作:ひろかわさえこ 出版:偕成社
冷蔵庫の奥底に忘れ去られた野菜。
ついうっかり腐らせてしまうことがあると思います。
でも、野菜たちにしてみれば、うっかりではすみません。
自分の人生がかかっているのですから。
あらすじ
人が寝静まった真夜中。
冷蔵庫から痛んだキュウリが出てきました。
続いて、ゴボウとトマトも出てきます。
段ボールの中からは芽が生え放題のジャガイモたちが出てきました。
みんな食べられずに忘れられた野菜たち。
悲しくて、悔しくて仕方ありませんでした。
今夜、恵まれない野菜の集まりがあるという話を聞き、みんなでそこへ行ってみることにしました。
道へ出ると、他の家からも野菜たちが出てきました。
集まった野菜たちは人間に復讐しようと大騒ぎです。
その盛り上がりが最高潮に達した時でした。
お寺の鐘が一つなったのです。
そして「これこれ」という小さな声。
声の先を見てみると、そこにはみみず和尚と、ダンゴムシの小僧さんが立っていました。
怒っている野菜に和尚さんは言いました。
「忙しいとつい忘れてしまう。恨んで悪さをすれば、心が腐ってしまう。心が腐ってしまうと美味しい野菜には生まれ変われない」と。
それを聞いた野菜たちはしんみりと聞き入りました。
そして、「ぼくらは一体どうすればいいのでしょう?」と聞きました。
そんな野菜たちに和尚は言います。
「まだまだ役に立つぞ」と。
一体和尚は腐った野菜たちをどうするつもりなのでしょうか。
『ぞろりぞろりとやさいがね』の素敵なところ
- 腐ってしまった野菜たちの生の声が聞ける
- 腐った野菜たちの姿がとてもリアル
- 命のリサイクルがわかりやすく描かれている
この絵本では美味しく食べてもらいたかったのに、腐ってしまった野菜たちの痛々しい本音を聞くことが出来ます。
「元々はピカピカのツルツルだったのに・・・」
「最初はシャキッとしていたのに・・・」
「美味しく食べられるたびに生まれてきた!」
と、悲しみや怒りの表情を浮かべながら訴える野菜たち。
その野菜たちの絵もまた痛々しいことこの上ない。
ジャガイモの伸び放題の芽。
トマトのしわしわ感。
花の咲いたブロッコリー。
芽が伸びすぎて、ネギのようになった玉ねぎ。
野菜の傷み方が物凄くリアルに描かれています。
子どもたちもその姿には「かわいそう・・・」と言葉を失ってしまいます。
そんな野菜たちですが、捨てられる以外にも残された道がありました。
それはまさに命のリサイクルです。
食べられなくなったものにも、まだ出来る仕事があることや、無駄にはならないことを教えてくれます。
腐らせないように、しっかり食べてあげること。
そして、腐らせてしまったとしてもそれを無駄にしないことを通して、命の大切さを感じさせてくれるお話です。
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