作:川端誠 出版:クレヨンハウス
普通は怖がる化け物たち。
それをこき使う人間がいるなんて・・・。
化け物と人の立場が逆転してしまう。
そんな落語がわかりやすい絵本になっています。
あらすじ
大きな店のご隠居さんが、奉公人の久蔵さんを連れ、古い大きな屋敷に引っ越して来ました。
この屋敷にはオバケが出るという噂があり、久蔵さんは怖がって、奉公人をやめてしまいました。
その夜、屋敷に一人ご隠居さんが座っていると、庭の障子が開きました。
そこにいたのは一つ目小僧。
それを見たご隠居さんは大喜び。
さっそく一つ目小僧を家に入れ、食事の支度に洗い物、布団敷きに肩たたきまでさせてから帰しました。
次の日、ご隠居さんは一つ目小僧を待っていました。
すると、庭の障子が開いてろくろっくびが現れました。
ご隠居さんは一つ目小僧ではなく少し残念に思いましたが、ろくろっくびを家に入れました。
そして、洗濯物や繕い物をさせ、布団を敷かせて帰しました。
また次の日、今度は大きな三つ目入道が現れました。
三つ目入道には家に入れないので、庭の岩を動かしたり、屋根のごみを吹き飛ばす仕事をさせました。
そして、器用に布団を敷かせ、小指で肩たたきをさせてから帰した。
さて、次の日ご隠居さんの前に現れたのは・・・?
『ばけものつかい』の素敵なところ
- 落語ならではのテンポ感
- 短すぎない程よい文量
- 決まり文句と、繰り返しかからのオチ
この絵本の素敵なところはその読みやすさにあります。
落語を元にしているためか、言い回しやセリフ回しが物凄く読みやすいのです。
語呂やテンポ感のためか、流れるように読むことが出来、その分子どもたちの注意もひきつけます。
ご隠居さんの人使いの荒さやふてぶてしさが、十二分にわかりやすく伝わってくるのです。
絵本全体の文量も、とてもちょうどよく出来ています。
短すぎるとご隠居さんのキャラクターが伝わりきらず、長すぎると繰り返しなので冗長になりやすいのですが、本当にちょうどいい長さなのです。
物語絵本をしっかり見られる年齢であれば、無理なく読めると思います。
最後は場面転換の時の決まり文句と繰り返しです。
この絵本には、子どもの期待を膨らませる決まり文句が使われています。
それがオバケが出てくる前の「背中がゾクゾクしてきた」からの「庭の障子がスーッと開いて」という言葉です。
これが来ると、子どもたちは「オバケが出て来るぞ!」と身構え期待感が膨らみます。
この繰り返しが、この絵本の醍醐味と言っても過言ではありません。
さらに最後のオチの場面にも、おおいに活用されています。
なんと最後は「庭の障子がスーッと、今日は開かないで」といつもと様子が違うのです。
ここで「え!?」と子どもたちの注目はマックスに。
読む方も見る方も、心地いいテンポ感で、『ばけものつかい』の世界観を存分に楽しめる落語絵本です。
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