作:藤本ともひこ 出版:すずき出版
七夕の日、バスとネズミのもとに織姫から短冊が届きました。
短冊には「晴れますように」と書いてあります。
しかし、天気予報は大雨。
バスとネズミたちは織姫の願いを叶えるため、空に向かって出発したのでした。
あらすじ
七夕の日。屋根に七夕飾りをつけたたなばたバスが、ネズミくんたちのもとへやってきました。
ネズミくんたちは喜びましたが、今日の天気予報はあいにく大雨。それなのに、空から降ってきた織姫様の短冊には「彦星様に会えるよう晴れますように」と書いてあるではありませんか。
織姫様と彦星様が会えなくてはかわいそうだと、たなばたバスがネズミくんたちを乗せ出発します。カウントダウンとともにロケット噴射で空へ飛んでいくたなばたバス。空の上まで来てみると、案の定雨雲でいっぱいでした。
そこで、ネズミくんたちは腕を広げてぐるぐる回し始めます。たなばたバスも一緒に回り、雨雲を吹き飛ばそうという作戦です。しばらくすると目が回ってしまい動きが止まるたなばたバス。雨雲はまだまだたくさん残っています。
とその時、ネズミくんたちがいいことを思いつきました。
ネズミくんは七夕飾りで、たなばたバスの鼻をこちょこちょとくすぐります。すると、たなばたバスが大きなくしゃみを一発。雨雲は全部吹き飛んでしまいました。
眼の前にはきれいな星空と天の川が広がっています。天の川にかかるカササギの橋の上で、織姫様と彦星様は無事に会うことができたのでした。
織姫様は願いを叶えてくれたネズミくんたちに感謝を伝えます。さらに、お礼においしいものを天の川で冷やしてあるとのこと。さっそくみんなで天の川へ釣り糸を垂らすと・・・釣り上げたのは100人分はある巨大なスイカではありませんか。
たなばたバスとネズミくんたちは、織姫様・彦星様と一緒にスイカを食べ、天の川を渡って地球へ帰っていったのでした。

おしまい!
『たなばたバス』の素敵なところ
- 雨雲を晴らすために空を飛ぶワクワクする七夕物語
- 思わず一緒に言っちゃうやっちゃう楽しいフレーズと動き
- 思いもよらない夏ならではの嬉しいお礼
雨雲を晴らすために空を飛ぶワクワクする七夕物語
この絵本のなによりおもしろいところは、織姫様のため空へ飛び立つワクワクの物語です。
七夕の日が大雨ということで残念そうな子どもたち。ですが、たなばたバスとネズミくんたちは少しも諦めていませんでした。バスに乗り込みカウントダウンすると、空へ飛び立っていったのです。これには子どもたちもびっくりで、

空とんだよ!



ロケットみたい!
と大盛りあがり。バスが空を飛ぶというまさかの展開にワクワクが止まりません。
こうして空へ行ったたなばたバスは、ネズミくんたちと一緒に試行錯誤しながら雨雲をどうにかしようと奮闘します。扇風機のように回ってみたり、くしゃみで吹き飛ばしてみたりとあの手この手で頑張ります。ネズミくんたちの頑張りを見て子どもたちも、



あ!雨雲飛んでってる!頑張れー!



まだいっぱいあるね~
と応援したり、失敗に落胆したり、すっかり物語の世界に入り込んでいるようでした。
この、七夕を自分たちの力で晴れにして織姫様と彦星様が会えるようにしようという、七夕がより楽しく身近になるワクワクの物語がこの絵本のとてもおもしろいところです。
思わず一緒に言っちゃうやっちゃう楽しいフレーズと動き
ワクワクの物語と一緒にこの絵本を盛り上げてくれるのが、ネズミくんやたなばたバスの一緒に言いたくなってしまうフレーズや真似したくなる動きです。
まずはたなばたバスの発射場面。画面いっぱい使い、「5・4・3・2・1・0」とカウントダウンが始まります。もちろん子どもたちも、



5・4・3・2・1・0!



しゅっぱーつ!
と、読み手に合わせてノリノリのカウントダウン。カウントダウンしている時の目のキラキラからワクワク感がダイレクトに伝わってきます。
次の場面は、ネズミくんが腕をぐるぐる回す場面。「ぐるぐるぐるぐる!」という言葉と、画面上の渦巻きを見ていたら、そりゃ体も自然と動いてしまいます。ネズミくんたちと一緒に腕を回す子どもたち。雨雲をすべて吹き飛ばしてやろうと必死です。
本気で腕を回しすぎて、目を回したバスと一緒に肩で「はー…はー…」と息をする姿がとてもかわいかったですよ。雨雲を吹き飛ばそうと全力を出す子どもの姿に、絵本が自分の世界と地続きであることが強く感じられる場面でした。
この、カウントダウンをしたり腕を回したりする、動きとフレーズと絵がぴったりと重なって思わず真似したくなってしまう楽しさも、この絵本のとても素敵な盛り上がるところです。
思いもよらない夏ならではの嬉しいお礼
ネズミくんとたなばたバスの活躍で、無事に彦星様と会うことができた織姫様。お礼においしいものをネズミくんたちのために用意してくれています。このおいしいもののスケールに驚かされるのも、この絵本のおもしろいところです。
めでたしめでたしかと思いきや、最後に用意されたサプライズは子どもたちの度肝を抜くものでした。しかも、しっかり釣り上げるまでのためもあり、



なにが釣れるんだろ!



ドキドキする~
と、盛り上がりも最高潮。からの、巨大過ぎるスイカに子どもたちも、



デッカ!



お月さまみたい!
と、思いきり驚きます。なんならこの絵本の中で1番驚いていたかもしれません。
夏の始まりということもあり、冷え冷えのスイカは本当においしそう。絵本を見ながら、手でパクっとやって、



スイカ食べちゃった~



おいしい~
としっかりちゃっかり一緒に味わっている子どもたちでした。季節がぴったりということもあり、今すぐスイカにかぶりつきたくなる場面ですね。
この、お礼が巨大スイカというまさかのスケール感への驚きと、季節感がぴったりで思わずかぶりつきたくなってしまうおいしそうな最後の場面も、この絵本のとても盛り上がる楽しいところです。
二言まとめ
ネズミくんたちの楽しい動きとフレーズに、思わず一緒に真似したくなる。
織姫様のため力を合わせて雨雲を追い払うというワクワクの展開に、七夕がより楽しく身近に感じられる七夕絵本です。
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