おこだでませんように(4歳~,絵本,七夕,感情)

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作:くすのきしげのり 絵:石井聖岳 出版:小学館

家でも学校でも怒られてばかりいる男の子。

でも、男の子なりの考えがあっての行動なのです。

七夕の日、男の子は短冊に覚えたばかりのひらがなで「おこだでませんように」と一生懸命願い事を書きました。

先生は男の子の短冊を受け取ると・・・。

目次

あらすじ

あるところに小学1年生の男の子がいました。男の子は家でも学校でもいつも怒られてしまいます。

お母ちゃんが仕事で遅いときは、男の子が妹の面倒を見ます。でも、いつもわがままを言う妹に怒ってしまい泣かせてしまうのです。すると、帰ってきたお母ちゃんに男の子が怒られます。

母ちゃんに怒られながら男の子は、妹を泣かせてしまうのは妹がわがままを言うからだし、宿題が終わっていないのは妹の世話をしていたからだと思っています。でも、言葉には出しません。どうせ言ってももっと怒るに決まっているから。男の子は横を向いてなにも言わずに怒られるのです。

男の子は学校でもよく怒られます。女の子に捕まえてきたカマキリを見せたり、給食当番で大盛りにしすぎたり。

ある日の休み時間、男の子はサッカーに入れてもらおうとしたけれど、マーくんとターくんは入れてくれませんでした。理由を聞くとルールを知らないし乱暴だからと言われてしまい悔しくって、キックとパンチをしてしまい2人は泣いてしまいました。

先生がやってくると男の子だけが怒られます。先生の言葉に2人が先に意地悪を言ったからだし、自分も「仲間に入れてやらへん」と心にパンチをもらっていると思いましたがやっぱり言葉にはせず、なにも言わずに怒られました。

男の子は本当は怒られたくないし、「ええこやねえ」って言われたいと思っています。でも、先生もお母ちゃんも自分を見るときはいつも怒った顔。お母ちゃんにきれいでいて欲しいから「怒るとシワが増える」と言ったのだし、入学式の時「声が大きく元気がいい」と言われたから休み時間に大声で歌っていたのに・・・。

男の子は布団の中で一生懸命考えました。どうやったら怒られないのか?どうやったら褒められるのか?自分は悪い子なのか・・・と。

7月7日、授業の時間にみんなで短冊に願いを書きました。みんなスラスラ書き終わるけれど、男の子は一生懸命お願いを考えています。すると、「はよう書きなさい」とまた怒られてしまいました。

男の子は入学してから教えてもらったひらがなで、1番のお願いを短冊に書きました。一文字ずつ心を込めて。

「おこだでませんように」と。

書き終わったのはいつものように男の子が最後です。男の子はまた怒られると思いながら先生に短冊を渡しました。すると、先生は長いこと男の子短冊を見た後に、泣きながら男の子に謝り、「よう書けたねえ。ほんまにええお願いやねえ」と褒めてくれたのです。

男の子が驚きました。さっそくお願いが叶ったのです。

その日の夜、先生から家に電話がありました。先生とお母ちゃんは長いこと電話で話しています。そして、電話が終わると、お母ちゃんが男の子を抱っこしてくれました。いつも妹にするように。お母ちゃんは謝りながら男の子を抱きしめてくれたのでした。

男の子は布団の中で七夕さまにお礼を言いました。男の子はとても幸せな気持ちです。七夕さまへのお礼にもっといい子になることを約束し、笑顔で眠りにつきました。

おしまい!

『おこだでませんように』の素敵なところ

  • 子どもが怒られている時の心の中がよくわかる
  • 一生懸命書いた短冊で初めて伝わった思い
  • 大人も子どももハッと気付くものがある

子どもが怒られている時の心の中がよくわかる

この絵本のなにより心に響くところは、リアルに描き出された子どもの心理描写です。

当たり前のように子どもを怒ってしまいがちですが、子どもの心の中を見てみると、それぞれにたくさんの理由や思いが渦巻いています。この絵本では子どもの中に渦巻く心を男の子の一人称での語り口でとてもリアルに伝えてくれるのです。

一生懸命妹の世話をしようと頑張った結果、泣かしてしまっているというやるせなさ

妹は泣き止んでいたのに、お母ちゃんが帰ってきた途端泣き出すというズルさへの憤り

相手も意地悪を言ったのに決めつけで怒られる理不尽さ

男の子なりに納得できないことがたくさんあります。

でも、この男の子のとても悲しいところは、心の中の思いを言ってもムダだと思っていること。きっと、気持ちを伝えた時に「言い訳しないの!」と言われたような経験があるのでしょう。「なにを言っても怒られる」という前提ができてしまっています。

大人はつい言いがちな「言い訳しないの!」「口答えしない!」といった言葉が、どれだけ子どもの心に分厚い壁を作ってしまっているのかが、男の子の心の中を見せてもらったことで、実感できるのではないでしょうか。

他にも、女の子にカマキリを見せて泣かれたり、給食当番で大盛りにしてあげたり、日常のこまごましたことで怒られている男の子。先生は頭ごなしに怒りますが、男の子の表情に悪気はありません。

カマキリ、喜んでくれると思ったんじゃない?

