作:ティエリー・ロブレヒト 絵:フィリップ・ホーセンス 訳:野坂悦子 出版:文溪堂
言ったら怒られる。
そんな秘密があると、どこか落ち着かずソワソワ。
そんなソワソワから生まれるオバケをご存じですか?
あらすじ
ママの部屋には触ってはいけない真珠の首飾りがある。
女の子サラはどうしても触ってみたくて、こっそりとママの部屋に忍び込んだ。
しかし、真珠の首飾りを首に巻いてみると切れてしまった。
転がった真珠を拾い集め、引き出しの後ろに隠し部屋を出た。
次の日、静かにしていたら、ママが「どうしたの?」と声をかけてきた。
本当のことを言いたかったけど「ううん、べつに」と答えた。
その途端、口からオバケが飛び出した。
オバケは部屋を飛び回りながら、真珠の首飾りのことを大声で話している。
でも、その声はサラにしか聞こえないみたいだった。
パパが帰ってきた。
甘えたいのに、オバケが間に入って邪魔をする。
ひざに座ることも、抱っこしてもらうことも出来なかった。
夜になっても眠れない、オバケがいるからだ。
サラはオバケに正体を聞いてみた。
オバケはないしょオバケだと答えた。
みんなが内緒にした言葉を繰り返すオバケだった。
翌朝、ママに真珠の首飾りのことを聞かれた。
サラが知らないと言うと、ふたつめのオバケが口から飛び出した。
学校ではイライラしていると言われた。
みんなが心配するので「大丈夫」と答えるたびにオバケが増えた。
家の中はないしょオバケでいっぱいだった。
ママに話しかけようとしたり、パパに甘えようとするたびないしょオバケが邪魔をする。
サラは部屋のすみっこから動けなかった。
このまま、ないしょオバケはどんどん増えてしまうのでしょうか。
『いじわるなないしょオバケ』の素敵なところ
- 隠し事がある時にモヤモヤ感がリアルに描かれている
- それを子どもにもわかりやすいオバケとしてあらわしている
- オバケとの付き合い方にも触れられている
隠し事がある時、心がモヤモヤしてザワザワして、いつも通りの行動が出来なくなることがあると思います。
子どもならなおさらです。
そんな落ち着かない様子を見事に描き切っているこの絵本。
上手く話しかけられない、中々眠れない、イライラする、そして頭の中を内緒にしていることがグルグル回る。
そんな様子をサラを通して見せてくれます。
この絵本の素敵なところは、それを子どもにもわかりやすく伝えやすいようにオバケにしたこと。
この複雑な感情を伝えるのは難しいと思います。
なんとなくわかるけど、言葉では表現できない。
そんな時、「ないしょオバケがいる」と言えば、一言で伝わります。
ないしょオバケの怖い所は、一つの内緒から、どんどん内緒が増えて行ってどうしようもなくなってしまうこと。
そんな所もきちんと、かつ、オバケを使いわかりやすく表現している所が本当にすごいと思います。
そして、最期にこの絵本の素敵なところがもう一つあります。
それはないしょオバケが悪者ではないところです。
最後の場面で「ないしょオバケは時々飛んでくる。なんでも、人に話せるわけじゃないから」と語られます。
内緒があることを否定せず、話せないことだってあることもきちんと伝えてくれています。
そんな内緒をとてもフラットにわかりやすく、オバケに例えて伝えてくれるとても素敵な絵本です。
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