文:川村たかし 画:梶山俊夫 出版:教育画劇
被ればなんにでも化けることが出来る化け頭巾。
でも、それは真っ赤な嘘。
それを信じたキツネは大喜びで被って、化けようとしますが・・・。
あらすじ
昔あるところにお坊さんがいました。
ある日、お坊さんは一匹の尻尾が黒いキツネを見つけました。
そのキツネは黒狐と呼ばれ、あちこちで村で人を騙していたのです。
黒狐は化ける稽古の途中でした。
その頭には手拭いがのっていていて、それで化けているようでした。
お坊さんは知恵を絞り、黒狐から化け手拭いを取り上げ、悪さをやめさせることにしました。
お坊さんは黒狐に声を掛けました。
黒狐に「化けるのが下手だ。もうその手拭いが古くなっているからだろう。自分の使っている化け頭巾と化け手拭いを交換してやろう。」と言ったのです。
お坊さんの嘘を信じた黒狐は、化け手拭いと化け頭巾を交換してもらいました。
黒狐は化け頭巾を被って、町へ出ていきました。
お坊さんに化けているつもりなのです。
町の人は立派な坊さんの頭巾を被ったキツネを見て、なんだか偉いキツネなのかもしれないと手を合わせました。
黒狐はなんだかいい気分でした。
けれど、ふと水たまりをのぞくと、自分の姿が映っていました。
それは化けていない、頭巾を被ったただのキツネでした。
お坊さんに騙されたことに気付いた黒狐。
一体どうするのでしょう。
『ばけずきん』の素敵なところ
- お坊さんの巧みな話術
- 表情豊かで楽し気な絵
- 優しい気持ちになる温かな結末
この絵本の醍醐味の一つは、お坊さんと黒狐のやり取りでしょう。
化け手拭いを取り上げるため、お坊さんは黒狐に嘘をつきます。
嘘と本当を上手く混ぜつつ、黒狐を信用させていく様は見事です。
途中、黒狐の反論もありますが、うまく切り返していく話術は見ていて爽快です。
そして、この絵本は表情も豊かです。
話すお坊さんの身振り手振りや笑顔。
それに騙され大喜びの黒狐。
それだけではなく、黒狐に化かされた人、黒狐を拝む人など、みんなユーモラスで明るい表情と色使いなのです。
それはこの昔話自体の表情でもあるのかもしれません。
その表情は最後の場面に現れます。
騙されたことに気付いた黒狐の反応が、とても優しく温かなのです。
騙し合いから始まる昔話。
でも、誰も傷つかず、温かな気持ちにさせてくれる優しい昔話です。
コメント