作:いしづちひろ 絵:きたむらじん 出版:くもん出版
電車に乗った男の子。
窓から見えるものみんなに「バイバーイ」と手を振ります。
すると、山も、海も、電柱もみんな手を振り返してくれました。
電車から降りたら、もちろん電車にも・・・
あらすじ
男の子が、お母さんと電車に乗ります。
電車の窓から、外の景色を見ている男の子。
窓の外では、駅員さんが指さし確認しています。
確認が終わり、電車が出発。
男の子は、駅員さんに「バイバーイ」と手を振ります。
しばらく行くと、窓の外に自転車で道路を走る人が見えました。
男の子が、「バイバーイ」と手を降ると・・・
自転車の人はこちらを見て笑ってくれました。
今度は、高い山が見えてきました。
男の子が「バイバーイ」と手を降ると・・・
山も手を振り返してくれました。
男の子が手を振ると、電柱も、海も手を振り返してくれます。
こうして、男の子が窓の外を見ているうちに、電車は駅につきました。
男の子は走っていく電車に「バイバーイ」と手を振ります。
そして、
「乗せてくれてありがとう」
とお辞儀をしたのでした。

おしまい!
『でんしゃからバイバーイ』の素敵なところ
- 本当に電車に乗っている気分になれる車窓からの景色
- 「バイバーイ」と手を振る楽しさと反応がある嬉しさ
- きちんとお辞儀をしてお礼を伝える慎ましさ
本当に電車に乗っている気分になれる車窓からの景色
この絵本のとても楽しいところは、電車から見る車窓からの景色です。
男の子が電車に乗り込み窓の外を見始めると、視点が男の子の視点へと変わります。
目の前いっぱいに広がり、次々と移り変わっていく景色。
その中で、自転車をこぐ人や、高い山、たくさん並んだ電柱、輝く海など、気になるものが次々と目の前に現れます。
その光景はまさしく、電車の中から見る景色そのもの。
子どもたちも、景色が移り変わるたび、

チリンチリン!(自転車)



おっきいお山だよ!
と大興奮。
まさに、電車から窓の外を見て喜ぶ子どもそのものでした。
こんな風に、この絵本を見ていると、いつの間にか自分が本当に電車に乗っていて、靴を脱ぎ、座席の上に膝立ちになって、窓の外を眺めている気分になるのです。
この、子ども視点で描き出された車窓からの景色を見て、本当に自分が電車に乗っているかのような楽しさやワクワク感を味わえるのが、この絵本のとても素敵なところです。
「バイバーイ」と手を振る楽しさと反応がある嬉しさ
そんな車窓からの景色を見ていたら、子どもたちがついやってみたくなることがあります。
それが、



バイバーイ
と、見つけたものに手を降ること。
通り過ぎていくものを見つけたら、「バイバーイ」と手を振りたくなるのが子どもというもの。
日々の生活でも、バスやおまわりさんなど、身近に感じるものを見つけたら、「バイバーイ」と手を振っていることでしょう。
この絵本では、そんな「バイバーイ」をしたいという願いが、思う存分叶います。
自転車の人や山や電柱や海など、おもしろそうなものには全部「バイバーイ」と手を振る男の子。
見ている子どもたちも一緒に、



バイバーイ!
と手を振ります。
この姿がなんともかわいい・・・。
さらに、この絵本の楽しさは、手を降るだけでは終わりません。
手を振った相手が、なにかしらの反応を返してくれるのです。
駅員さんや自転車の人なら、こちらを見て笑いかけてくれたり、
山や電柱や海は、こちらに手を振り返してくれ、
電車は笑いかけてくれる。
と、それぞれ違う反応だけど、みんな自分に気づいてくれていることが伝わってきます。
これは、町でバスの運転手さんが手を振り返してくれたり、おまわりさんが敬礼を返してくれる嬉しさと同じもの。



こっち見てくれた!



おやまもバイバイしてるよ!
と、子どもたちも相手が反応してくれたことへ、嬉しそうな反応を返していました。
そんな自分の「バイバーイ」に反応してもらえる、目がキラキラしてしまうような嬉しさを、絵本を通して味わうことができるのも、この絵本のとても素敵で幸せなところとなっています。
きちんとお辞儀をしてお礼を伝える慎ましさ
さて、こうして「バイバーイ」を思い切り楽しんだ子どもたちと男の子。
最後は電車から降り、走っていく電車に最後の「バイバーイ」します。
もちろん、子どもたちもここ一番の



バイバーイ!!!
で手を振ります。
普通はここで終わりますが、この絵本では最後に素敵な1ページが残されています。
それが、
「のせてくれてありがとう」
という、男の子のお礼とお辞儀。
これが、本当に本当に素敵な場面となっています。
電車に乗る楽しさはみんな味わいますが、電車が自分たちを乗せてくれていることへのありがたさには、気づかないことが多いもの。
そんな、当たり前になってしまっているありがたさに、とてもシンプルな言葉と行動で気づかせてくれるのです。
これを見たら、今度電車やバスに乗った時に、「バイバーイ」だけでなく、「乗せてくれてありがとう」と言いたくなりますよね。
大人も子どもも。
この、慎ましい男の子のお礼とお辞儀を見て、当たり前にある身近なものに、しっかりとお礼を伝えたくなるのも、この絵本のとてもとても素敵で上品なところです。
二言まとめ
自分目線での車窓からの景色に、本当に電車に乗って「バイバーイ」と手を振っている気分になれる。
「バイバーイ」と手を振るだけでなく、「のせてくれてありがとう」とお礼とお辞儀もしたくなる、楽しく慎ましい電車絵本です。
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