文:小沢正 画:太田大八 出版:教育画劇
どんな人にも変身してしまう役者。
その技は、怪物をも楽しませるほどの妙技です。
そんな役者と怪物との軽妙な駆け引きが始まります。
あらすじ
昔あるところに、たのきゅうという若者がいた。
その若者は役者をしていたが、母が病気だと言う知らせを聞き、村へ帰ることにした。
暗くなりかけた山道を歩いていると、突然目の前に大きなうわばみが現れた。
うわばみはたのきゅうが役者だと知ると、興味が湧き、姿を変えてみろと言ってきた。
たのきゅうが侍の姿に化けてみると、うわばみは大喜び。
他にも見せろと言う。
そこで、女、ひょっとこにも化けてみせると、うわばみは満足そうに笑った。
うわばみは自分を怖がらないたのきゅうに、怖いものはないのかと聞いてみた。
すると、色々と苦労させられているからお金が怖いと言った。
それを聞いて、うわばみもタバコのヤニが怖いということを教えてくれた。
絶対に誰にも言わないという約束で。
たのきゅうが気に入ったうわばみは特別に食べずに通してくれた。
たのきゅうは無事に村に帰りつくことが出来た。
帰り着いたたのきゅうは、村でうわばみとのことを話してしまった。
それを聞いた村のみんなはタバコのヤニを持って、うわばみ退治に行くこととなった。
たのきゅうたちは無事にうわばみを退治できるのでしょうか。
約束を破ってしまったたのきゅうは大丈夫なのでしょうか。
『たのきゅう』の素敵なところ
- とてもわかりやすいセリフ回しと迫力の絵
- うわばみとたのきゅうとのドキドキのやり取り
- とんちのきいた大逆転
この絵本の特徴は、そのわかりやすさだと思います。
昔話、特に少しひねりのきいたおもしろさがあるお話は、文章や絵がわかりにくくなりやすいのです。
しかし、この絵本はセリフ回しも文章も、ものすごくわかりやすく、理解しやすく書かれています。
また、絵も迫力があり、ドキドキ感を味あわせてくれつつも、情景をわかりやすく描写してくれているので、物語の展開を理解する助けになってくれています。
文章と絵の両方で、このひねりのきいた面白さを楽しみやすくなっているのです。
さて、この絵本の目玉、うわばみとたのきゅうのやり取り。
これが手に汗握ります。
たのきゅうがなにに化けるのか。
その時のうわばみの反応は?
圧倒的ピンチのたのきゅうがどうなってしまうのか。
などなど、うわばみと出会ってから目が離せません。
子どもたちも「わあ、本当に女の人みたい」「うわばみ、喜んでる。よかった~」と驚いたり、安心したり。
ひょっとこに化けた時などは、うわばみと一緒に大笑い。
こうして一安心したのも束の間。
たのきゅうがうわばみとの約束を破ってしまいます。
「え!?言っちゃったよ!」と一気にドキドキに。
そんな中出発するうわばみ退治。
その結末は、昔話らしくとんちがきいたものでした。
そこでも、「まさか!?」「あれかな?」としっかり予想していたので、流れをしっかり理解していたみたいです。
それはこの絵本のわかりやすさのおかげでしょう。
ひねりのきいた昔話らしいお話を、その面白さが誰にでも伝わるように、丁寧にわかりやすく描かれた絵本です。
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