文:さねとうあきら 画:田島征三 出版:教育画劇
歌や名前はよく知られている金太郎。
でも、どんな話かは意外と知らない人も多いのでは?
それは、桃太郎や浦島太郎よりも少し話が複雑だからかもしれません。
そんな金太郎のお話が、わかりやすく、迫力満点に描かれた絵本です。
あらすじ
昔、あしがら山に金太郎という男の子がおった。
名前は金太郎。
おとうは天の雷で、おかあは山姥だった。
顔は真っ赤で力持ち、小さい頃からまさかりを引きずってハイハイするほどだった。
金太郎が少し大きくなると、まさかりを担いでのっしのっしと山の中を歩き回るようになった。
大木を切って遊んでいると、ふくろうのじっさまが言った。
「天のおとうが、お前の大力を世のため、人のために使えと言っている」と。
それを聞いた金太郎は、切った木を担ぐと、橋が流されて山の動物たちが困っていた川へ行った。
そして、その川に大木を渡し、橋をかけてやった。
すると、動物たちは大喜び。
みんな金太郎についていった。
山の奥へ入ると、大きなクマが通せんぼをした。
「相撲で勝ったら通してやる」という。
相撲が始まると、金太郎は自分より大きなクマを投げ飛ばして勝ってしまった。
それ以来、金太郎は毎日相撲の稽古をした。
そんなある日、カラスが「山に侍が入ってきて、狩りを始める」とみんなに知らせた。
獣たちはみんな逃げた。
しかし、金太郎だけは逃げずに、侍を待ち構えた。
大勢入ってくる侍たち。
金太郎は山の獣たちを守りきることが出来るのでしょうか。
『きんたろう』の素敵なところ
- 力持ちで、心優しい金太郎の豪快な活躍
- とてもわかりやすく、迫力のある文章と絵
- 侍との意外な結末
金太郎の物語は、まさに主人公、金太郎の魅力に溢れています。
まずはその力強さ。
大きなまさかりを自在に振り回し、クマでもイノシシでも豪快に投げ飛ばす。
その豪快な姿は見ていて清々しいほど気持ちいい。
また、力が強いだけでなく、心も優しく、山の獣たちを思いやり、獣たちからも好かれています。
その姿に、侍と戦う時などは、子どもたちみんな金太郎の味方です。
「頑張って!」「負けるな!」と応援の声が飛び交います。
そんな金太郎の物語ですが、桃太郎や浦島太郎より少し話が入り組んでいます。
そのため、最後の当たりなどわかりにくくなりやすかったりもします。
ですが、この絵本はそこがとてもわかりやすく、子どもにも伝わりやすい文章で描かれているのです。
その上で、昔話の語り口調も織り交ぜられているので、雰囲気もしっかりとあります。
そして、欠かせないのがこの迫力溢れる絵の力。
金太郎の豪快さや、その動きがほとばしるように伝わってきて、金太郎の魅力を思い切り引き出してくれています。
文章と絵の力が組み合わさって、金太郎の世界に深く引き込んでくれるのです。
さて、そんな金太郎の結末は、侍を追い返して「めでたしめでたし」ではありません。
そこには意外な結末が待っています。
そこが桃太郎などとは違って、少し複雑で、その分深みがあるところです。
金太郎のその後の活躍も話してみると、より面白いかもしれません。
金太郎の魅力を目でも耳でもわかりやすく存分に伝えてくれる絵本です。
コメント