たなばたまつり(3歳~,絵本,七夕・行事)

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作:松成真理子 出版:講談社

町で開かれる七夕祭りにはたくさんの短冊が飾られます。

毎日、子どもから大人まで色んな人が願い事を書きにきました。

短冊は七夕の日まで風にも雨にも負けず願い事を守ります。

そして、七夕の日に短冊から願い事が飛んでいき・・・

目次

あらすじ

もうすぐ七夕です。町では広場で七夕祭りが開かれます。みんな短冊に願いを書き、広場の笹に飾るのです。

姉弟のさきちゃんとたーくんがやってくると、短冊に願い事を書き始めました。たーくんはまだ字が書けないので、お姉ちゃんの顔を描きました。さきちゃんも嬉しくなって、たーくんの顔を描きました。

隣の村からバスに乗ってやってきたのはげんごろうさんと孫のげんきくん。2人ともいい短冊が書けたようです。

学校の帰りに寄ったのはけんかの強いよしまるくん。よしまるくんは妹が短冊を描き終わるのをじっと待ってくれています。

その後も、トラックの運転手トラさんに、今年受験のお兄さん、犬を連れたお姉さんなど、色んな人が短冊を飾りに来ます。広場の笹も色とりどりの短冊でどんどん賑やかになっていきました。飾られた短冊が揺れると、なんだか秘密の言葉を話しているみたいです。

短冊は強い風の日には、みんなの願いが飛ばされてしまわないように頑張ります。雨が降っても短冊は頑張っています。

そして、晴れた日に太陽が短冊を乾かしてくれると、いよいよ七夕祭りの日がやってきたのでした。七夕祭りにはたくさんの人が集まりとても賑やかです。

七夕祭りも終わりみんなが寝静まった頃、書かれた願いは短冊を離れ夜の空へ昇っていきます。空へ昇った願い事は星々に届いていきます。近くに届くものもあれば、遥か遠くの星に向かって飛んでいくものも。そして、願いが届くと星がキラリと光って合図をしてくれるのです。

今夜も遠い星から合図が届き、星がキラキラ光っていますよ。

おしまい・・・。

『たなばたまつり』の素敵なところ

  • 短冊に書かれた願いがどこに行きどんな風に叶うのか教えてくれるロマンチックな物語
  • 短冊に描かれた様々なお願いと短冊の頑張り
  • 願いの成就と星がきらめく優しい理由

短冊に書かれた願いがどこに行きどんな風に叶うのか教えてくれるロマンチックな物語

この絵本のなにより素敵なところは、短冊に書いたお願いがどんな風に叶うのかをとてもロマンチックに教えてくれるところです。

短冊に書いた願いが叶う物語は数ありますが、書いた願い事がどんな風に叶っていくのかを描いた絵本は見たことがありません。ですが、この絵本では願い事が叶うメカニズムをとても美しくロマチックに描き出してくれるのです。

みんなが短冊に込めた願いは七夕の夜遅く、短冊を抜け出して空に向かって飛び出します。この願い事が飛び出す光景がなんとも幻想的で美しい。十人十色の様々な願いの光が宙を舞い踊ります。暗い夜空とのコントラストで願いの色もより鮮やか。子どもたちも、

きれい・・・

お願いってこんな風に飛んでいくんだ・・・

と思わずうっとり。自分たちが知っている七夕の先を見て驚いていました。

けれど、飛んでいっただけでは終わりません。空高く昇った願いは星々へと届き願いを叶えてくれるのです。なんとロマンチックで説得力のあることでしょう。

こうやってお星さまに届くのか~

私の願いもちゃんと届くかな?

と子どもたちも自然と納得。これ以上、子どもたちの世界観にぴったりと合ったメカニズムは思いつきません。短冊、願い事、星・・・すべてのことが噛み合って、「そういうことだったのかぁ」と心から納得してしまいます。

この、短冊に書いた願い事がどうなるのかを描き出した、説得力抜群のロマンチックなメカニズムがこの絵本のとても素敵なところです。

ぼくは短冊の話をする時に、この絵本のメカニズムを使って説明していきたいと思っているくらい感動してしまいました。ぜひ、幻想的な絵とセットで読んでみて欲しい1冊です。

