文:すとうあさえ 絵:たかおゆうこ 出版:ほるぷ出版
空を散歩するこいのぼり。
途中、ネコを見つけたので背中に乗せてあげました。
さらにサルを見つけましたが、ネコが立ち上がったのでバランスを崩してしまいます。
落ちたこいのぼりは、木に引っかかってしまったのでした。
あらすじ
こいのぼりくんが空の散歩をしていると、ネコちゃんに呼びとめられました。
家まで乗せてほしいというのです。
こいのぼりくんは快く、ネコちゃんを背中に乗せてあげました。
ネコちゃんは、空を飛ぶことができて大喜びです。
空を飛んでいくと、ネコちゃんが山の上にサルくんを見つけました。
嬉しさのあまり立ち上がりサルくんに手をふるネコちゃん。
でも、ネコちゃんが立ち上がったことでこいのぼりくんはバランスを崩してしまいます。
そして、木の上へ落っこちてしまったのでした。
こいのぼりくんは、木に引っかかって動けません。
ネコちゃんが一生懸命引っ張りますが、びくともしないこいのぼりくん。
と、そこへサルくんがやってきました。
一緒に手伝ってくれるサルくん。
2人で一生懸命引っ張ると、こいのぼりくんの体が浮き上がり、助け出すことができました。
ネコちゃんとサルくんは、こいのぼりくんの背中に乗ってサルくんの家へ行くことに。
2人をサルくんの家に送り届けると、こいのぼりくんは家へ帰っていきました。
ネコちゃんは、サルくんの家で柏餅をごちそうになったのでした。

おしまい!
『こいのぼりくんのさんぽ』の素敵なところ
- こいのぼりくんと動物たちの小さな子にもわかりやすい物語
- ところどころに登場する子どもの日アイテム
- こどもの日やこいのぼりの由来が、とてもわかりやすくまとめられた解説
こいのぼりくんと動物たちの小さな子にもわかりやすい物語
この絵本のなにより楽しいところは、行事絵本というより純粋な物語絵本になっているところです。
どうしても、こいのぼりなど行事に関係するものが出てくる絵本は、由来や願いなどが物語に入り込み、わかりにくくなりがちです。ですが、この絵本ではこいのぼりはあくまで1キャラクター。そこに物語が引っ張られることはなく、物語のみで完結しています。
もちろん、物語の内容もわかりやすい中に、こいのぼりのピンチというハラハラドキドキする展開と、ネコちゃんとサルくんが力を合わせて解決するという達成感のある展開もあり、とても満足度の高いものに。
子どもたちに馴染みの深いネコやサルといった動物が出てくることや、子どもたちの大好きな引っ張る動作、描画と切り絵が融合した温かみのある絵という要素も相まって、子どもたちの興味を惹きつけてやみません。

ニャーニャー!



お空飛んだよ!



よいしょ!よいしょ!がんばれー!
と、子どもたちもすっかり、物語の世界に入り込んいるようでした。
それぞれの場面で、驚いたり、応援する姿がとてもかわいい・・・
このわかりやすく、馴染み深く、楽しい物語は、物語絵本を楽しめるようになる2歳くらいの子にぴったり。小さな子が無理なく楽しめる物語絵本となっているのです。
この、物語絵本としての楽しさを前提としつつ、こいのぼりが主人公になっているため、行事とも触れ合えるというのが、この絵本のとても魅力的なところです。
行事絵本としては、珍しいものと言えるでしょう。
ところどころに登場する子どもの日アイテム
物語絵本として純粋に楽しめるこの絵本ですが、もちろん行事絵本としての側面も忘れてはいません。
絵本の中に、物語とは直接関係ない形で、行事に関するアイテムが登場するのです。
- 主人公がこいのぼり
- サルくんの被っている折り紙の兜
- サルくん一家が食べている柏餅
ところどころで、子どもの日に関係するものが見つかります。
子どもたちも、



見て!兜かぶってるよ!



このお餅、うちにもあるよ!
と見たことのある行事物を発見し嬉しそう。こいのぼり以外は物語に直接入りこまない中でも、こどもの日に触れることができる作りになっているのです。
この、さりげなく子どもの日に関係するアイテムが登場し、物語を楽しみながら自然と行事に触れることができるのも、この絵本のとても素敵なところです。
こどもの日やこいのぼりの由来が、とてもわかりやすくまとめられた解説
この絵本の巻末には、こどもの日の解説が載っています。このこどもの日の解説が詳しくも非常にわかりやすくまとまっているのも、この絵本の素敵なところです。
1ページというかなり小さなスペースに、こどもの日、菖蒲、鎧兜、こいのぼり、柏餅、すべての説明が載っています。ですが、どれも十分由来や願いがわかるように解説されているのです。しかも、とてもわかりやすい上、豆知識まで入っています。
過不足なく説明すると難しくなりやすい子どもの日の解説ながら、小学3年生くらいであれば自分で読んでもスッと理解できそうなほどわかりやすくまとめられているのは本当にすごい。
特におもしろいのが、菖蒲湯で「菖蒲を頭に巻くと頭が良くなる」という言い伝え。初めて聞いたので驚きました。サルが菖蒲湯に浸かり菖蒲を頭に巻いているかわいい絵が添えられていることもあり、自分でもやってみたくなってしまいます。
この、非常にわかりやすくコンパクトにまとめられた、子どもの日のことがすべてわかってしまう解説も、この絵本のとても素敵でありがたいところです。
子どもの日の行事担当の人などは、とても参考になることでしょう。
もちろん、家で子どもに説明をする時にも。
『二言まとめ』
行事の由来や願いなどを物語に入れないことで、純粋な物語絵本として物語絵本を見始めた小さな子にもオススメできる。
さり気ない子どもの日アイテムの登場や最後の解説ページなど行事絵本の側面も忘れない、物語重視の子どもの日絵本です。
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