文:富安陽子 絵:山村浩二 出版:理論社
数え歌は数あれど、妖怪数え歌は珍しい。
心地の良いリズムに乗せて、色々な妖怪が登場します。
町の中でも妖怪用心火の用心・・・。
あらすじ
1丁目のいすけさん。
銀杏並木の下で手招きしているじいさんが・・・。
あっという間に伸びあがる。
見越し入道じゃないかいな。
2丁目のにすけさん。
人形屋の前でおかっぱ頭の嬢ちゃんに・・・。
心の中を悟られた。
妖怪サトリじゃないかいな。
3丁目のさんすけさん。
裁判所の角で山高帽のおじさんが・・・。
ヌラリと消えてヒョンと出る。
ヌラリヒョンじゃないかいな。
4丁目、5丁目、7丁目と続く歌。
どんな妖怪が現れるのでしょうか・・・。
『妖怪用心火の用心ー九十九さんちのかぞえうたーの素敵なところ
- リズム感のいい数え歌とどんな妖怪が出てくるのかというドキドキの融合
- つい言いたくなる「妖怪用心火の用心」というフレーズ
- 妖怪一家の九十九さんちが魅力的
数え歌の絵本だけあって、とても耳に心地のいい文章で物語が進んでいきます。
そこに妖怪という要素が入ってくることによって、ドキドキ感が加わります。
一見普通の人に見える妖怪たち。
しかし、ページをめくるとその本性をあらわします。
流れがわかってくると、次は何の妖怪かとドキドキワクワク。
その一連の流れが、リズム感のいい数え歌の文章で流れるように進んでいきます。
この感覚は他では中々味わえません。
子どもたちも人間の姿では「綺麗!」「優しそう!」と言っていますが、本性をあらわすと「不気味・・・」「いやだー!」などその声は悲鳴に変わります。
そんな悲鳴を仕切り直しにするのが「妖怪用心火の用心」というフレーズです。
このフレーズが来たら、次の場面に行く合図。
子どもたちもつい口ずさんで、気持ちが切り替わります。
このフレーズがとてもいいテンポを作ってくれるのです。
そんな怖がられる妖怪一家の九十九さんですが、同時にとっても魅力的。
不気味な部分がたくさんありながらも、どこか愛嬌があり憎めないのです。
特に勢ぞろいした場面では、みんな楽しげで友だちになってみたいなと思うほど。
リズムのいい数え歌に、妖怪一家の魅力がたっぷり詰まった絵本です。
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