作:あべはじめ 出版:あすなろ書房
なんでも思い通りにしてきた王様。
そんな王様が、思い通りにならないものに出会った時。
首を切ってしまうでしょうか。
それとも・・・。
あらすじ
昔々、砂漠の真ん中に悪い王様がいました。
王様はわがままでいじわるでした。
ある春の日、家来が全員逃げ出してしまいました。
王様は「せいせいした」と一人暮らしを楽しみました。
一年が過ぎた頃です。
王様が外に出てみると、一人のおじいさんがやってきました。
王様は「領地に入るなら通行料を払え!」と言いました。
おじいさんは通行料の代わりに、しあわせの実がなるという一粒の種を差し出しました。
王様はさっそく、種を埋めて水をやりました。
中々芽が出ず、王様はおじいさんを疑いましたが、毎日水をやりました。
一週間経ち、ようやく芽が出ました。
喜んだ王様ですが「すぐに大きくならないと首をはねてやる!」といばっていいました。
でも、すぐに大きくなるわけがありません。
王様は毎日水をやりました。
王様がどんなに「早く大きくならないと首をはねる!」と言っても、ゆっくりと大きくなっていきました。
やがて、立派な木になりました。
ある朝、王様が目を覚ますと木のまわりを小鳥が飛んでいました。
王様は思わず外に出ました。
木は少しずつ大きくなり、リスも暮らすようになりました。
王様は前のように怒ったり怒鳴ったりしなくなりました。
木がもっと大きくなり木陰が出来ると、そこで休む旅人も出てきました。
王様は旅人にも水をあげ、おしゃべりを楽しむようになっていました。
優しくなった王様は、このまましあわせの実を見ることが出来るのでしょうか。
『わるいわるい王さまとふしぎの木』の素敵なところ
- 木の成長と一緒に変わっていく王様の姿
- 決まり文句「首をはねてやる!」
- 悪いこともいいことも、自分に返ってくることが自然に描かれている
わがまま放題の王様。
最初のわがままっぷりには子どもたちも「ひどいね!」と口をそろえていました。
でも、王様は植物を育てるという、思い通りにならないことを通じて変わっていきます。
芽が出た時の笑顔からは、王様が変わっていっていると言うのがとてもわかりやすく伝わります。
そんな王様の変化をよりわかりやすくしてくれているのが口癖です。
「首をはねてやる!」
王様が相手を思い通りにしようとする時のセリフ。
種が木になった時、このセリフがなくなります。
そこには表情も行動も優しい王様がいます。
他者にも優しくなっています。
そんな優しくなった王様には木が大きくなった以外にも素敵な出来事が起こります。
それが人づてに起こるのがこの絵本の素敵なところだなと思います。
いいことも、悪いこともしっかりと伝わり、それが自分に返ってくる。
王様の変化していく姿を通じて、わかりやすく、自然に描かれているお話です。
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