作:メアリー・ルージュ 絵:パメラ・ザガレンスキー 訳:浜崎絵梨 出版:そうえん社
「まだ、眠くない」「もっと、遊びたい」
夜の子どもの常套句。
そんな子どもに、ゆっくりと語りかける。
いつの間にか眠りについている絵本です。
あらすじ
これは中々寝付かないお姫様のお話です。
お姫様は寝る時間になっても「まだ眠くない」「まだ遊びたい」と、王様とお妃さまに言い張ります。
そこで王様とお妃さまは「それでもパジャマには着替えましょうね」と言いました。
お姫様はお気に入りのパジャマを選んで着ました。
「それでも、寝る準備はしましょうね」と言われ、お姫様は顔を洗い、歯を磨きました。
すると、スッキリといい気分です。
お姫様は眠りたくないけれど、布団にもぐるのは大好きです。
お姫様は王様とお妃さまに布団の中から尋ねました。
「世界中のみんなが寝るの?」
「もちろんですとも」と2人は答えました。
お城にいる犬はソファーで眠る。
猫は家の一番温かい場所を探して眠る。
コウモリも、クジラも、カタツムリも、クマだって。
そこでお姫様は言いました。
「私ね、寝るのが一番大好きな動物を知っているよ」と。
それはトラでした。
狩りをしていないときはぐっすり眠る。だから、あんなに強いのだと。
王様とお妃さまはその話を聞いた後、お姫様におやすみなさいのキスをして部屋を出ていきました。
まだ、眠くないお姫様は動物たちのように眠る真似をしてみました。
猫のように温かい場所を探り、コウモリのように手を胸に置き、クジラのようにぐるうりぐるうり回りながら。
まだ寝たくないお姫様。
ぐっすりと眠れるのでしょうか。
『おひめさまはねむりたくないけれど』の素敵なところ
- お姫様と王様たちの優しいやり取り
- 静かで温かく幻想的な絵
- 気持ちよさそうに眠る動物たち
まだ眠りたくないお姫様。
王様とお妃さまは頭ごなしに「寝なさい」とは言いません。
お姫様の気持ちを受け止めつつも、一つずつ寝る準備へ誘っていきます。
そして、布団に入ったお姫様とたくさんお話をするのです。
そのやり取りはとても優しく温かです。
お姫様の質問にもしっかりと答えてあげ、ゆったりとした時間が流れます。
そのやり取りを聞いていると、気持ちが落ち着いてくるのです。
これにはこの絵本の幻想的な絵の力もあると思います。
月明かりに照らされたような色合い。
優しくもはっきりとしたタッチの絵。
リアルとは違う、夢の中にいるような幻想的な非現実さ。
これらはまるで、起きている世界から夢の世界への境界のよう。
自然と眠りへ誘います。
そんな絵で描かれる動物たちの眠る姿は本当に気持ちよさそうです。
間近で寝ている動物たちから、自然と寝息が聞こえてくるようです。
読んでいるうちに、お姫様と自分が重なって、いつの間にか一緒に寝息を立てている。
そんな静かで優しい絵本です。
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