文:ねこしおり 絵:高橋和枝 出版:偕成社
なにかを見つけるたびに指差しする男の子。
見つけたものに、「こんにちは」とあいさつします。
言葉にならない指差しと、指差しの先にある言葉を繋げてくれる絵本です。
あらすじ
男の子が散歩をしていました。
すると、なにかを発見して「あ、あ!」と指をさします。
指差しの先にいたのはネコ。
男の子はネコに「こんにちは」とあいさつし、去っていくネコに「ばいばい」と別れを告げました。
次にイヌが歩いてきました。
男の子は「あ、あ!」とイヌを指さします。
近づいてきたイヌに「こんにちは」とあいさつし、去っていくイヌに「ばいばい」と別れを告げました。
今度はアリが歩いてきました。
男の子は「あ、あ!」と指さします。
歩いてくるアリの行列に「こんにちは」とあいさつし、去っていくアリに「ばいばい」と別れを告げました。
男の子は自分を指差してくる人を見つけました。
それは大好きなお友だち。
手を繋いで「こんにちは」とあいさつしていると、ネコとイヌとアリもやってきて、みんなでお散歩することになりました。

おしまい!
『あ、あ!」の素敵なところ
- 発見の指差しと、その後に言いたい言葉を繋げてくれる
- 身近で大好きな生き物たちが次々登場する繰り返し
- みんなと「ばいばい」しなくていい嬉しい結末
発見の指差しと、その後に言いたい言葉を繋げてくれる
この絵本のなにより素敵なところは、言葉にならないけど伝えたい「あ、あ!」という指差しと、言葉にならない思いをしっかり言葉にしてくれるところです。
言葉が未熟な小さい子にとっての大切な情報伝達手段である指差し。なにかを見つけた時の指差しにはたくさんの言葉にならない声が詰まっています。
あれはなに?
なんていう名前?
見てみて!ブーブーだよ!
そんな言葉にならない声を、この絵本ではしっかり言葉にしてくれます。
「ネコさんこんにちは」
と、出会った生き物の名前ともっとも簡単なあいさつの言葉へ。
「ばいばい」
という別れの言葉へ、「あ、あ!」という指差しを置き換えてくれるのです。
子どもたちも絵本の中の男の子を見てしゃべれる子は

ばいばい!
と手を振りながら言葉を繰り返したり、しゃべれない子は「こんにちは」に合わせてお辞儀をしたりと、それぞれの方法で絵本の中の言葉を表現。子どもたちの中に、言葉の芽が育っていることを感じさせてくれました。
きっと、近いうちにこんにちはの「は~」や「ばいばい!」と言葉に繋がっていくのでしょう。
この、指差しに込められた言葉を、男の子の仕草と言葉に置き換えてくれることで、指差しと言葉を繋げてくれるのが、この絵本のとても素敵なところです。
身近で大好きな生き物たちが次々登場する繰り返し
指差しをする中で、子どもたちに人気の身近な生き物が次々登場するのもこの絵本の楽しいところとなっています。
登場するのは、ネコ、イヌ、アリ。どれも日常生活でよく見かける、子どもにとても身近な生き物ばかりです。しかも、子どもたちの人気も高い。散歩中にもよく見かけるし、絵本にもよく登場します。保育園でも「ワンワン」「ニャーニャー」「アリさん」はかなり早くから子どもたちがしゃべりだす言葉です。
そんな人気の生き物たちが、次々登場するのだから盛り上がらないはずありません。



ニャーニャー!
と出てきた生き物の名前を嬉しそうに言ったり、指差ししながら読み手と絵本を交互に見て発見や嬉しさを伝えようとしたり、知っている生き物たちに大喜び。動きや声から、小さな子どもたちの熱気が伝わってきました。
そんな大好きな生き物たちが登場する中、最後に登場するのが1番大好きなお友だちというのだから、さらに嬉しくなってしまいます。
子どもたちもこれまで以上に力強く指差ししたり、近くの友だちを指差しして一緒であることを伝えたりと大忙し。中には絵本の2人同様手を繋いで笑い合う子もいたりと、友だちというのは特別な存在であることが子どもたちの姿から伝わってきます。
この、どれも身近で大好きな生き物たちと次々出会う展開に、見ている子どもたちの指差しや言葉が止まらないところも、この絵本のとても楽しく盛り上がるところです。
みんなと「ばいばい」しなくていい嬉しい結末
さて、お友だちとも会えたことで、さらに嬉しい気持ちになった男の子。ですが、さらに嬉しいことが待っていました。これまで「ばいばい」してきた生き物たちがまたやってきてくれたのです。
これまで、出会った生き物たちと自然に「ばいばい」していましたが、「ばいばい」しなくていいというのはとても嬉しいもの。友だちとも生き物たちとも「ばいばい」せずに一緒に散歩を楽しめます。最後の場面の男の子の笑顔や仕草からは、「ばいばい」しなくていい嬉しさが溢れ出し、こちらまで嬉しい気持ちに。
誰も去っていかずに終わる最後の場面に、子どもたちも嬉しそうに笑っていました。
この、最後の場面で「ばいばい」しないという、これまでの繰り返しとはちょっと違う嬉しい結末も、一緒にいられる嬉しさを自然と感じさせてくれる、この絵本のとても素敵なところです。
二言まとめ
指差しで発見した生き物たちに、指差しに込められた思いを言葉できちんと伝えてくれる。
出会いとコミュニケーションの楽しさ溢れる、指差しと言葉を繋げてくれる絵本です。
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