作・絵:片山健 出版:福音館書店
毎日雨が続くので、コッコさんはてるてるぼうずを作りました。
でも、次の日も雨。
そこで、てるてるぼうずの中に手紙を入れました。
けれど、次の日も雨。
今度はてるてるぼうずの中に・・・。
あらすじ
最近、毎日雨が降っています。
そこで、女の子コッコさんは、てるてるぼうずを作りました。
でも、次の日も雨でした。
コッコさんは、てるてるぼうずの中に手紙を入れてみることにしました。
でも、やっぱり雨。
今度はてるてるぼうずの中に、おもちゃなど自分の宝物を入れてみることにしました。
色んなものを入れたので、てるてるぼうずはふとっちょに。
けれど、やっぱり次の日も雨でした。
コッコさんは、てるてるぼうずが疲れているのかもしれないと思いました。
そこで、コッコさんはてるてるぼうずを・・・。

おしまい!
『コッコさんとあめふり』の素敵なところ
- 毎日改良されていくてるてるぼうずの繰り返し
- てるてるぼうずを心から信頼しているコッコさん
- 雨が降り続いたからこそのとっても嬉しい物語の結末
毎日改良されていくてるてるぼうずの繰り返し
この絵本のなによりおもしろいところは、少しずつ改良されていくてるてるぼうずの繰り返しです。
普通は、てるてるぼうずを作って飾ったら終わりですが、コッコさんは日々足りなかったものを考えます。
そして色々なことを試してみます。
手紙を入れる・・・
宝物を入れる・・・
どれも、「そんなやり方もあるんだなぁ」と感心してしまう方法ばかり。
どれも素敵な方法なので、雨がやむことへ期待が高まります。
中でも宝物を入れるというのは、てるてるぼうずの見た目がふとっちょになることも相まって、子どもたちの期待がさらに大きいものに。

きっと、雨がやむよ!



お願い!やんで!
と、両手を合わせて期待を込める姿は、まるで自分がてるてるぼうずを作ったかのようでした。
でも、結果はすべて失敗で、雨がやむことはありません。
そのたび、子どもたちも、



ダメか~



あ~、雨降ってるよ~
と期待が大きかったぶん、がっくり肩を落とします。
この、てるてるぼうずの失敗と改良の繰り返しに、ドキドキワクワクさせられるのがこの絵本のとても楽しいところです。
こんなにユニークなてるてるぼうずの作り方を見ていたら、自分のてるてるぼうずにも色々なものを入れてあげたくなりますね。
てるてるぼうずを心から信頼しているコッコさん
こうして、てるてるぼうずに工夫をこらすコッコさん。
その根底には、てるてるぼうずがもつ力への絶対的な信頼を感じられます。
てるてるぼうずを吊るし「晴れたらラッキー」という考え方ではなく、
てるてるぼうずを吊るしたのに晴れてないってことは、「なにかが足りていないんだ」という考え方なのです。
晴れることが前提というのは、てるてるぼうずには天気を晴れにしてくれる力があると信じているということ。
この力があると信じているから、「晴れなかったことには原因がある」と考え工夫するのです。
最初は、晴れなかった原因がてるてるぼうずの中身にあると考え改良していました。
ですが、最終的にたどりついたのは「疲れている」という、なんとも子どもらしい素敵な結論。
てるてるぼうずに命が宿っているという、とても子どもらしい感性からたどり着いた原因でした。
そして、「疲れている」という原因への対策も、なんとも優しく心温まるものに。
最後の場面でのてるてるぼうずを見ていると、



当たり前のように吊るしていたけど、休息も必要だよなぁ
と気付かされます。
こうしてみると、コッコさんのてるてるぼうずに対する対応はとても子どもらしい想像性が感じられますが、原因を探り改良するという考え方はとても科学的なもの。
この、てるてるぼうずの力や命を当たり前に信じている想像力と、晴れにたどり着くまでの原因を探るという科学的視点が組み合わさっているからこそ、こんなにもこの絵本は魅力的なのでしょう。
そして、なによりも想像性と科学的視点が融合した行動というのは子どもの性質そのもの。
コッコさんの子どもらしさをとてもリアルなものにし、子どもたちがこんなにも共感できる根源になっているのだと感じます。
雨が降り続いたからこそのとっても嬉しい物語の結末
さて、こうしててるてるぼうずの改良を繰り返しますが、一向に晴れない天気。
期待感を持ってページをめくるたび、やまない雨に子どもたちも落胆が続きます。
そんな落胆続きの中、てるてるぼうずの中身を増やすのではなく、「疲れている」と方向転換したコッコさん。
これまでと違う流れに、子どもたちの期待感は否が応でも高まります。



今度こそ晴れてー!



ぜーったい、晴れるよ!
と、最後のお願いとばかり、思わず全身に力が入ってしまいます。
そして、夜が明けると・・・。
そこには見開きいっぱいに、みんなの期待に応える光景が待っていました。
その嬉しさは、まさに長い雨の間にのぞいた晴れ間のよう。
全然晴れない落胆の繰り返しがあったからこそ、なおさらこの素敵な光景の嬉しさが際立っているのだと思います。
この、雨がやまない繰り返しからの、みんなが待ち望んでいたものに120%応えてくれる、最後の場面に描かれた見ているだけで元気が出てくる光景も、この絵本のとても素敵で嬉しさが爆発してしまうところです。
二言まとめ
てるてるぼうずの力を信じて、雨がやまない原因を考えながら改良していく繰り返しがおもしろい。
なかなか雨がやまなかったからこその待ちに待った結末に、表情も空気もパッと明るくなる雨の絵本です。
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