作:デイビッド・シャノン 訳:小川仁央 出版:評論社
降り出した雨に驚き騒ぐニワトリ。
その声に、ネコが怒り、イヌが吠え、お父さんがイヌを叱り・・・
と、その騒ぎはどんどん広がり街全体を巻き込む大騒ぎに。
いったいどうしたら収拾がつくの!?
あらすじ
土曜日の朝、雨が降り出した
外にいたニワトリたちは、落ちてくる雨粒に鳴き声をあげる。
ニワトリの鳴き声に、ネコがニワトリを威嚇する。
そのネコの唸り声に、イヌが吠えだした。
飼い主の父さんが、イヌを吠える犬を叱り、
寝ていた赤ん坊がお父さんの大声に、目を覚まして泣き出すと、
電話をしているお母さんが、静かにしてよと叫び出す。
家の騒ぎを聞きつけて、おまわりさんが戸を叩く。
でも、家の前に停めたパトカーが道をふさぎ、道路では大渋滞。
4台後ろのタクシーでは、お客さんが運転手に文句を言う。
タクシーの運転手がクラクションを鳴らすと、1台前のトラックのお兄さんが頭にきて、クラクションを鳴らし返した。
トラックのお兄さんも、八百屋にトマトを届けなくてはならず急いでいたのだ。
トラックの1台前のアイスクリーム販売車は、後ろから聞こえるクラクションの音に、売り声を高くした。
外の騒ぎを聞きつけたのは、美容師さんと床屋さん。
同時に店から出てきたものだから、2人はぶつかり言い争いに。
そこへ雨で仕事にならなくなったペンキ屋さんが、はしごを降りてきた。
持っていたペンキの缶が床屋さんの頭に当たり、2人での言い争いは3人になった。
床屋さんのとなりでは、パン屋さんが店内の雨漏りに慌てて、傘をさして外に飛び出す。
けれど、パン屋さんの持っていた傘が、ピザ屋さんの鼻を刺したからさあ大変。
怒鳴り合いが始まりました。
近くの道路では、男の子が溜まった水にボートを流して遊んでいる。
ボートを追いかけ走る男の子の水しぶきが、女の子にかかってしまい、女の子は泣き出してしまった。
八百屋さんがトマトが届かないことに怒って駆け出すと、ちょうどブティックから出てきた御婦人とぶつかった。
御婦人の持っていた荷物が果物台にぶちまけられて、果物台の果物が全部歩道に転がりだす。
おまわりさんがパトカーに戻ると、街中が大騒ぎになっていてビックリ。
・・・と、その時、突然降っていた雨がやみ、おひさまが顔を出し、空に大きな虹がかかった。
思わず、空を見上げる街の人。
すると、パン屋さんとピザ屋さんのケンカが収まり・・・。

おしまい!
『あめふりのおおさわぎ』の素敵なところ
- 雨降りの小さな騒ぎから始まった街を巻き込む大騒ぎ
- すべての繋がりがわかる、大騒ぎの街を見下ろした俯瞰図がおもしろい
- 晴れ間とともに、すべてがきれいに収まる結末の気持ちよさ
雨降りの小さな騒ぎから始まった街を巻き込む大騒ぎ
この絵本のなによりおもしろいところは、小さな騒ぎがどんどん大きくなりながら広がっていく、ハラハラとしたおもしろさでしょう。
最初は、雨が降ってきたことにニワトリが鳴くという、どこにでもあるちょっとした光景でした。
でも、それがネコ→イヌ→家族と広がるうちに、警察まで出てくる騒ぎに発展。
そして、パトカーが道をふさいでしまったことで、街中を巻き込んだ大騒ぎへと広がってしまいます。
この、目まぐるしくトラブルが連鎖していく様子が本当におもしろい。
ページをめくるたび、次々と新たなトラブルが起こるのです。
これには子どもたちも、

また!?



こっちでもケンカしてる!
と、ハラハラしつつも楽しそう。
まるで、ドタバタコメディを見ているようでした。
しかも、連鎖しているからこそのおもしろさが、このドタバタ劇の真骨頂。
八百屋のトマトがこないと怒る声に、