短冊に描かれた様々なお願いと短冊の頑張り

短冊に込められた願いに関する絵本だからこそ、人々が短冊へ願いを込める姿も丁寧に描かれます。七夕祭りの広場にやってくる様々な人々を1人ずつズームアップして見せてくれるのです。

仲のいい姉弟、おじいちゃんと孫、元気者だけど妹に優しいお兄ちゃんなど、次々と短冊を書き飾っていきます。同時に、笹と短冊が見開きで大きく描き出されたページでは、実際に書かれた短冊をじっくり見ることができる作りになっています。

これまで出てきた登場人物がどの短冊を書いたのか予想もできるようになっていておもしろい。

あ!顔の絵が描いてあるのさっきの姉弟じゃない?

あのお兄ちゃん、怒られませんようにって書いてある!

と、思わず一つ一つの短冊を見るという、現実の世界で飾られた短冊を一つ一つ見るのと同じ体験をさせてくれるのです。他にも大人から子どもまで色々な短冊があり、ずっと見ていても飽きません。

また、願い事を書く場面だけでなく、飾った後の短冊についても丁寧に描いているのも、この絵本ならではのユニークなところ。風の日も、雨の日もみんなの願い事を守っている短冊の姿が描かれているのです。

短冊が願い事を守っているという発想はまったく頭になく、子どもたちも同じだったようで、

短冊さん頑張ってくれてるんだ・・・

短冊さんありがとう!

と自分が書いた願いではなく短冊そのものにも愛着が湧いてきます。この絵本を見た後だと、七夕の日に向けて傷んでいく短冊がとても愛おしく見えますよね。

この、短冊に願い事を書く姿から、みんなの願い事を身を挺して守ってくれている短冊の姿まで、七夕当日への過程を丁寧に描くことで、七夕に関わるすべてのものをより愛おしく思わせてくれるのも、この絵本のとても素敵なところです。

願いの成就と星がきらめく優しい理由

短冊によって守られた願いが、七夕の日に空へ昇り星へ届いて願いが叶うというメカニズム。この願いが成就するメカニズムだけで十分に魅力的ですが、願いが叶わなかった子にまでロマンチックな説明を用意しているのも、この絵本の本当にすごいところとなっています。

願いは星に届くことで、願い事が叶います。けれど、すべて近い星に飛んでいきすぐに叶うわけではないのです。遠い星に飛んでいく願いもあれば、遥か遠くの何年もかかる星に飛んでいく願いもあります。つまり、すぐに叶わなくても自分の願いはちゃんと飛んでいっているということ。

なんと、希望に溢れたメカニズムなのでしょう。これまで、

ぼくの願いは叶わなかった・・・

という否定の感情を抱いていた子の目線を、

まだお星さまに届かないかな?

というポジティブな期待へと向けてくれるメカニズム。

しかも、願いが叶わなかった子の説明になっているだけではなく、「大人になったら、消防士になりたいです」のような、遠い未来に対して願い事をした子への説明にもなっているのが本当にすごい。七夕の願い事に関するすべての疑問を、子どもの夢を壊さないロマンチックなメカニズムで説明してしまうのですから。

願いが届くと星がきらめくというのも夢があり、空にきらめく星を見るたび

今の私の願いかな!?

とワクワクしてしまいます。日々の生活が七夕を通してより楽しくなりますね。

この、星に願いが届くことで自分の願いが成就するという、願い事をしたすべての人に夢を与えてくれるまだ願いが叶っていない理由も、この絵本のとても素敵なところです。

この絵本を見たら、短冊や願い事に対する子どもからの「なんで?」に全部答えられてしまいますね。

二言まとめ

短冊に書かれた願い事が叶うまでのメカニズムを、子どもの世界観で説得力抜群かつロマンチックに描き出した。

願いが叶った人も叶っていない人も、自分の願い事や書いた短冊がとても愛おしく感じられる七夕絵本です。

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登る保育士ホイクライマー
保育士
絵本大好きなクライミングが趣味の保育士/保育士歴12年/クライミング歴10年
年間200冊以上読み聞かせをしてきた経験を元に、絵本の紹介をしています。
専門書や学術書を読むのも好き!
その中から、日々の保育や子育てに役立ちそうな知識も、深め・濃いめ・具体例多めで、紹介しています。
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