作:たばたせいいち 出版:童心社
男の子はおばあちゃんに手紙で誕生日プレゼントはなにがいいか聞きました。
すると、おばあちゃんは男の子だけにある秘密を打ち明けます。
その秘密とは、亡くなったおじいちゃんとダンスをしたいという願い。
秘密の願いを聞いた男の子はなんとか叶えるために・・・。
あらすじ
ある日、男の子ゆうきはしんばあちゃんに手紙を書きました。今度80歳の誕生日を迎えるからです。
ゆうきは手紙で一番欲しいものを聞きました。ゆうきからの手紙をもらいしんばあちゃんは返事を書きました。おばあちゃんからの返事には、一番欲しいのはゆうきの笑顔だからプレゼントはいらないと書かれていました。でも、手紙はそこで終わらず、ゆうきにだけ教える秘密の願いも添えられていたのでした。
その秘密の願いとは、40年前に亡くなったおじいちゃんともう一度ダンスがしたいというもの。ゆうきはおばあちゃんの願いを見て、叶えてあげようと思いました。
けれど、天国に行く方法がわかりません。秘密なのでお母さんにも相談できず、ゆうきは友だちのるみとたくやに天国へ行く方法を聞いてみることにしました。すると、るみがゆうきが魔法使いになればいけると教えてくれたのです。
ゆうきは魔法使いと聞いて、劇で魔法使いをやった時のことを思い出しました。劇をやる時にしんばあちゃんが作ってくれた帽子が家のタンスにしまってあります。すぐに魔法使いの帽子を出し、タオルをヒゲの代わりにして魔法の呪文を唱えました。
すると、野良猫のドラが部屋に入ってくると、喋りかけてきたではありませんか。ゆうきが驚いていると、ドラはゆうきが魔法の帽子を被っているから動物の言葉がわかるのだと教えてくれました。加えてお宮の森に行くようゆうきへ助言をくれたのでした。
さっそくお宮の森へやってくると、急に日が陰り当たりが薄暗く・・・。ゆうきは怖い気持ちを抑え参道を登っていきました。お宮の森へ到着すると、鳥たちが天国のことはふくろうじいさんに聞くよう言いました。言われた通りふくろうじいさんに話を聞くと、質問に答えられたら願いは叶うと言います。
ふくろうじいさんの質問とは、魔法の帽子に描かれた2つの星がなんの星か当てるというもの。ゆうきが帽子を見ながら考えていると、帽子に天の川が描かれていることに気付きました。天の川の近くにある2つの星と言えば織姫と彦星です。
ふくろうじいさんは質問に答えることができたゆうきに、七夕の夜に織姫と彦星へ頼めばいいのだと教えてくれました。
ゆうきはお宮の森であったことを、すぐにでもるみとたくやに話したくて仕方ありません。そんなゆうきの願いが通じたのか、帰り道にるみとたくやに会いました。ゆうきがこれまでのことをすべて話すと、2人も協力してくれるといいます。こうして、七夕の夜に3人で星祭りを開くことになりました。
ゆうきは家に帰り、お母さんの顔を見るなりまずいことに気が付きました。おばあちゃんの秘密を全部喋ってしまったのです。そして、おばあちゃんに秘密をしゃべってしまったことを謝る手紙を書き、お母さんにも本当のことを言って協力することに決めたのでした。
星祭りの準備に追われるうち、あっという間に七夕の日がやってきました。夜になりゆうきは一生懸命星に願い事をします。おばあちゃんがおじいちゃんに会って40年ぶりにダンスを踊れますようにと。
ちょうどその頃、しんばあちゃんも星空を見上げていました。手紙でゆうきが星祭りをしてしんばあちゃんの願いを叶えようとしているのを知っていたからです。おばあちゃんは、なんだか心がほっこり温かくなって布団の中に入ったのでした。
しんばあちゃんが布団に入ってからどのくらい経ったのでしょう。ふと目を覚ましたしんばあちゃんは驚くべき光景を目にしました。
いったいしんばあちゃんになにが起こったのでしょう?
ゆうきの願いは星へ届いたのでしょうか?

おしまい!
『ひ・み・つ』の素敵なところ
- おばあちゃんのとても難しい願いを一生懸命叶えようとするゆうきの姿
- 少しずつ不思議なことが溶け込んでくるワクワクする展開
- これまでの頑張りやみんなの思いが積み重なる感動的な結末
おばあちゃんのとても難しい願いを一生懸命叶えようとするゆうきの姿
この絵本の1番の見どころは、ゆうきがおばあちゃんの願いを一生懸命に叶えようとする姿です。
みんな大好きなおばあちゃん。そんなおばあちゃんが秘密で願い事を教えてくれたのです。おばあちゃんにかわいがられ、色んなことをしてもらうことはあっても、おばあちゃんからお願いをされることなんて滅多にないでしょう。おばあちゃんの頼みならお手伝いでもなんでもやってあげたくなってしまうのが孫心というものです。
けれど、この絵本で教えてくれた秘密の願いは、生半可なものではありませんでした。なんせ、天国のおじいちゃんとダンスをしたいなんて言うのですから。もちろん、おばあちゃんも叶うと思って言ったわけではありませんが、ゆうきは本気で実現しようと考え行動します。
この、「おばあちゃんの願いを叶えてあげたいという気持ち」×「実現できそうもない無理難題」という組み合わせが、この絵本の本当におもしろいところ。おばあちゃんの秘密を聞いて、

