ふるやのもり(5歳~)

絵本

再話:瀬田貞二 画:田島征三 出版:福音館書店

この世で一番怖いものはなんだろう。

それは「ふるやのもり」。

そんな聞きなれない言葉と恐怖に翻弄される・・・笑い話です。

あらすじ

昔、ある村はずれにじいさんとばあさんが住んでいました。

2人は立派な仔馬を育てていました。

雨の降るある晩。

馬泥棒がうまやの梁に忍び込みました。

馬を盗もうというのです。

ちょうど同じ時。

狼もうまやに忍び込み、わら山の中に隠れていました。

馬を食べようとしていたのです。

そんな中、じいさんとばあさんの話し声が、うまやにも聞こえてきました。

2人は怖いものの話をしています。

じいさんの泥棒が怖いと言う話を聞いて、泥棒は得意顔。

ばあさんの狼が怖いと言う話を聞いて、狼も得意顔です。

しかし、2人はそれよりももっと怖い、この世で一番怖いものの話を始めました。

じいさんとばあさんは古い家は風で揺れるし、雨漏りもする。

そんな「ふるやのもり」が自分たちには一番怖いと話しますが、ひそひそ声なので泥棒と狼には聞こえません。

じいさんの「この世で一番怖いものは、ふるやのもりじゃなあ」という大声だけしか聞こえませんでした。

それを聞いた泥棒と狼はびっくり。

怖くなって体を縮めていました。

そこへ雨が降り始め、家は雨漏りし始めました。

それを見たじいさんとばあさんは同時に叫びました。

「そら、ふるやのもりが出た!」と。

そのとたん、泥棒の首筋にぽたりと雨水が落ちました。

驚いた泥棒は梁から落ちて、狼の上へ。

狼は急になにかに潰されて、ふるやのもりと勘違い。

慌てて飛び出しました。

この飛び出した狼を馬だと勘違いした泥棒は、逃がすまいとその背中に飛び乗りました。

背中に何か乗っている狼はふるやのもりに憑りつかれたと思い、振り払おうとスピードをあげます。

泥棒は振り落とされまいとさらに力を入れて掴みます。

そうこうしているうちに夜が明けて、乗っているのが狼だと気づいた泥棒はびっくり。

大木の枝が下がっているのを見つけ、そこへ飛び移り、狼が戻ってくるかもしれないからと、大木の洞穴に隠れました。

一方狼は、ふるやのもりとのやり取りを山の獣のみんなに話していました。

そして、ふるやのもりを退治しに行くことになりました。

選ばれたのは猿を先頭に、大木の洞穴へ向かいます。

泥棒と狼と猿の運命やいかに・・・。

『ふるやのもり』の素敵なところ

  • わかると面白い、勘違いのドタバタ劇
  • 疾走感のある、息をつかせぬ泥棒と狼の駆け引き
  • まさかの一番かわいそうなのは猿

「ふるやのもり」という、キーワードを中心に繰り広げられるドタバタ劇。

それぞれの勘違いが、その後の展開を生み出す様は見ていて面白く気持ちがいいです。

勘違いだとわかっている人から見れば、「なにやってんの」と呆れてしまうけれど、当の本人はそれどころじゃありません。

その見ている人と、当人の焦りっぷりの温度差が楽しいお話です。

でも、「ふるやのもり」の意味が分からないと面白さは半減してしまいます。

文章からこの勘違いを読み取るのが、難しい部分もあるので、途中にフォローの言葉をかけて、「ふるやのもり」がなんなのか伝えてあげるのもよいかもしれません。

そんな勘違いした泥棒と狼ですが、そのやり取りと駆け引きの疾走感がたまりません。

片方が何かをすれば、片方が何かをする。

そんな勘違いしながらの駆け引きが、すごい勢いで応酬されていきます。

読んでいると、本当に全力疾走の狼の背中に乗っているような感覚になるのです。

きっと、絵の疾走感もそれを盛り上げてくれているのでしょう。

さて、じいさん、ばあさん、泥棒、狼の話だと思いきや、最後に出てくるのは猿でした。

そして、その猿が一番損な役回り。

現在に通じる、猿の悲しい秘密が明かされます・・・。

泥棒と狼の勘違いドタバタ劇だと思いきや、オチは猿という、とんちのきいた昔話です。

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