作:いわさきさとこ 出版:BL出版
おばけの足元をよく見たことがありますか?
どんな靴を履いているでしょう?
裸足のもの、わらじのもの、下駄をはいているもの・・・。
そんなおばけたちが現代の靴を履いたら、その履き心地はどうでしょう。
あらすじ
にぎわい通りの商店街に靴屋さんがいた。
商店街はさびれていて、靴屋さんも店を閉めようか考えている所だった。
そんなある日の夜、お客さんがやってきた。
それはなんとオバケの提灯小僧だった。
びっくりした靴屋は逃げ出しましたが、提灯小僧は必死に追いかけてきました。
靴屋さんは仕方なく立ち止まり、話を聞いてみることにしました。
提灯小僧はアスファルトの道を草履で歩いているので、足の裏は豆だらけ。
足が痛くて困っているのでした。
そこで靴屋さんは提灯小僧に、そこの柔らかい運動靴をはかせてあげました。
提灯小僧は大喜び、何度もお辞儀をしながら夜の闇へと消えていきました。
次の夜、提灯小僧が天狗を連れてやってきました。
天狗の高下駄が折れてしまっています。
最近は木が少なくなったので、仕方なく電柱から電柱へ飛び移っていたら折れてしまったと言うのです。
靴屋さんは天狗にかかとが頑丈な皮のブーツを履かせてあげました。
喜んだ天狗は、あっという間につむじ風とともに消えていきました。
次の夜になると、噂を聞き付けたおばけたちで、店の前は大行列。
靴屋さんはそれぞれに合った靴を履かせてあげました。
みんな大喜びで帰っていきました。
しかし、その次の夜。
靴屋さんは夜遅くまで店を開けていましたが、誰も来ませんでした。
素敵な靴を手に入れたオバケたちはもう店に来ることはないのでしょうか。
『くつやさんとおばけ』の素敵なところ
- おばけにあった靴を見つけてくれる靴屋さん
- 靴を貰ったおばけの嬉しそうな顔
- でも、靴が必要になった理由が寂しく、奥深い
最初はおばけを怖がっていた靴屋さん。
でも、おばけの悩みを聞き、その特性や仕事に合わせた靴を選んでいく姿はまさにプロフェッショナル。
力仕事の多い鬼には安全靴。
用水路に住む河童には滑らないゴムサンダル。
などなど、おしゃれさだけでなく、機能性もしっかり考え選んでいきます。
それを貰ったおばけたちの嬉しそうなこと。
まるで、新しいおもちゃをもらった子どものように喜んで帰っていきます。
そして、靴屋さんへの心からの感謝が伝わってきます。
でも、靴が必要になった背景は、現代社会で暮らすおばけの苦労もまた感じさせるものです。
昔ながらの環境がなくなり、身に着けているものが時代に合わなくなってしまった。
そんな寂しく、色々と考えさせられる要素も含んでいます。
おばけたちの現代への適応の苦労が根底にありつつも、靴屋さんの優しさで明るく前向きになるおばけたち。
そのやり取りを見ていると、現代でもおばけと共存できる道が見えてくる気がします。
靴を中心にした、おばけと人間の未来を考えさせられる絵本です。
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