それは無理だよ・・・



死んだ人には会えないよ・・・
と絶望する子どもたちですが、ゆうきは無理だなんて思っていません。
そんな考え行動するゆうきの姿を見て、子どもたちも段々と



どうやったら叶えられるんだろう?
と考え方がポジティブになっていくのが印象的でした。
最初から最後まで少しも諦めたりしないゆうきの姿を見ていると、「どうやって叶えるんだろう?」という先が気になる気持ちと同時に、一緒に考え応援したいという熱い思いが込み上げてくるのが、この絵本のとても素敵なところです。
少しずつ不思議なことが溶け込んでくるワクワクする展開
ゆうきが一生懸命におばあちゃんの願いを叶えようと行動を起こしていると、日常生活の中で少しずつ不思議なことが起こり始めます。この不思議なことが溶け込んでくることで、「本当に願いが叶うかも!」という期待感がふくらんでいくのもこの絵本のとてもおもしろいところです。
ゆうきが友だちに天国へ行く方法を聞いてみると、当たり前のように「魔法使いになればいい」と返事をするるみ。なんと、子どもらしい純粋な発想でしょう。子どもたちは無理難題を解決する方法をきちんと知っているのです。同時に、魔法はそんな簡単に使えないということも。
るみの言葉を聞いた子どもたちは、



魔法なんて使えないよ!
と反論します。もちろんゆうきが魔法使いの帽子を被り呪文を唱えたときも、



偽物の帽子じゃ魔法使えないよ!
と否定的な意見が多めです。
でも、そんな子どもたちの反応を見越しているのか、本当に不思議なことが起こってしまうからおもしろい。魔法は使えませんでしたが、動物の言葉がわかるようになるのです。これには子どもたちも、



ええ!?本当に魔法の帽子だったの!?



聞き耳頭巾みたい!
と大盛りあがり。この不思議な場面から子どもたちの考え方が大きく変わり、「本当に願い事が叶うかも!」という気持ちになったことが目の輝きからひしひしと伝わってきます。
動物の声に従い、ふくろうじいさんに会い、ついに願いを叶える方法を知ることができたゆうき。願いを叶える方法までわかってしまったらもう疑う余地はありません。子どもたちも心を1つにしてゆうきのことを応援します。
この、最初は叶うはずないと思っていたおばあちゃんの願いが、少しずつ起こる不思議な出来事の積み重ねで現実味を帯びてくるワクワク感も、この絵本のとても素敵なところです。
ぜひ、徐々に物語の世界へ入り込みのめり込んでくる子どもの変化も楽しんで見てみてください。
これまでの頑張りやみんなの思いが積み重なる感動的な結末
ゆうきは織姫と彦星にお願いすれば言いとわかり、すぐにるみとたくやに話します。さらにはお母さんにも協力してもらうことを決め、星祭りを開いて織姫と彦星にお願いする場を作ることに。いつの間にか、ゆうきの叶えたいという願いは、みんなの願いになっていました。
ゆうきの家族だけでなく、るみとたくやの家族も協力してくれ、まさにみんなで力を合わせて開くことができた星祭り。この最初はゆうき1人でやっていたことに、みんなが協力してくれるという展開も、なんとも心温まるところです。
こうして、不可能だと思われたおばあちゃんの願いも、あとは織姫と彦星に願うだけ。なんとしても叶ってほしいという気持ちが、絵本の中からも子どもたちからも伝わってきます。
そして迎える物語の結末は、なんとも感動的で少し涙が出てしまうようなものでした。この感動は願いが叶ったからというだけではないのでしょう。ゆうきの一生懸命な頑張りや、その頑張りに協力してくれた友だち、家族、動物たち。すべての積み重ねがあったからこその感動です。
また、この絵本はけっこうボリュームがあります。ボリュームがある分、最後の場面に至るまでのゆうきやみんなの努力が丁寧に描かれていることも、「ついに願いが叶った!」という達成感に一役買っていることは間違いありません。ボリュームある絵本だからこそ描き出せた物語なのだと言えますね。
この、ゆうきやみんなの行動と努力と優しさの積み重ねが見事に報われる、とてもとても感動的な結末も、この絵本のとても素敵で心がほかほかしながらも少し涙ぐんでしまうところです。
ぜひ、最後の場面での子どもたちの表情も見てあげてくださいね。きっととてもいい顔が見られますよ。
二言まとめ
亡くなったおじいちゃんとダンスがしたいという実現不可能なおばあちゃんの願いを、一生懸命叶えようとするゆうきの姿に胸が熱くなり応援したくなる。
たくさんの努力と優しさの積み重ねが見事に花開く結末に、心からの感動をもらうことができる七夕に読みたくなる絵本です。
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