作:もとしたいづみ 絵:ふくだいわお 出版:世界文化社
七夕の願い事を見るために、たなばたセブンが保育園へやってきた。
七夕の前日、みんなの願い事が叶うようにてるてる坊主を作っているうち寝てしまったセブン。
起きたら、子どもたちが登園していた。
セブンはなぜてるてる坊主を作っていたのか説明するため織姫と彦星の話を始めるのだった。
あらすじ
七夕の前日、空からたなばたセブンが、保育園へ飛んできました。みんなの書いた短冊を見るためにやってきたのです。
子どもたちの色々な願い事を見ていくうちに、晴れないと願い事が叶えてもらえないことを思い出し、たくさんのてるてる坊主を作り始めたのでした。
ところが、そのまま寝てしまったセブン。起きると、登園してきた子どもたちに囲まれていました。セブンは起きると、子どもたちに七夕の話を始めます。
昔、天の神様には織姫という娘がいて、はたを織り素晴らしい布を作っていました。ある日、はたを織る織姫の家を牛飼いの彦星が通りがかり、一目見るなり互いを好きになりました。
織姫と彦星はまもなく結婚しましたが、2人は楽しく遊んでばかり、ちっとも仕事をしなくなったのです。天の神様は何度も注意をしましたが、2人は聞く耳を持ちません。
ついに怒った神様は、織姫と彦星を天の川の向こうとこちらへ離れ離れにしてしまったのでした。離れ離れになった2人は悲しみのあまり仕事が手につきません。見かねた神様はちゃんと仕事をする代わりに、1年に1度会わせることを約束すると2人はまじめに働くようになったのです。
それから7月7日の夜にだけ天の川を渡って会うことができるのですが、雨が降ると川の水が増え会えなくなってしまうのです。
と、セブンは話を締めくくりました。
雨が降って会えなくなってはかわいそうだと、子どもたちはてるてる坊主を手伝い始めました。みんなでてるてる坊主を作った結果、笹はてるてる坊主だらけです。てるてる坊主のおかげか、七夕の夜はすっきりと晴れ天の川と織姫・彦星がはっきりと見えました。
空の上から織姫と彦星はみんなにお礼を言ったのでした。

おしまい!
『たなばたセブン』の素敵なところ
- たなばたセブンのまるで子どものような姿がおもしろい
- セブンが話してくれるコンパクトにまとまった七夕伝説
- てるてる坊主だらけの重そうな笹
たなばたセブンのまるで子どものような姿がおもしろい
この絵本のとても印象的なところは、たなばたセブンのまるで子どものような姿です。
姿は完全にウルトラマンセブンなたなばたセブン、空だって飛ぶことが出来ます。けれど、みんなの短冊を見た時の反応はまるで子どものよう。
「母さんが痩せますように」という願い事に「無理!」と返したり
「おばあちゃんの病気が治りますように」という願い事に思わず泣いてしまったり
「犬が飼えますように」という願い事に自分も犬を飼いたくなったり
と大人げない反応を返していきます。そんなたなばたセブンの全然ヒーローっぽくない姿に、子どもたちも大笑い。

「無理!」だって!



セブン泣いてるよ!
と楽しそう。その後のよだれを垂らして寝ている場面でも、



セブンってヒーローなのに子どもみたいだね!
とすっかりヒーローからお友だちカテゴリーになっていました。
この、ウルトラマンセブンな姿をしているのに、ヒーロー感を全然感じさせない親近感がこの絵本のとてもおもしろいところです。
セブンが話してくれるコンパクトにまとまった七夕伝説
てるてる坊主を作りながら寝てしまったセブンですが、起きた後で子どもたちに七夕の話をしてくれます。この時話す七夕伝説が、とてもわかりやすくコンパクトにまとまっているのも、この絵本のありがたいところです。
見開きで4ページくらいにまとめられた七夕伝説は、非常に過不足なくまとまられています。
織姫と彦星の出会い
結婚してから仕事をしなくなったこと
神様にいくら言われても仕事をせず怒りをかったこと
仕事をきちんとする代わりに1年に1度会えること
それぞれの重要な場面もしっかり絵で描かれていて、本当にわかりやすくまとめられているのです。
わかりやすくコンパクトにまとめられていることで小さな子にもわかりやすく、たなばたセブンのメインストーリーも邪魔しません。とてもちょうどよいものになっているのです。
この、コンパクトながらしっかり七夕の由来についてわかるのも、この絵本の行事絵本としてありがたいところです。
てるてる坊主だらけの重そうな笹
七夕伝説を聞き、雨が降って会えなくなったらかわいそうだとてるてる坊主作りを手伝ってくれる子どもたち。みんなでてるてる坊主を作った結果、笹がすごいことになってしまうのもこの絵本ならではのおもしろいところです。
普通は短冊と笹飾りでカラフルな七夕の笹ですが、この絵本の笹は短冊以外は緑と白。しかも100個くらいてるてる坊主がついているので、ものすごく重そうなのです。このユニーク過ぎる笹を見て、



うわ!?すごいてるてる坊主ついてる!?



倒れちゃわないのかな・・・
と子どもたちも驚いたり心配しつつも大笑い。インパクトの強すぎる笹を見ておもしろがっているようでした。
けれど、この大量のてるてる坊主のおかげで七夕の夜はすっきりとした晴れ模様。天の川も織姫・彦星もすっきり見えてみんな大喜びです。もちろん子どもたちも、



やった!晴れたよ!



天の川が見える!
と大喜び。絵本の仲の保育園に通っているのかと思えるくらい、自分ごとのように喜んでいました。
この、不思議な笹のおもしろさと、みんなで力を合わせたからこその空が晴れた嬉しさも、この絵本のとても素敵で楽しいところです。
さっそく、七夕に備えてるてる坊主を笹に飾りたくなりますね。
二言まとめ
セブンの姿に盛り上がるけど、ヒーローとは思えないおちゃめな姿に大笑いさせられる。
七夕の由来をコンパクトにわかりやすく伝えてくれつつ、てるてる坊主で七夕の空を晴れさせるというワクワクする物語も楽しめる七夕絵本です。
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