作:村尾亘 出版:小さい書房
当たり前のように見ている空。
でも、昔よりも見える空は狭くなってきています。
高層ビルや、大型施設などなどで。
いよいよ空が無くなってしまいそうな時。
自分たちで空を作り始めた人たちのお話です。
あらすじ
ある村に猿の絵描きがいた。
小さい頃から絵を描くのが好きだった。
絵描きが大人になるにつれ、村の緑は消えていき、代わりに家が建った。
背の高い家が窮屈に並んでいて山も見えない。
土地が無くなると、建物は上に伸びていった。
その結果、空が小さくなっていった。
空が見えなくなると、町はどんより薄暗くなった。
住人は気分も落ちこみ、やる気も出ない。
そこで、話し合い空を作ることになった。
絵描きのサルに頼んで、家の壁に空の絵を描いてもらうことにしたのだ。
どんどん注文が入り、絵描きは自分の絵でみんなを喜ばせることが出来て嬉しかった。
ところがある日、鳥が空の絵だと気付かずに壁にぶつかりけがをした。
またある時は、古くなった家を壊すのには金が要るから、空の絵で覆って隠してくれという依頼もあった。
絵描きは裕福になっていったが、疑問もあった。
「ぼくたち、空を作るなんてこと、してよかったのかな。」
絵描きはこの疑問にどんな答えを出すのでしょうか。
『空をつくる』の素敵なところ
- 町の発展には代償があることを教えてくれる
- 自分の本当にしたいことを考えさせられる
- 本物の空の解放感
普段、当たり前のように出来ているビル。
「こんなところにマンション出来るんだ」くらいにしか感じないと思います。
でも、そこには代償として確実に空が減っている事実もあります。
それが進んでいくとどうなるか・・・。
それをこの町の極端な発展を元に教えてくれ、気付かせてくれます。
きっと、自分の子どもの頃の町と、今の町、全然違う人も多いのではないでしょうか。
そんな町で空を作ることになった絵描きのサル。
自分の本当に描きたいものとのギャップに悩まされます。
喜ばれ、必要とされ、お金も十分にもらえる仕事。
仕事としては大成功です。
でも、本当にしたいこと?本当に描きたいもの?
この悩みを持っている人はきっと多いと思います。
そんな悩みにこの絵本は空で答えてくれます。
最後の場面の解放感は本当に心が開くようです。
絵描きのサルを通して、便利さや現代化の歪みに目を向けてくれる。
そして、そこから抜け出した時に、霧が晴れるような解放感を味合わせてくれる絵本です。
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