大盛りにしてもらって嬉しそうなのに

と、子どもたちのほうが男の子の気持ちを汲み取ってくていました。自分なりの理由があるのに怒られてしまう悔しさを自分も体験したことがあり共感できるからなのでしょう。

中でも心にぐっと来るのが布団の中で自問自答する場面。自分が悪い子なのかと自信を失う様子が見事に描き出されています。子どもを怒ってばかりいるということが、どれだけ子どもにとって心の傷になっているのか、自尊心を奪っているのかが痛いほどに伝わってきて、心が締め付けられるのです。

この、怒られた時の男の子の気持ちや1つ1つの行動にその子なりの理由があることが、男の子の飾り気のない言葉でダイレクトに伝わってくるのが、この絵本のとても素敵なところです。

一生懸命書いた短冊で初めて伝わった思い

いつも怒られている男の子は、七夕の短冊へ怒られたくないという思いを書くことに決めました。この男の子が一生懸命短冊を書く姿や願いが叶う嬉しさも、この絵本の思わず涙ぐんでしまうほど愛おしいところとなっています。

授業で短冊を書くことになり、誰よりも真剣に願い事を考えた男の子。出てきた願いは「怒られませんように」でした。心の中で1年生ということに誇りを持っていた男の子は、覚えたてのひらがなで1文字1文字心を込めて一生懸命に書いていきます。

そして、書き上がったのが「おこだでませんように」という、なんとも不器用で1年生らしい心のこもった文章だったのです。一生懸命ひらがなを思い出しながら書いたことが伝わってくるとても味のある人間味溢れた言葉なのでしょう。子どもたちも、

頑張って書いたんだね!

お願い叶えてください!

と文章の不完全さなど気にせず、一生懸命男の子の祈りが叶うことを願っていました。

男の子の短冊を見た先生は思わず泣き出してしまいます。そりゃそうですよね。読み手ですら絵本の中の短冊を見ているだけで涙ぐんでしまうのだから、実際に短冊を受け取った先生はもっともっと心が締め付けられたことでしょう。子どもがこんなにも怒られたことを真剣に悩んでいたのかと思わされたことは間違いありません。

さらに、先生がお母ちゃんに電話をしてくれ、男の子の気持ちをしっかりとお母ちゃんにも伝えてくれ、家でも抱きしめてもらえます。抱きしめられた時の照れくさそうで嬉しそうな表情に子どもたちも自分のことのように嬉しそう。

男の子、笑ってるよ!

願い事叶ってよかった~

と初めて見せた男の子の笑顔に、子どもたちも笑顔になってしまうのでした。

この、「おこだでませんように」という心からの願いを短冊に書いて伝えたことで、願いが叶い褒めてもらって笑顔になる男の子と一緒に自分まで笑顔になってしまうのも、この絵本のとても素敵なところです。

男の子はきっと文字や言葉などで気持ちを伝える大切さを、七夕の体験から学んだのでしょうね。これから妹やケンカした友だちとどんなやり取りの変化があるのかも気になるところです。

大人も子どももハッと気付くものがある

この絵本からは、普段気にも止めていないようなことに、大人も子どももハッと気付かされることがたくさんあるのも素敵なところ。

まず、大人は怒られた子どもの気持ちにハッとさせられます。その場で思わず怒ってしまったことが、

子どもなりの考えがあるのかもしれなかったこと

子どもの話に聞く耳を持っていなかったこと

呪のように子どもの心に残り続けていること

など、子どもの心に大きな影響を与えていたことに、改めて気付かされるのです。大人は怒ることが些細な一過性のことと思いがちですが、子どもにとって大好きな大人に怒られるのは重たい出来事なのです。

反対に、子どもの立場でもこの絵本にハッとさせられるところがあります。

自分が怒ってるときもこんな感じなのかな?

言わないと伝わらないよ

叩いたら怒られちゃうよね

文字にしたら先生にもお母ちゃんにも伝わった

というように、怒っているとなかなか見えてこない自分の姿や、怒った時にどうすればスムーズな解決ができるのかを、客観視させてくれるのです。

特に大事な発見が自分の気持を伝えることと伝え方の大切さ。売り言葉に買い言葉のような伝え方をしたらトラブルが大きくなっていましたが、心を込めて書いた短冊を渡したらしっかりと相手に気持ちが伝わります。男の子の姿から怒った言葉は怒りを生むけど、心を込めた言葉は相手の心に届くのだと実感させてくれるのです。

この絵本には、

大人は自分が先生やお母ちゃんのようになっていないか?

子どもは前半の男の子のようになっていないか?

否が応でも客観的に自分の行動を振り返らずにはいられない、強い力があるように感じます。

ぜひ、「怒りすぎてしまうな」「子どもが怒りっぽい」という人には、1度読んでみてほしい1冊です。

二言まとめ

怒られ続けている男の子の心情がとてもリアルに描き出され、思わず心を締め付けられる。

男の子の心からの願い事を一生懸命短冊に書き形にしたことで、相手に伝わり願いが叶う嬉しさに思わず涙ぐんでしまう七夕に読みたい絵本です。

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登る保育士ホイクライマー
保育士
絵本大好きなクライミングが趣味の保育士/保育士歴12年/クライミング歴10年
年間200冊以上読み聞かせをしてきた経験を元に、絵本の紹介をしています。
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