変化の術をおじいちゃんのために使うという、子ダヌキたちのしっかりとした物語もきちんと描かれているのです。
これには、心配そうだった子どもたちも、



こいのぼりになった!



しっぽ見えてるね!
と、思わず笑顔に。
きっと、病院からこいのぼりを見たおじいちゃんも、とても元気づけられたことでしょう。
ほっと嬉しい最後のページ
さて、こうしておじいちゃんにも気づいてもらえ、大成功しただいすけくんたちの作戦。
絵本の物語はこれで終わるのですが、最後のページにその後の光景が描かれます。
文章などはなく、絵だけで表現された最後のページ。
でも、おじいちゃんやだいすけくんたちが、その後どうなったかを感じ取るには十分です。
この最後のページに描かれた、明るくて、嬉しくて、幸せな絵も、この絵本のとても素敵なところです。
この絵を見たとたん、子どもたちの表情もパッと明るくなり、



おじいちゃん、元気になったんだ!



きっと今から幼稚園行くんだよ!
と、安心感と嬉しさが爆発した様子。
この最後のページによって、心から安心できたようでした。
ぜひ、おじいちゃん、だいすけくん、子ダヌキたちの満面の笑顔と合わせて、子どもたちの嬉しそうな笑顔も見てあげてください。
二言まとめ
優しく明るい理想のおじいちゃんとの愛情あふれるやり取りに、心温まり満たされる。
そんなおじいちゃんの入院という緊急事態に、こいのぼり大作戦で元気付けようとするだいすけくんたちを、心から応援したくなるドキドキのこいのぼり絵本です。
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