作:どいかや 出版:アリス館
自転車に乗っている2人の女の子チリとチリリ。
森の中を走っていると、喫茶店やパン屋さん、ホテルへと行き着きます。
どのお店も、どんぐりコーヒー、くるみパンのいちごジャムサンドなど、森の中ならではの美味しそうなものばかり。
素敵な自転車の旅に、どこまでも走りたくなる絵本です。
あらすじ
2人の女の子チリとチリリは、早起きををしたある日、自転車で出かけることにしました。
2人が森の中を走っていると喫茶店がありました。
中に入ると、色々な大きさのテーブルやイスがあり、2人はちょうどよい大きさの席に座りました。
すると、まだ注文していないのに、動物の店員さんが飲み物を運んできます。
その飲み物はすみれティー。
2人の席の奥にある出窓の席のハチさんたちの飲み物でした。
2人は、どんぐりコーヒーと、れんげティーを飲みました。
飲み物を楽しむと、2人はまた自転車を走らせました。
お腹が空いてきた頃に見つけたのは、タヌキのサンドイッチ屋さん。
色々なパンとジャムが置いてあります。
そこへ、ウサギさんとクマさんがやってきてパンを買っていきました。
クマさんははちみつパンのくわの実ジャムサンド。
ウサギさんは、にんじんパンのゆずジャムサンド。
チリとチリリはくるみパンのいちごジャムサンドと、きな粉パンのくりジャムサンドを買いました。
2人は、池のほとりでサンドイッチを食べて休憩です。
水遊びをし、昼寝をしたら、また自転車を走らせます。
どんどん自転車を走らせ、おひさまが沈み始めた頃、森のホテルを見つけました。
中に入ると、色々な形の鍵が置いてあり、色々な大きさのドアがあります。
シカの案内人は2人をちょどよいドアの部屋に案内してくれました。
部屋の中にはこれまた、2人にちょうどよいベッドが2つ。
シカは、2人にもうすぐ森の演奏会が始まることを教えてくれました。
ちょうどその時、窓の外から音楽が聞こえてきます。
2人が窓を開けてみると・・・。

おしまい!
『チリとチリリ』の素敵なところ
- 自転車の旅で出会うオシャレで魅力的なお店と食べ物たち
- すべてがちょうどいい心地よいピッタリ感
- 絵本の中で語られない余白に想像がふくらむ
自転車の旅で出会うオシャレで魅力的なお店と食べ物と演奏会
この絵本のなによりワクワクするところは、様々なものと出会う自転車の旅でしょう。
喫茶店、サンドイッチ屋さん、ホテル・・・どれも、オシャレで魅力的です。
店の前に来ただけで、絶対に入りたくなってしまうお店ばかりです。
さらには、お店の内装や出てくるものも、森の中ならではの落ち着いた華やかさで素敵。
喫茶店なら、オシャレなイスとテーブルの席から、丸太でできた大きなイスとテーブルの席まで、すべての席が違う形をしていて、席ごとに違う花が飾られています。
サンドイッチ屋さんなら、食パン、コッペパン、クロワッサンなど色々な形のパンに加え、色とりどりのジャムが並んで選べるように。
パンとジャムの組み合わせで、自分だけのサンドイッチを作れるという、夢のようなお店なのです。
もちろん、そこで出てくる飲み物や食べ物もとても魅力的。
どんぐり型でフタがどんぐりの帽子になっているどんぐりコーヒーはとてもかわいく、
透明のカップに入ったピンク色のレンゲティーには、小さなレンゲの花が浮かびまるでアート作品のよう。
もちろん、サンドイッチもジャムたっぷりで、はちみつパンの染み込みっぷりは思わずよだれが出そうなほどです。
子どもたちも、

