とんでもない(5歳~)

絵本

作:鈴木のりたけ 出版:アリス館

鳥のように飛んでみたい。

そんな「○○だったらいいな」と空想したことのある人は多いのではないでしょうか。

でも、本当にいいことばかり?

そんなことを言ったら「とんでもない」と返されてしまうかもしれません。

あらすじ

家の中でどこにでもいる普通の男の子が、考え事をしていました。

自分にしか出来ないことや、自分にしかないすごいことがなにもない。

さいのように鎧みたいな立派な皮があったらいいのに・・・。

それを聞いたサイは言いました。

「とんでもない」

この皮は重くて、歩き回るために力が必要だから、たくさん食べなきゃいけなくて大変だと。

サイはウサギのように身軽に跳ね回ってみたいと言うのです。

それを聞いたウサギは言いました。

「とんでもない」

跳ねすぎて池に落ちたこともある。

落ち着かなくてうんざりだと。

ウサギはクジラのように大きな体でゆったりと泳いでみたいと言うのです。

それを聞いたクジラは言いました。

「とんでもない」

クジラにも悩みがあり、キリンを羨ましがっていて、キリンは鳥を、鳥はライオンを・・・。

それぞれに悩みや憧れがあるようです。

男の子の悩みは解決するのでしょうか。

『とんでもない』の素敵なところ

  • みんなが羨むポイントへの「とんでもない」
  • 悩みがにじみ出ているどんよりとした絵
  • いいことばかりじゃないけれど、それも楽しむ最後の一コマ

ウサギと言えば高くジャンプ出来、キリンと言えば長い首。

そんな動物たちの代名詞、憧れを抱く子どもたちも多い中、返事はまさかの「とんでもない」。

これには子どもたちも「え!?」「どうして!?」と大混乱。

その内容も、けっこう世知辛く、現実的な問題が多く予想外。

でも、なんだか納得できるものだから、子どもたちも真剣に聞き入ってしまいます。

「とんでもない」の先が気になって、動物たちの苦労話に夢中です。

そんな苦労話を語る動物たちの絵はとても独特。

キャラクターはデフォルメされているのですが、その顔からにじみ出る苦労は妙にリアル。

この絵本にぴったりのどんよりした雰囲気を醸し出しているのです。

それぞれに苦労もあり、大変なんだと言うことに気付かせてくれるこの絵本。

そのテーマ故に哀愁漂う雰囲気なのですが、最後の最後に少しだけ救われます。

一番最後に一コマだけ、その苦労の中でも工夫して楽しむ姿が描かれているのです。

生まれ持ったものはしょうがないので、それをどう楽しみ、活かすかは自分次第。

そんなことを考えさせてくれます。

羨ましいと思っても、相手は相手で苦労がある。

そう気づかせてくれる、不思議な魅力の詰まった絵本です。

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