文:中川ひろたか 絵:澤野秋文 出版:アリス館
深い深い海の底。
深海魚に海底温泉などどこか不気味で魅力的。
そんな海の底を見るために、海の水を全てなくしてしまったら・・・。
一体どんな世界を見ることが出来るのでしょうか。
あらすじ
男の子が海に来て、海水浴を楽しんでいた。
でも、気になることがある。
「海の底ってどんな風になっているんだろう」
そんなことを思っていると、海の中から海坊主が現れた。
海坊主は男の子の願いを叶えてあげると言い、海の水を飲み始めた。
そして、海の水を全て飲み干してしまった。
すると、島だと思っていたところは地面がせりあがった山だったことに気付いた。
男の子は海坊主の子どもと一緒に海の底を探検することにした。
海の底にはクジラの骨や、クモヒトデ、海底温泉など色々な場所があった。
海溝の中にも降りてみた。
楽しい楽しい探検の時間。
ですが、水のなくなって魚たちは迷惑顔です。
船の船長さんからも苦情が来ました。
海の水は一体どうするのでしょう。
『うみのそこたんけん』の素敵なところ
- 海の水を抜くという発想
- かわいい絵で描かれる、海の底にいる多種多様な生き物たち
- 思わず飛びこみたくなる魅力的な海
海の中を潜って探検する絵本は数あれど、海の水を抜いて歩いて探検するという発想の絵本は珍しいと思います。
この発想のおもしろいところは、地形が直感的にわかること。
島は地面からせりあがった山の先が、水面から顔を出しているだけだということも、自分の立っている地面を基準にして見ることが出来るので、直感的に「なるほど」となるのです。
また、魚が泳いでいないことも斬新です。
打ち上げられて困っている魚と、対照的にあんまり影響されない生き物の差が明確に表れます。
その変わったシチュエーションとよく合っているのが、リアル過ぎないかわいい絵です。
本当に多くの生き物が描き込まれているのですが、どれも表情などがかわいく描かれているのです。
それによって、打ち上げられて困った表情や、男の子を見てびっくりする表情、海坊主に抗議の表情や、水の中で気持ちよさそうな表情など様々表情を見せてくれます。
それにより、生き物にキャラクター性やストーリー性が感じられて、この絵本をより魅力的にしてくれているのです。
本編のほとんどに水がない絵本ですが、海の気持ちよさが十二分に描かれているのも忘れてはいけません。
泳いでいる場面は本当に少ないですが、その少ない場面に魅力が詰まっているのです。
本当に気持ちよさそうで、楽しそうで、すぐにでも海に飛び込みたい気持ちにさせてくれます。
アプローチは変化球ながらも、海の魅力、気持ちよさはストレートに伝わってくる絵本です。
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