れんげティー、かわいいから飲みたいな~



はちみつパン、甘くてめっちゃおいしそう!
と、すっかり魅了されているようでした。
こんな魅力的なお店や食べ物に出会える自転車の旅にワクワクしないはずがありません。
しかも、子どもたちに身近な自転車で行けてしまうのだからなおさらです。
チリとチリリが気持ちよさそうに自転車を走らせる姿に、自分も自転車をどこまでも走らせたくなってきます。
この、素敵な出会いが盛りだくさんのどこまでもいける自転車旅に、自分も自転車を走らせて旅に出たくなってしまうところが、この絵本のとても素敵でワクワクするところです。
すべてがちょうどいい心地よいピッタリ感
そんな、チリとチリリの自転車旅にはもう1つ特徴的なところがあります。
その特徴的なところとは、ちょうどいいピッタリ感です。
この絵本に出てくるものは、とても多様性に富んでいます。
きっと、森の中という、多種多様な生き物が住んでいる場所にあるからなのでしょう。
様々な形と大きさの席やホテルの部屋。
選択肢が豊富な飲み物や食べ物などが用意されています。
その中で、チリとチリリはいつもちょうどいい場所やものを選んだり、案内されていきます。
ピッタリなイスとテーブルの席につき、
ピッタリな大きさのドアの部屋に入ると、ピッタリな大きさのベッドがあります。
注文するものも、自分にぴったりなものを選びます。
これは、チリとチリリだけでなく、他の生き物にも言えること。
ミツバチさんたちは、ミツバチさんにピッタリな席と飲み物。
クマさんとウサギさんには、はちみつパンとにんじんパンというピッタリなパンのチョイスなど、全部がピッタリしています。
また、お店だけじゃなく、自転車の旅自体もピッタリがたくさん散りばめられています。
そもそも自転車というのが、チリとチリリにピッタリなサイズ感。
お腹が空いた頃にサンドイッチ屋さんに出会ったり、
日が暮れた頃にホテルを見つけたり、
タイミングもピッタリです。
休憩場所の池のほとりもサンドイッチを食べ、水遊びで汗を流し、木陰で昼寝をするという、自転車から降りて休憩するには気持ちよさそうでピッタリの場所。
こんな風に、見ているうえですべてが心地よく進んでいきます。
すべてがピッタリとスムーズに進んでいく心地よさは、まるで風を切って自転車を走らせているような心地よさのよう。
この、スイスイと進んでいくような、すべてがピッタリとはまって気持ちいい、物語と自転車の進み心地もこの絵本のとても素敵なところです。
絵本の中で語られない余白に想像がふくらむ
さて、こんな風にこの絵本の中のお店では、多種多様な選択肢が用意されています。
ですが、物語の中で選ばれるものはほんの少しだけ。
チリとチリリや、そのそばにいた生きものが選んだもの以外は、語られずに終わります。
だからこそ、語られなかったものに想像がふくらむのです。
喫茶店の大きな丸太の席や、小さな◯と△と□の席、観葉樹の近くにあるものすごく小さな席など魅力的な席を見て、



あの大きいのは、クマさんの席だよ!



小さい席はアリさんがくるんじゃない?
サンドイッチ屋さんのパン屋、色とりどりのジャムを見て、



クロワッサンにいちごジャムがいい!



あの青いジャムは何味なんだろう?
ホテルの様々な大きさのドアを見て、



小さいのはきっとネズミだね!



大きいのはゾウさんじゃない!?
と、物語の中では使われないものを見て、どんどん想像が広がります。
絵本の中で出てくるものすべてが、一つ一つ丁寧に魅力的に描かれているからこそなのでしょう。
物語の世界により深く入り込み、物語の外で起こっていることまで気になってしまうのです。
この、物語だけでなく、絵本の中に描かれるものを見て描かれていないものを想像する楽しさが味わえるのも、この絵本のとても素敵なところです。
二言まとめ
自転車を走らせるたび出会う、オシャレで魅力的なお店にワクワクさせられる。
どこに行っても、なにをしても、ピッタリと心地よく進んでいく自転車の旅を見て、自分も自転車でこぎ出したくなる絵本です。
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