ばけずきん(4歳~)

絵本

文:川村たかし 画:梶山俊夫 出版:教育画劇

被ればなんにでも化けることが出来る化け頭巾。

でも、それは真っ赤な嘘。

それを信じたキツネは大喜びで被って、化けようとしますが・・・。

あらすじ

昔あるところにお坊さんがいました。

ある日、お坊さんは一匹の尻尾が黒いキツネを見つけました。

そのキツネは黒狐と呼ばれ、あちこちで村で人を騙していたのです。

黒狐は化ける稽古の途中でした。

その頭には手拭いがのっていていて、それで化けているようでした。

お坊さんは知恵を絞り、黒狐から化け手拭いを取り上げ、悪さをやめさせることにしました。

お坊さんは黒狐に声を掛けました。

黒狐に「化けるのが下手だ。もうその手拭いが古くなっているからだろう。自分の使っている化け頭巾と化け手拭いを交換してやろう。」と言ったのです。

お坊さんの嘘を信じた黒狐は、化け手拭いと化け頭巾を交換してもらいました。

黒狐は化け頭巾を被って、町へ出ていきました。

お坊さんに化けているつもりなのです。

町の人は立派な坊さんの頭巾を被ったキツネを見て、なんだか偉いキツネなのかもしれないと手を合わせました。

黒狐はなんだかいい気分でした。

けれど、ふと水たまりをのぞくと、自分の姿が映っていました。

それは化けていない、頭巾を被ったただのキツネでした。

お坊さんに騙されたことに気付いた黒狐。

一体どうするのでしょう。

『ばけずきん』の素敵なところ

  • お坊さんの巧みな話術
  • 表情豊かで楽し気な絵
  • 優しい気持ちになる温かな結末

この絵本の醍醐味の一つは、お坊さんと黒狐のやり取りでしょう。

化け手拭いを取り上げるため、お坊さんは黒狐に嘘をつきます。

嘘と本当を上手く混ぜつつ、黒狐を信用させていく様は見事です。

途中、黒狐の反論もありますが、うまく切り返していく話術は見ていて爽快です。

そして、この絵本は表情も豊かです。

話すお坊さんの身振り手振りや笑顔。

それに騙され大喜びの黒狐。

それだけではなく、黒狐に化かされた人、黒狐を拝む人など、みんなユーモラスで明るい表情と色使いなのです。

それはこの昔話自体の表情でもあるのかもしれません。

その表情は最後の場面に現れます。

騙されたことに気付いた黒狐の反応が、とても優しく温かなのです。

騙し合いから始まる昔話。

でも、誰も傷つかず、温かな気持ちにさせてくれる優しい昔話です。

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