文:富安陽子 絵:大島妙子 出版:福音館書店
鬼にだって養う家族がいます。
そのためには仕事をしなくてはなりません。
そんな鬼たちの現実と、日常を知ることが出来る絵本です。
あらすじ
地獄勤めのサラリーマン。
赤鬼のオニガワラ・ケンは出雲で開かれる「全国神様サミット」の手伝いのため、出雲に出張に行くことになった。
家族に見送られ、出発したオニガワラ。
まずはめいかいシティ・エアポートで飛行船を待ちます。
同僚の青鬼、オニジマと合流し飛行船ヤマタノオロチ号に乗り込みました。
エコノミークラスだったので、中はぎゅうぎゅうです。
出雲に着くと、神集いの議長殿に挨拶をしに行きました。
そこで海上警備の手伝いをすることを知らされます。
オニガワラとオニジマは出雲の玄関口、稲佐の浜でどんどんやってくる神様を対応したゲートへ案内していきます。
案内を進めていると、ほうきに乗った魔女や、そりに乗ったサンタクロースが通りました。
鬼たちは慌ててこの空域が通れないことを伝えます。
そうこうしているうちに七福神の乗る宝船が浜へ乗り上げてきました。
そんな時も冷静に対応する鬼たち、割り込まずに、船から降りて列に並ぶよう誘導します。
ひと段落し、オニガワラとオニジマが休憩していると、空を黒い雲のようなものが二つ飛んでくるのに気が付きました。
怪しい二つの雲には角の生えた、金髪の鬼のような人影が・・・。
この人影は助っ人の鬼なのでしょうか。
それとも侵入者なのでしょうか・・・。
オニのサラリーマン しゅっちょうはつらいよ』の素敵なところ
- 鬼たちの日頃の仕事ぶりを知ることが出来る
- ぼやきや満員のエコノミークラスなど、世知辛さはまさにサラリーマン
- 出雲大社の神集いがわかりやすくユーモラスに描かれ文化を知るきっかけになる
節分などの印象が強い鬼たちですが、行事がない時はなにをしているのか。
そんな疑問に答えてくれるこの絵本。
出張して、交通整理をする姿はまさにサラリーマンです。
家族のために、地味に見える仕事もしっかりとやり、お給料をもらわなければなりません。
その姿は節分の怖い鬼の印象を大きく変えてくれます。
また、同僚のぼやきを聞いてあげ励ます姿や、エコノミークラスの飛行船で満員の中出雲へ向かう姿など、サラリーマンの苦労も同時に見せてくれます。
働くことの大変さをしみじみと感じさせてくれます。
お父さんも仕事で大変なんだなと思わせてくれるリアルさがあります。
そんな地味な仕事ぶりとは対照的に、出張の舞台は出雲の神集い。
全国の神様が大集合します。
水の神、火の神、服の神から貧乏神まで。
まさに八百万の神様がどんどん集まってくるのです。
そんな伝統的な祭りを鬼たちの働きぶりを通してわかりやすく伝えてくれます。
そこには魔女やサンタクロースが出てくるなどのユーモアも満載。
とても楽しく見ることが出来ます。
伝統文化を伝えてくれつつも、鬼たちの日頃の仕事の大変さ、世知辛さ、そして仕事の達成感を知ることが出来る一風変わった絵本です。
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