文:佐々木幹郎 絵:いわむらかずお 出版:復刊ドットコム
「はこぶ」と一言で言ってもその意味は様々。
何を運ぶ?どうやって運ぶ?誰が運ぶ?
そんな「はこぶ」の意味と、運び方の移り変わりがわかる絵本です。
あらすじ
風や波は命を運ぶ。
虫は食べ物を運ぶ。
獣は子どもたちを運ぶ。
鳥はなんでも運ぶ。
人は色々なものを運ぶ。
人は動物を使ったり、車輪を使ったりして運ぶ。
船を使って水の上で運ぶ。
飛行機を使って空の上でも運ぶ。
人が人を運んだりもする。
道には自然に出来た獣道と、運ぶために作った人工的な道がある。
水にも道があり、雨がダムから川、水道管を通って家に届く。
汚れた水は下水処理場へ行き、綺麗になって海へ。
そして蒸発し雨になる。
体の中にも血液が通る道がある。
空気や水は病気も運ぶ。
小さなものから、大きなものまで運ぶ。
言葉は心を運ぶ。
言葉は文字や電波が発明されて遠くまで届くようになった。
映像は言葉で伝わらないものを伝えてくれる。
運ぶ仕事の人もいる。
祭りの神輿では神様を運ぶ。
地球は太陽の周りを回りながら、みんなを運んでいる。
どこへ運んでくれるのだろう。
『はこぶ』の素敵なところ
- 「はこぶ」という言葉の色々な意味に気付かせてくれる
- たくさんの運んでいる絵を見ているだけでも楽しい。
- 発明の歴史を知ることが出来る
「はこぶ」と一言で言っても、運ぶものも運び方も様々です。
自分で運ぶ、道具を使って運ぶ、道を使って運ぶ。
この絵本のおもしろいところは、物を運ぶだけにとどまらないところです。
水道水は運ばれてくること。
血は体の中を運ばれ続けていること。
言葉は心を運んでいること。
などなど、普段「はこぶ」だと思っていないことへも目を向けさせてくれ、言葉の面白さや多様性にも気づかせてくれます。
また、この絵本はたくさんの絵で構成されていて、それを見ているだけでも楽しめます。
どんな虫が、何を運んでいるか。
どんな鳥が、何をくわえているか。
たくさんの人が、なにを運んでいるか・・・。
その中にはユーモラスなものがこっそり紛れ込んでいたりします。
動物を使って運ぶところにサンタクロースがいたり、空を飛んで運ぶところに魔法じゅうたんがいたり。
図鑑のようにじっくりと見るのも楽しい絵本なのです。
そして「はこぶ」の移り変わりが見られるのもおもしろいところです。
車輪も、船も、飛行機も、原始時代のものから、段々と現代のものへ。
今は当たり前の乗り物も、昔の人はこんなものに乗っていたのかと驚かされます。
今の「はこぶ」は当たり前のものではないことに気付かせてくれます。
「はこぶ」という言葉だけではなく、その歴史や言葉の多様性にも気づかせてくれる科学絵本です。
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