ねがいぼしかなえぼし(3歳~,絵本,七夕・行事)

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作:内田麟太郎 絵:山本孝 出版:岩崎書店

七夕伝説をとてもドラマチックに描いた絵本。

織姫と彦星の心の動きがダイレクトに伝わってきます。

画面の演出も相まって、まるで恋愛映画を見ているような気分になれる七夕絵本です。

目次

あらすじ

あるところに、しほちゃんという女の子が住んでいました。しほちゃんにはうみくんという大好きな友だちがいました。けれど、うみくんは引っ越して遠くへ行ってしまったのでした。

七夕の前日、しほちゃんは「うみくんに会わせてください」と短冊に書きました。お母さんと天の川を見るしほちゃん。頭の中には七夕に会うことができる織姫と彦星のことが浮かんできます。

昔、天の国の帝にはよく働く娘がおりました。織姫は一生懸命織物をし、その織物で作った服は帝を引き立ててくれていました。

ある日、帝は織姫に結婚を進めました。織姫も嬉しそうなので、帝は天の川のほとりで牛を世話する彦星を紹介します。織姫と彦星はひと目で恋に落ち、ひと時も離れなくなりました。しかし、2人の仕事は疎かになっていき、帝の服はみすぼらしく、牛はやせ衰えていきました。

ついに怒った帝は、彦星を天の川の向こうへと追放してしまいました。悲しみに暮れる織姫と彦星。悲しみのあまり塞ぎ込んでしまい、帝の服はよりみすぼらしく、牛は次々と倒れてしまったのでした。

見かねた帝は、2人を呼びつけました。そして、元のように働くのなら、1年に1度だけ7月7日に会わせてやると言ったのです。2人は深く頷き、再び真面目に仕事をするようになりました。そしてとうとう7月7日がやってきたのです。

しかし、7月7日は大雨でとても天の川を渡れそうにはありません。それでも会いたい彦星が川に飛び込もうとした瞬間。カササギの群れが飛んできたではありませんか。彦星のまことの思いが伝わったのか、カササギたちは連なって橋になり、織姫と彦星を天の川の上で会わせてくれたのでした。

ついに七夕の日がやってきました。しほちゃんの元へ嬉しそうにやってくるお母さん。うみくんから電話がかかってきたのです。電話でうみくんは夏休みに行くと約束してくれました。しほちゃんは心の中で「ねがいぼし、かなえぼし」とこっそり呟いたのでした。

おしまい!

『ねがいぼしかなえぼし』の素敵なところ

  • 見たことがないほどドラマティックに描きだされる七夕伝説
  • 織姫・彦星が現代とリンクするしほちゃんとうみくんの物語
  • 自分の願い事も叶う気がする期待感

見たことがないほどドラマティックに描きだされる七夕伝説

この絵本のなによりおもしろいところは、織姫と彦星の出会いがものすごくドラマティックに描き出されていることです。

もちろん、話の筋などはよく耳にする七夕伝説とまったく同じです。けれど、昔話感が全然なくこれまで見たことがないほど心揺さぶられる物語として描き出されているのです。

この心揺さぶられるドラマティックさは、

婿を進める言葉に恥ずかしそうに返事をする織姫の姿や言葉

出会って身を寄せ合い「おりひめ」「ひこぼしさま」と名前を呼び合う恋愛ドラマのようなセリフ

など、織姫と彦星の心の機微や恋愛感情が全面に押し出されていることから生まれるのでしょう。加えて、

身を寄せ合うシーンでは夕日を見つめながら名前を呼び合う

大荒れの天の川では手前に織姫、向こう岸に小さく彦星、間に荒れ狂う天の川に横殴りの雨と、まるで映画のワンシーンのような構図

など、まさにドラマティックとしか呼べないような演出がなされています。もちろん、他の場面も同様に牛が弱っていく姿なども、感情が揺り動かされるような描かれ方がされています。

もう、この絵本の織姫と彦星の姿は、行事絵本や七夕伝説を越えた人間ドラマとして目に映るので、ものすごく新鮮に感じるのがすごいところ。七夕伝説を知っていてもハラハラドキドキしてしまうのです。

この、セリフ・行動・演出すべてがドラマティックに描き出された、まるで恋愛映画を見ているような織姫と彦星の姿が、この絵本のとてもユニークなところです。

織姫・彦星が現代とリンクするしほちゃんとうみくんの物語

ドラマティックな七夕伝説がメインとなりつつ、現代でもう1つの物語が同時進行していき、古代の七夕伝説と現代の七夕がリンクするのも、この絵本のとても素敵なところとなっています。

友だちが引っ越してしまい、会いたいと短冊に願いを込めたしほちゃん。大好きなのに離れ離れになるという境遇を織姫と彦星に重ねます。だからこそ、七夕に会える彦星と織姫に希望を託しているのでしょう。

七夕伝説が一段落し、現代へと舞台が戻ってくると、

しほちゃんも会えるかな・・・?

と、子どもたちもしほちゃんとうみくんを織姫と彦星に重ね合わせ心配します。そして、ちょうど心配している時にかかってきたうみくんからの電話と夏休みに来てくれるという言葉。

願いが叶ったよ!

織姫と彦星が叶えてくれたんだ!

と顔を見合わせ大喜び。七夕伝説と現代の短冊が見事に繋がったのです。まさに、しほちゃんが心のなかで呟いた「ねがいぼしかなえぼし」という言葉が、子どもたちの心の中でも聞こえたことでしょう。織姫と彦星が自分たちと見事にリンクしたのです。

この、物語を現代と古代の2段階にすることで、織姫・彦星の物語を自分たちの物語と繋げて、七夕の由来を知りつつより身近なものにしてくれるところも、この絵本のとても素敵なところです。

自分の願い事も叶う気がする期待感

織姫と彦星の願いが叶い、しほちゃんの願いも叶ったところを見ていたら、自分の願いも叶う気がしてくるのは自然な流れ。否が応でも短冊に書いた願いに期待が膨らみます。

もちろん期待が膨らむだけでも十分ですが、この絵本の素敵なところはお願いをする場所がよくわかるというところ。「ねがいぼしかなえぼし」という言葉通り、織姫と彦星に願いを届けたくなるのです。

七夕で願い事をする時、願い事をする対象ってけっこう宙ぶらりんになりがちです。神様?星?天の川?笹の葉?子どもそれぞれに色んなところへ願っていることでしょう。でも、この絵本を見ると、織姫と彦星が「ねがいぼしかなえぼし」であることがわかり、織姫と彦星にお願いしたくなります。

織姫と彦星にお願いしたいということは、どこにいるか探さなくてはいけません。自然と星空に目が向き、どの星が織姫で彦星なのか調べたくなってしまうのです。

この物語から自然と空に目が向いて、星について調べたくなるのもこの絵本のとても素敵なところです。織姫と彦星を見つけてお願いしたら、これまでよりも願い事が叶う気がしてくるのは間違いありません。

これまでよりも七夕や星空に詳しくなり、七夕の日やお願いがより楽しみになることでしょう。

二言まとめ

織姫と彦星の物語をこれまで見たことがないほどドラマティックに描き出し、まるで恋愛映画を見ているような気分になる。

古代の七夕伝説と現代の物語がリンクすることで、七夕という行事をより身近に感じられる七夕絵本です。

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登る保育士ホイクライマー
保育士
絵本大好きなクライミングが趣味の保育士/保育士歴12年/クライミング歴10年
年間200冊以上読み聞かせをしてきた経験を元に、絵本の紹介をしています。
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