作:ジョン・バーニンガム 訳:谷川俊太郎 出版:冨山房
いつも肌見放さず持っている毛布がなくなってしまいました。
男の子の大切な毛布を、家族総出で探します。
お風呂場、戸棚の中、ベッドの下。
両親が一生懸命探してくれる中、男の子はというと・・・。
あらすじ
男の子は寝るときに、いつも毛布を持っていく。でも、ある晩毛布が見つからなかった。
お母さんがお風呂場を見たり、お父さんが戸棚を探したり、男の子がベッドの下を見たり・・・。家族総出で探してみるけど、毛布は中々見つからない。
お母さんが洗濯物を見たり、お父さんが車の中を見たりして、一生懸命探してくれてる。
そんな中、男の子は枕の下で毛布を見つけて眠ってしまいましたとさ。

おしまい!
『もうふ』の素敵なところ
- 自分のことのように感じられる毛布がなくて不安そうな男の子の姿
- 男の子の気持ちを大切にし、一生懸命探してくれる両親の温かさ
- なんとも子どもらしいほっこりする結末
自分のことのように感じられる毛布がなくて不安そうな男の子の姿
この絵本のなにより子どもの心を鷲掴みにしてしまうところは、毛布がなくて不安がる男の子の姿です。
子どもたちそれぞれになにかしらある愛着物。この絵本では男の子が不安そうに指しゃぶりする姿から、そんな愛着物がなくなってしまう不安感がとてもよく表れています。そして、自分にも愛着を大切にしたり、なくなった時の不安という経験があるからこそ、ものすごく共感できるのです。
男の子の毛布がなくなる出来事に自分を重ね合わせるからこそ、毛布が無事見つかるのかと自分ごとのようにドキドキするのでしょう。

どこに行っちゃったんだろう?



ここにもないよ・・・
と、子どもたちも一緒に探しているようだったのが印象的。頭の中では男の子の家の中を探していたのだと思います。
この、男の子の毛布という愛着物が自分の愛着物と重なり、愛着物の大切さやなくなる不安に心から共感できるのが、この絵本のとても素敵なところです。
男の子の気持ちを大切にし、一生懸命探してくれる両親の温かさ
男の子は毛布がなくなってしまったあと、両親へ寂しそうに伝えます。ここで両親が子どもの気持ちに寄り添って、すぐ一緒に探してくれるのも、家族の温かさや子どもへの理解を感じる素敵なところとなっています。
夜寝る前に毛布なくなったと伝えたら、「明日探そうね」「今日は代わりの毛布で寝なさい」と言われてもおかしくありません。違う毛布で寝るよう言われ、泣いたり怒ったりして、渋々両親が毛布を探すなんて言う場面もよくあることでしょう。
けれど、この絵本の両親は当たり前のように家中を探してくれます。きっと家の外にある車まで探しに行ってくれるのです。お母さんとお父さんの2人とも同じくらい一生懸命探してくれるのもポイントで、男の子の家庭では両親が同じくらいの温度感で子どもに接しているのが感じ取れます。
この家庭では、たかが毛布ではなく、子どもが大切にしているものとして毛布を見て、そんな毛布を大切にする子どもの心を大切にしているのでしょう。子どもの一大事に子どもの目線で一生懸命探してくれたのだと思います。
こういった両親の子どもへの対応の端々から、両親が一言もしゃべらないのに子どもへの温かな気持ちや愛情が強く伝わってくるのです。
この、絵本全体から溢れでる、自分の気持がしっかり受け止められているという安心感を味わえるのも、この絵本のとても素敵で柔らかなところです。
もし、毛布が見つからなかったとしても、この家庭なら安心して眠れるんだろうなぁと思えてきますね。
なんとも子どもらしいほっこりする結末
家族総出で毛布探しが始まるものの、中々見つからない毛布。そんな毛布は男の子のベッドの枕の下にありました。まさに「灯台下暗し」。でも、子どもの探し物ではよくある「も~ちゃんと探してから言ってよ~」という展開で、妙に納得感があります。
しかも、毛布を見つけた安心感でそのまま寝てしまうという、これまた子どもらしい「親の気持ち子知らず」といった行動が、子どもの心と姿をリアルに描き出したこの絵本らしい素敵なところ。子どもたちも、



え~、寝ちゃったよ!?



パパとママに教えてあげてー!
と、子どもらしい自由過ぎる行動に見つかって嬉しい気持ちと、自分勝手な行動に呆れる気持ちが混在しているようでした。
ただ、このオチがつい笑ってしまうものになっているのは、両親の愛情を信頼しているからなのだと思います。もし両親が「も~!一生懸命探していたのに!」と怒るかもと思っていたら、1人で寝てしまうオチはきっと笑えません。
両親の子どもに寄り添う様子から、男の子が寝ている姿を見たときに「まったく~」と呆れながらも両親で笑い合う姿が想像できるから、子どもらしい自分勝手なこのオチが微笑ましいものになるのだと思います。
この、子どものありのままを描いた呆れてしまうオチと、そのオチからも感じ取れる両親の子どもへの愛情に、呆れつつも微笑ましく思える雰囲気も、この絵本のとても素敵で温かなところです。
見た後の安心感から、寝る前に見るときにもピッタリの絵本ですね。きっと、大切な毛布を持って布団に入りたくなりますよ。
二言まとめ
大切な毛布がなくなり不安そうな男の子の姿に、心の底から共感できる。
毛布を探す中で、両親に大切にされていることを感じられ、見終わった時に安心感で満たされる絵本です。
コメント