作・絵:やなせ・たかし 出版:フレーベル館
みんな知っているあんぱんまん。
でも、このあんぱんまんはそのもっともっと昔の話。
まだ、バタコさんもチーズもいない、ジャムおじさんにも名前がなかったころのお話です。
あらすじ
広い砂漠の真ん中で、お腹を空かせて今にも死んでしまいそうな旅人がいました。
その時、空から不思議な人が飛んできました。
その人はいきなり言いました。
「僕の顔を食べなさい」と。
旅人は「そんな恐ろしいこと出来ません」と断りました。
しかし、その人はあんぱんまんと名乗り、その顔は特別美味しいと言うのです。
男は恐る恐る食べてみました。
するとあまりに美味しくて、顔を半分食べてしまいました。
旅人が元気になると、あんぱんまんは空へと飛んでいきました。
夕暮れ時、あんぱんまんは森の中へと降りていきました。
そこには迷子の男の子がいました。
男の子が空腹と恐怖で泣いていると、あんぱんまんが現れました。
男の子を背中に乗せて飛びながら、あんぱんまんは顔を食べさせました。
すっかり顔がなくなってしまいましたが、男の子を無事家に送り届けました。
急に天気が悪くなり、雨が降り、雷が鳴ってきました。
あんぱんまんは町はずれの大きな煙突に墜落してしまいました。
それはパン工場の煙突でした。
そこにいたパン作りのおじさんは、ニコニコしながら新しい顔を作ってあげると言いました。
あんぱんまんは新しい顔を作ってもらって、元気を取り戻せるのでしょうか。
『あんぱんまん』の素敵なところ
- 『それいけアンパンマン』とは少し違うあんぱんまん
- 今のアンパンマンを知っていると、色々な違いを楽しめる
- 意外と知らない作者のあんぱんまんへの想いが書かれている
今、テレビや絵本で展開している『それいけアンパンマン』とは少し違う初代のあんぱんまん。
そこにはバタコさんやチーズは出てきません。
ジャムおじさんも名前がなく「パン工場のおじさん」です。
バイキンマンもいないので、誰かがいたずらされることもありません。
でも、餓えている人はいます。
そして、餓えている人に「僕の顔をお食べ」と、顔を食べさせ笑顔にさせる姿はやっぱりみんなの知っているあんぱんまんです。
その本質が変わらないからか、今のアンパンマンに馴染んだ子どもたちも、違和感なく見ていました。
そんな変わらぬ魅力のあんぱんまんですが、子どもたちは色々な違いに気付きます。
マントがつぎはぎだったり、
胸のマークがニコニコマークじゃなかったり、
たまに頭身が人間サイズに上がったり。
人間サイズのあんぱんまんはちょっと不気味で、子どもたちから「ちょっと怖いね・・・」と言われていました。
でも、マントのつぎはぎなどには作者の想いが込められていたりもするのです。
絵本が終わった後に「あんぱんまんについて」という文章がついています。
そこにはあんぱんまんというヒーローへの想いや、その姿の理由などが書かれています。
きっと知らない人も多いのではないかと思います。
国民的ヒーローのアンパンマン。
その源泉にある、あんぱんまんのエッセンスが凝縮された絵本です。
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