さっきのトラックが動かないからだ!
と、前のトラブルと後のトラブルが関連しているおもしろさに気付きます。
たくさんのトラブルすべてが繋がっているという、この絵本ならではのおもしろさを感じられることでしょう。
また、途中で忘れがちですが、きっかけがニワトリの声という小さな小さな出来事だったということに気付くと、この大騒ぎがとても滑稽なものに見えてくるのもおもしろいところ。
ほんの小さな出来事が大きな騒ぎを引き起こす、バタフライエフェクトのおもしろさを存分に味あわせてくれるのです。
この、小さな出来事から、ページをめくるたび騒ぎがどんどん広がっていく、ハラハラが止まらないけど笑ってしまうドタバタ劇の連鎖が、この絵本のとてもおもしろいところです。
すべての繋がりがわかる、大騒ぎの街を見下ろした俯瞰図がおもしろい
そんな街中を巻き込んだ大騒ぎですが、全部の騒ぎが起こったあとに、大騒ぎの街を俯瞰で見るページが挟まれます。
そこでは、これまでの騒ぎが一望でき、
道路にタクシーからパトカーまで並ぶ車
これまでの登場人物たちが歩道で言い争う姿
歩道に面して並ぶ、登場人物たちに関わりがあるお店
すべてが見開き1ページに描き出されています。
この大騒ぎな街の俯瞰を見ることで、これまでの流れを思い出すと同時に、トラブルの繋がりを再発見できます。
子どもたちも、



このお店となり通しだったんだね!



ブティックここにあったんだ!
それぞれの位置関係や、大騒ぎの全体像を再確認。
足りない情報を補完したりしていました。
中でもおもしろかったのは、



タクシーがクラクション鳴らして、トラックもクラクション鳴らして、アイスクリーム屋さんが・・・
と、これまでの物語を、俯瞰図から再構成している子。
指をさしながら、順番に物語でのできごとをなぞっていきます。
きっと、これまでのページで分割されていたできごとを、つなぎ合わせているのでしょう。
物語だけでも十分に流れや繋がりを理解できおもしろいのですが、この俯瞰図があることにより、その繋がりや全体像がさらにわかりやすくなっているのです。
なにより、街中を巻き込んだ大騒ぎのスケール感がより直感的に伝わってきます。
この、これまでの物語を1ページに詰め込んだ、まさに街中大騒ぎな俯瞰図も、この絵本のより物語のおもしろさを際立たせてくれているところです。
晴れ間とともに、すべてがきれいに収まる結末の気持ちよさ
さて、この街中を巻き込んだ大騒ぎ。
どうやっても収拾がつきそうにありません。
けれど、雨から始まった大騒ぎを終わらせられるものがたった1つありました。
それが晴れ渡った青空です。
しかも虹のおまけつき。
突然雨がやみ、一気に明るくなる空と町並み。
さっきまで眉間にシワが寄っていた街の人々も、晴れた空を見上げると、思わず頬が緩んでしまいます。
ここから徐々に騒ぎが収まっていくのです。
そして、この騒ぎの収拾の仕方が、なんともこの絵本らしいところも、大きな見どころとなっているので見逃せません。
ページをめくるたび、騒ぎが大きくなっていたこの絵本は、ページをめくるたび騒ぎが収まっていきます。
しかもトラブルが解決する中でおもしろいのは、それぞれが仲直りするだけじゃなく、近くで起こった別のトラブルも巻き込んで解決していくところ。
床屋さんと美容師さんとペンキ屋さんのケンカでは、床屋さんとペンキ屋さんが仲直りし、ペンキ屋さんが床屋さんでヒゲを剃ってもらうことに。
このケンカの目の前にはタクシーが停まっていたのですが、文句を言っていたお客さんは予定をずらことにしたので時間に余裕ができ、美容院で髪を切ってもらうことにしたのです。
しかも、タクシーが空いたので、ブティックで買い物をした御婦人がそのタクシーに乗り込むことに。
こんな風に、トラブル同士が繋がって、全部きれいに収まるところへ収まっていくのが見ていてとても気持ちいい。
これまで、なにをしてもうまくいかなかった街の様子が、嘘のようになにをやってもきれいに収まります。
その騒ぎが収まっていく様子は、ピタゴラスイッチを見ているような、トラブルが起こる街の巻き戻しを見ているような、不思議でここ落ち良いぴったり感が味わえることでしょう。
この晴れ間とともに、街全体が明るくなっていく様子からは、雨が上がって晴れた時の開放感や心が浮き立つ様子を思い出してしまいますね。
子どもたちの、



晴れてよかった~
という感想が、とても印象的でした。
この、晴れた気持ちよさと開放感で、収拾がつかなくなった大騒ぎが、あるべきところにぴったりと収まっていくおもしろさと心地よさを味わえるのも、この絵本のとてもとても素敵で晴れやかなところです。
二言まとめ
雨が降り始めるという小さな出来事から、ページをめくるたび騒ぎが大きくなり、街全体を巻き込む大騒ぎへと広がっていくドタバタ劇がおもしろい。
雨がやみ晴れたことで、大騒ぎでぐちゃぐちゃだったものが、ぴったりきれいに収まっていく様子がものすごく心地よくて気持ちのいい繰り返し絵本です。
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