文:内田麟太郎 絵:高畠純 出版:文溪堂
ワニのお父さんが、こいのぼりを買ってきてくれました。
さっそく、空に上げるととても気持ちよさそうです。
それを見ていたお父さんも、こいのぼりの真似をしてワニのぼりを始めました。
すると、ネコもイヌも真似をしだして・・・。
あらすじ
あるところに、お父さん、お母さん、ワニぼうのワニの3人家族が暮らしていました。
ワニのお父さんが、息子のワニぼうのためにこいのぼりを1匹買ってきました。
さっそく空に上げましたが、1匹では寂しそう。
次の日、お父さんが真鯉と緋鯉も買ってきてくれ、こいのぼりを上げると、こいのぼりもワニぼうも嬉しそうです。
お父さんはしばらく、こいのぼりの気持ちよさそうに泳ぐ様子を羨ましそうに見ていました。
・・・が、ワニぼうが気付くと、お父さんが竿に自分を結び空を泳いでいるではありませんか。
ワニぼうがなにをしているか聞くと、お父さんは「ワニのぼり」だと答えました。
あまりに気持ちよさそうなので、ワニぼうもワニのぼりをすることに。
2人の楽しそうな姿を見て、お母さんもワニのぼりを始めました。
こうして空を泳いでいると、春風がとてもおいしいことに気付きます。
3人は、春風をお腹いっぱい吸い込みました。
と、気付けば、となりでネコたちも、ネコのぼりをしていました。
さらにそのとなりでは、イヌたちがイヌのぼりを。
鳥たちは、ワニ家族の上でのんびり一休みです。
今日は、5月5日の春風が1番おいしい日。
街中の動物たちが、動物のぼりをして、おいしい春風を楽しんでいるのでした。

おしまい!
『ワニぼうのこいのぼり』の素敵なところ
- ワニのぼりという予想外な発想に大笑い
- 5月5日は春風が1番おいしい日
- 見て楽しい、探して楽しい街いっぱいの動物のぼり
ワニのぼりという予想外な発想に大笑い
この絵本のなによりおもしろいところは、ワニの家族がこいのぼりになってしまうところでしょう。
しかも、最初に始めるのはお父さん。
羨ましそうにこいのぼりを見つめていると思ったら、ページをめくると当然のように空を泳いでいるのだから驚きです。

お父さんこいのぼりになっちゃったよ!



空飛んでる!
と、予想外過ぎるお父さんの姿に、友だちと顔を見合わせ驚きつつも大笑い。
さらに、ページをめくるごとに、ワニぼう→お母さんと増えていくのだからおもしろい。
普通は、「危ないから降りてきて」など、止めるものがいそうなものですが、みんなノリノリでワニのぼりになっていきます。
しかも、竿をくわえたり、手でしがみつくのではなく、口の先を紐で竿に縛り付けている姿がなんともシュール。
本人は楽しそうなのに、どこか罰ゲーム感が漂う結ばれ方をしています。
ただ、その縛られ方のおかげで、こいのぼり感は大幅アップ。
風にそよいでいる感じが、よく伝わってきて気持ちよさそうです。
この、お父さんを筆頭に、当たり前のようにワニのぼりになるという予想外の展開と、気持ちよさそうだけど奇抜すぎるビジュアルに、思わず大笑いしてしまうところが、この絵本のとてもおもしろいところです。
5月5日は春風が1番おいしい日
こうして、ワニのぼりになり、春風をお腹いっぱい楽しむワニの家族。
こいのぼりの真似をしたことで、春風がとてもおいしいことに気付いたのです。
実はこの春風が、この絵本のキーワードとなっています。
普通は、5月5日は子どもの健やかな成長を願うこどもの日ですが、
この絵本では、5月5日は春風が1番おいしい日。
行事などはまったく関係のない、特別な日なのです。
この春風が1番おいしい日というのは、なんと感性が刺激される表現なのでしょう。
だって、春風が1番おいしい日と言われたら、外に飛び出して春風をめいっぱい吸い込みたくなりますからね。
しかも、普段は無味無臭に感じている風も、いつもより味わい深くおいしいものになってしまうから魔法のよう。



ほんとだ!この風おいしい!



こーんなに食べちゃった!お腹ポンポン!
と、子どもたちも絵本を読んだあとで外に出ると、まっさきに春風を食べていました。
行事の説明をされるよりも、よほど直感的に5月5日という日やこいのぼりというものを身近に感じられることでしょう。
この、5月5日は春風が1番おいしい日という言葉と、ワニぼうたちがおいしそうに春風を吸い込む姿から、自分たちも春風を味わってみたくなってしまうところも、この絵本のとても素敵なところです。
見て楽しい、探して楽しい街いっぱいの動物のぼり
こんな春風が1番おいしい日には、ワニだけではなく、色々な動物たちも空にのぼり始めます。
おとなりさんのネコやイヌ、街中の動物たちが動物のぼりを始めるのです。
この街中に動物のぼりが泳ぐ景色が壮観で、見ているだけで賑やかでとても楽しいものになっているのも、この絵本のおもしろいところ。



キリンさんもいる!



ゾウさん重そうなのに飛んでるよ!



ウサギさん耳で持ってる!?
と、街中が動物のぼりでいっぱいなページを開いた途端、子どもたちの声が止まりません。
また、動物だけじゃなく、変わったものが混ざっているなど、遊び心も満載。
星のぼりや、タコのぼり、バナナのぼりに、洗濯物のぼりなど・・・
見つけたらツッコまざるを得ないものがさり気なく混ざっているのです。
もちろん子どもたちも、



バナナのぼりだ!?
と大笑いしながら、そのおもしろい発見を楽しみます。
この、眺めているだけでも賑やかで楽しいけれど、よく見ると発見と遊び心が詰まっていてさらに楽しい、街中にあがる動物のぼりも、この絵本のとても素敵で夢中で見入ってしまうところです。
ぜひ、お気に入りの動物のぼりを探してみてくださいね。
二言まとめ
ワニや動物たちが、こいのぼりの真似をして動物のぼりになってしまう姿に笑いが止まらない。
春の風をおいしそうに吸い込む姿と、5月5日は春風が1番おいしい日という言葉に、外に出て春風を思い切り吸い込みたくなるこいのぼり絵本です。
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