作・絵:バレリー・ゴルバチョフ 訳:なかがわちひろ 出版:徳間書店
びしょ濡れになったブタくんがヤギくんの家にやってきた。
理由を聞くと、ブタくんが雨宿りしていた木に、次々と動物が入ってきたと言う。
ネズミ、ハリネズミ、ライオン、ワニ・・・
でも、大きな木だからみんな入りきれたらしい。
じゃあ、なんで濡れたの?
あらすじ
ある日、ずぶ濡れのブタくんがヤギくんの家にやってきた。
その姿を見て、牧場に花摘みに行ったら雨に降られたのだと言い当てるヤギくん。
ヤギくんがどうして、木の下で雨宿りしなかったのかと聞くと、ブタくんは雨宿りしたと言う。
でも、それならなぜ濡れたのかわからない。
話を聞くと、木の下にちょこまかネズミが1匹入ってきたのだそう。
でも、ネズミ1匹くらいじゃ、一緒に雨宿りしてもブタくんが濡れることはないだろうとヤギくんが言った。
すると、ブタくんは、続きを話し始めた。
ハリネズミが2匹飛び込んできたのだと。
さらに、バッファローが3匹。
ヒョウが4匹。
ライオンが5匹。
ゴリラが6匹。
ワニが7匹。
カバが8匹。
サイが9匹。
ゾウが10匹。
その話を聞いて、ヤギくんは真相がわかった。
とても多くの動物がやってきたから、ブタくんが木から押し出されてしまったのだと。
しかし、ブタくんは違うと言った。
とても大きな木だからみんな入りきれたというのだ。
じゃあ、なんでブタくんはびしょ濡れに・・・?

おしまい!
『すてきなあまやどり』の素敵なところ
- ページをめくるごとにどんどん増えていく動物と数
- 話しながらも幸せなくつろぎの時間を進めるヤギくんとブタくん
- ブタくんがびしょ濡れになった意外でかわいすぎる理由
ページをめくるごとにどんどん増えていく動物と数
この絵本のなにより楽しいところは、動物たちが次々雨宿りにやってくる繰り返しの展開です。
ブタくんが雨宿りしていた話を聞いてみると、次々木の下にやってくる動物たち。
ページをめくるごとに、新たな動物が登場するのですが、子どもたちが盛り上がる要素が詰まっているのです。
まず、動物の大きさ。
ネズミ、ハリネズミ、ヒョウ、ライオン、ゴリラ・・・ゾウと、ページをめくるたび体がどんどん大きくなっていく動物たち。
そのたび子どもたちも、

えー!?ライオンまで!?



ブタくん食べられちゃうんじゃないの!?



カバも来た!もう入らないんじゃない?
と、動物が登場するたび驚きが止まりません。
なかには、



ワニは雨宿りしなくてもいいんじゃない?
と、冷静なツッコミを入れる子も・・・。
さらに、大きさだけではなく、数も増えていきます。
1から10まで、まるで数を数えるように、ページをめくるたび動物たちが増えていくのです。
この数も子どもたちの大好きな要素。
数が出てくるたび、指を立てて数えたり、絵本の中の動物たちを数えて、



ちゃんと、5いるよ!
と、ちゃんと書かれている数と同じか確認。
きちんと数字が増えていくのもおもしろく、



次は、なにが6匹出てくるんだろう?



何匹までいくの!?
と数字が規則的に増えていくからこその、ワクワク感もたまりません。
しかも、最後の場面では見開きのページをさらに左右へ開ける仕掛けが用意されており、開くと大きな木の下でこれまで出てきた動物全員が雨宿りしているという、壮観な光景が広がります。
動物たちが木の下に飛び込んでくるだけで十分驚かされましたが、これだでの動物が勢揃いする姿は圧巻。
改めて、ありえなくらいすごいことになっていたのだと伝わってくるのです。
この、動物の大きさと数がページをめくるたび増していく大盛りあがりの繰り返しと、どれだけすごいことになっているかを視覚的に見せてくれる圧巻の仕掛けが、この絵本のとてもおもしろくページをめくる手が止まらなくなってしまうところです。
話しながらも幸せなくつろぎの時間を進めるヤギくんとブタくん
こうして、ブタくんの驚くべき出来事を聞いているヤギくん。
こんな聞き入ってしまいそうな話をしながらも、ページの左下でちゃっかり色々なことをしています。
この絵本は、ブタくんの遭遇した出来事が大きく描かれ、左下に小さくブタくんとヤギくんが話をしている様子が描かれるという独特の構図になっています。
どうしても、ブタくんの話すおもしろすぎる雨宿りの話に目が行きがちですが、実はブタくんとヤギくんの行動も見ているとおもしろい。
タオルで体を拭き、パジャマに着替え、髪をとかし、お茶の準備をします。
しかも、一つ一つの描き方がとても細かく、
ブタくんがパジャマに着替えている間に、ヤギくんが濡れた服を干してくれていたり、
ブタくんが髪をとかしている間に、ブタくんの摘んできた花をヤギくんが花瓶に入れてくれたり、
その花瓶をお茶のテーブルに飾ったり、
と急に出てきたものが1つもなく、すべてきちんと繋がりを持っています。
だから、見ていて「あれ?」と思ったら、疑問の答えを探しにページを戻りたくなってしまいます。
そして、



あのお花ブタくんが摘んできた花だったんだ!



蛇口がお花になってるよ!
と新たな発見をしたり、別の疑問が浮かんだりして、もっと夢中で見てしまうのです。
この、ページの左下に描かれる、ヤギくんとブタくんのゆったりとくつろいだやり取りも、この絵本のとても素敵で癒やされるところです。
ヤギくんとブタくんのやりとりを見ていると、2人がどれだけ仲良しなのかとてもよく伝わってきて、気持ちがぽっと暖かくなりますね。
ブタくんがびしょ濡れになった意外でかわいすぎる理由
さて、ブタくんが雨宿りで出会ったおもしろい出来事。
なんと、びしょ濡れになった原因ではありませんでした。
子どもたちも、これにはびっくり。
ヤギくんと一緒で、木の下からブタくんが押し出されたと思っていたのですから。
じゃあ、びしょ濡れになった原因はなんだったの?
その気になる原因が、なんとも意外でかわいいものだったのも、この絵本のとても素敵なところ。
ブタくんが、どんなにヤギくんのことが大好きか、伝わってくるような原因だったのです。
でも、これまでのヤギくんとブタくんのとてもくつろいだ、まるで家族のようなやり取りや雰囲気を見ているとそれも頷けます。
自分の話をとても興味深そうに楽しそうに聞いてくれるヤギくん。
そりゃ、こんなにおもしろい雨宿りに遭遇したら、こんな結末になってしまうことでしょう。
この、次々動物がやってくる雨宿りの話からは想像不可能な、意外だけど気持ちはとてもよくわかる、ブタくんらしいかわいさと無邪気さいっぱいのびしょ濡れになった理由も、この絵本のとても微笑ましいところです。
二言まとめ
雨宿りしている木の下に次々動物たちがやってくる、大きさも数もどんどんスケールが大きくなっていく繰り返しがおもしろい。
物語の最初から驚きの結末まで、ヤギくんとブタくんの仲良しっぷりが伝わってきてほっこりできる雨の絵本です。
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