作:あきびんご 出版:くもん出版
夏といえば美味しいスイカです。
でも、スイカだって食べられたいわけではないかもしれません。
自分たちが食べられることに気付いたスイカたち。
今、大逃亡劇が始まります。
あらすじ
山に囲まれた広い畑に、30000個のスイカがのんびりと暮らしていました。
ある日、カラスが言いました。
「明日にでも、市場に連れていかれて、このスイカはみんな食べられてしまう」と。
それを聞いたスイカは愕然。
スイカたちは畑中のスイカに知らせ、夜になったら逃げだすことにしました。
夜になると、つるを切り、道路を転がり、山を登っていきました。
ついに海が見えました。
沈みゆくお日さまを見たスイカたちは、お日さまが「おいでおいで」しているように見えました。
スイカたちはお日さまについていこうと決めました。
海に向かい、峠から転がり落ちていくと、スイカの雪崩が起き、スイカたちは割れてしまいました。
割れた後にはスイカの汁で大きな池が出来ました。
そこにいい匂いを嗅ぎつけた動物たちが集まってきます。
スイカたちはこのまま動物たちに飲まれてしまうのでしょうか。
『30000このすいか』の素敵なところ
- 予想もつかない展開の連続
- スイカの反応や言葉がかわいい
- 周りの反応は現実的
この絵本、最初から最後まで予想のつかない展開の連続で出来ています。
自分たちの運命を聞いて、まさか逃げ出すとは。
しかも、その数、30000個。
道路を埋め尽くし、転がっていく姿は圧巻です。
特に最後の場面ではさらに斜め上を行く展開に、子どもも大人も「えー!?」と言うこと間違いなし。
そんなスイカたちですが、所々で語られる、スイカたちの言葉や反応がかわいく、スイカたちの必死の姿を応援したくなるのも、この絵本の素敵なところです。
自分たちが食べられると知った時の絶望感。
山を越える時の掛け声。
夕陽を見た時の反応。
かわいさと必死さと儚さをひしひしと感じさせます。
こんな予想外な絵本ですが、所々現実的な部分があるのもおもしろいところです。
いいアクセントになり、この絵本のおもしろさをより強めてくれています。
例えば、30000個のスイカがなくなった畑では、警察やマスコミが集まって大騒ぎして居たり、
峠から転がると、しっかり割れてしまったり。
所々で、「ここは現実の世界なのか」と引き戻してくるのです。
なので、なおさらスイカたちの非現実的な世界観とのコントラストが際立ちおもしろいのです。
まさかの連続に目が離せない、夏にピッタリなスイカの絵本です。
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